
こんにちは!筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。
アキレス腱の痛みで悩んでいる方は多いですね。
「階段を登るときにアキレス腱が痛い」「朝起きて最初の一歩がつらい」「運動した後に痛みが続く」──このような症状でお悩みではありませんか。
アキレス腱の痛みは、スポーツをする方だけでなく、日常生活を送る一般の方にもよく見られる症状です。ランニングやジャンプなどの運動を繰り返すことで、アキレス腱に負担がかかり、痛みが生じることがあります。
この記事では、アキレス腱の痛み(専門的にはアキレス腱障害と呼ばれます)に対する運動療法について、最近の研究をもとにわかりやすくお伝えします。
前回の記事と一緒にお読みください‼

アキレス腱障害とは

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋やヒラメ筋)とかかとの骨をつなぐ、太くて強い腱です。歩く、走る、ジャンプするといった動作で大切な役割を果たしています。
この腱に繰り返し負担がかかると、炎症や組織の変性が起こり、痛みや腫れ、動かしづらさといった症状が現れます。一般の方では1000人あたり約2人、ランニングをする方では10人に1人程度の割合で発症すると報告されています。
特に以下のような方に起こりやすい傾向があります:
- ランニングやジャンプを伴うスポーツをする方
- 立ち仕事や歩くことが多い方
- 30代から60代の年齢層
- 急に運動量を増やした方
- ふくらはぎが硬く、柔軟性が低下している方
症状が3か月以上続く場合は慢性化している可能性があり、適切な対応が必要になります。
運動療法の効果について

多くの方は手術をせずに、適切な運動療法などの保存的治療で症状が改善することが知られています。
最近の研究では、さまざまな運動療法の中でも「エキセントリック運動(伸張性運動)」と呼ばれる方法が、痛みの軽減に特に効果的である可能性が示されています。
エキセントリック運動とは

エキセントリック運動とは、筋肉を引き伸ばしながら力を発揮する動作のことです。
例えば、つま先立ちの姿勢からゆっくりとかかとを下ろしていく動作が代表的です。この時、ふくらはぎの筋肉は引き伸ばされながら収縮していることになります。
このタイプの運動は、筋肉を縮めながら力を発揮する通常の運動(コンセントリック運動)に比べて、少ない負担で大きな力を発揮できるという特徴があります。
研究から分かったこと
2023年に発表された複数の研究をまとめた論文では、エキセントリック運動が他の運動方法と比べて、痛みの改善に効果的である可能性が示されました。
この研究では、8つの臨床試験(合計371人の患者さん)を分析しました。その結果、エキセントリック運動を行ったグループでは、他の治療法を行ったグループと比較して、痛みの改善が認められたと報告されています。
ただし、これらの研究には方法の違いや研究の質にばらつきがあり、まだ改善の余地があることも指摘されています。そのため、エキセントリック運動が絶対的に最良とは言い切れませんが、効果が期待できる選択肢の一つと考えられます。
具体的な運動方法
アキレス腱障害に対するエキセントリック運動として、「アルフレッドソンプロトコル」という方法がよく知られています。
基本的な方法
- 準備: 段差や階段の端に立ち、つま先で体を支えます(かかとは空中に浮いた状態)
- 上がる動作: 両足でつま先立ちをして、かかとをできるだけ高く上げます
- 下ろす動作: 痛みのある側の足だけに体重をかけて、3秒ほどかけてゆっくりとかかとを段差より下に降ろしていきます。この動作がエクセントリック運動です
- 繰り返し: 健康な方の足を使って再び両足でつま先立ちに戻り、同じ動作を繰り返します
運動の量と頻度
- 1セット15回を3セット
- これを1日2回(朝と夕方など)
- 12週間継続
2つのバリエーション
膝を伸ばした状態で行う運動と、膝を少し曲げた状態で行う運動の両方を行います。これにより、ふくらはぎの異なる筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)を効果的に鍛えることができます。
負荷の調整
慣れてきたら、リュックサックに重りを入れて背負うなどして、徐々に負荷を増やしていきます。痛みと相談しながら、無理のない範囲で進めることが大切です。
運動時の注意点

