膝窩筋腱炎に対するマイクロカレントの効果とは?

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こんにちは。福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

膝の裏側や外側に痛みを感じて、病院で「膝窩筋腱炎(しつかきんけんえん)」と診断された方もいらっしゃるのではないでしょうか。

階段を下りるとき、坂道を歩くとき、あるいは長時間座った後に立ち上がるときなど、日常生活の中でふとした瞬間に痛みが走ると、本当につらいですよね。

最近、スポーツの現場や治療院で「マイクロカレント」という治療法を耳にすることが増えてきました。プロのアスリートも使っているという話を聞いて、気になっている方も多いかもしれません。

この記事では、膝窩筋腱炎とはどういう症状なのか、そしてマイクロカレント療法が本当に効果があるのかについて、研究論文をもとに分かりやすくご説明していきます。

目次

膝窩筋腱炎ってどんな症状?

まずは、膝窩筋腱炎について簡単にご説明しますね。

膝窩筋(しつかきん)というのは、膝の裏側にある小さな筋肉です。この筋肉は、膝を曲げたり、すねの骨を内側にひねったりする働きをしています。何より大切なのは、膝の安定性を保つという重要な役割を担っているということです。

何より膝が完全に伸びている状態のロックされた状態からロックを解除するための筋肉です。

膝窩筋の腱(筋肉と骨をつなぐ部分)に負担がかかりすぎると、炎症を起こしてしまいます。これが膝窩筋腱炎です。

どんな時に痛みが出るの?

膝窩筋腱炎の痛みは、主に膝の外側や裏側に現れることが多いです。

特に次のような場面で痛みを感じやすくなります。

  • 下り坂や階段を降りるとき
  • 長時間座った後に立ち上がるとき
  • 膝を捻るような動作をしたとき
  • ランニングや運動をしているとき

研究によると、膝窩筋腱炎は下り坂でのランニングや、膝に捻りの力が加わる動作を繰り返すことで起こりやすいとされています。特にランニングをされる方、サッカーやバスケットボールなどの球技をされる方に