痛みについて
運動中に多少の痛みを感じることはあるかもしれませんが、激しい痛みは避けるべきです。運動の最初の数週間は痛みが少し増えることもありますが、これは必ずしも悪いことではありません。
ただし、痛みが強すぎる場合や、運動後に痛みが長く続く場合は、負荷を減らすか、医療専門家に相談することをお勧めします。
運動の継続
研究によると、症状の改善には時間がかかることが多く、効果を実感するまでに数週間から数か月かかることがあります。途中であきらめずに、根気強く続けることが大切です。
日常生活の活動
興味深いことに、運動療法を行いながら、痛みの範囲内で日常生活の活動やスポーツを続けても、治療効果に悪影響を与えないことが研究で示されています。
完全に安静にするよりも、痛みをモニターしながら適度に動き続けることが推奨される場合もあります。ただし、これは個人差がありますので、担当の医療専門家と相談しながら進めてください。
他の治療法との組み合わせ
エクセントリック運動だけでなく、以下のような方法を組み合わせることで、より効果的な治療が期待できる場合があります:
ストレッチ
ふくらはぎの筋肉やアキレス腱をゆっくり伸ばすストレッチも重要です。運動の前後に行うことで、柔軟性を高め、腱への負担を減らすことができます。
マッサージ
アキレス腱周辺を優しくマッサージすることで、血行を促進し、組織の回復を助けることができます。
装具やテーピング
症状によっては、かかとを少し高くする装具を使用したり、テーピングでサポートしたりすることが勧められる場合もあります。
生活習慣の見直し
- 適切な靴を選ぶ(クッション性があり、かかとをサポートするもの)
- 急激な運動量の増加を避ける
- 適切な体重管理
- 運動前のウォームアップと運動後のクールダウン
いつ医療機関を受診すべきか

以下のような場合は、自己判断せずに医療機関を受診することをお勧めします:
- 突然の激しい痛みや「ブチッ」という音を感じた場合(腱断裂の可能性)
- つま先立ちができない
- 腫れや熱感が強い
- 自分で運動療法を行っても3か月以上症状が改善しない
- 痛みが日常生活に大きく支障をきたす
医療機関では、問診や触診、必要に応じて超音波検査やMRIなどの画像検査を行い、正確な診断と適切な治療方針を立ててもらえます。
治療の見通し
多くの方にとって、適切な運動療法を継続することで症状は改善していきます。
ある長期追跡調査では、8年後に84%の患者さんが病気になる前の活動レベルに戻ることができ、94%の方が無症状または軽い痛みのみになったと報告されています。
ただし、改善には個人差があり、数週間で良くなる方もいれば、数か月かかる方もいます。焦らず、自分のペースで治療を続けることが大切です。
まとめ
アキレス腱の痛みは、適切な運動療法によって改善が期待できる症状です。特にエクセントリック運動は、研究によって効果が支持されている方法の一つです。
大切なポイントをまとめると:
- エキセントリック運動は、筋肉を伸ばしながら力を発揮する運動です
- 段差を使ったかかとの上げ下ろしが代表的な方法です
- 1日2回、12週間の継続が推奨されています
- 痛みと相談しながら、徐々に負荷を増やしていきます
- 完全な安静よりも、痛みの範囲内で適度に動くことが推奨される場合もあります
- 改善には時間がかかることがあるため、根気強く続けることが大切です
参考文献
- Prudêncio DA, Maffulli N, Migliorini F, et al. Eccentric exercise is more effective than other exercises in the treatment of mid-portion Achilles tendinopathy: systematic review and meta-analysis. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation. 2023;15:9.
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- Martin RL, Chimenti R, Cuddeford T, et al. Achilles pain, stiffness, and muscle power deficits: midportion Achilles tendinopathy revision 2018. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2018;48(5):A1-A38.
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- Silbernagel KG, Thomeé R, Thomeé P, Karlsson J. Eccentric overload training for patients with chronic Achilles tendon pain: a randomised controlled study. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2001;11(4):197-206.
- 日本整形外科学会 スポーツ診療ガイドライン(最終アクセス日: 2025年)
免責事項: この記事は教育目的の情報提供であり、医学的アドバイスに代わるものではありません。個別の症状や治療法については、必ず医療専門家にご相談ください。
投稿者プロフィール

- 柔道整復師、鍼灸師
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院長 柔道整復師 鍼灸師
福岡医健専門学校卒業
株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。
陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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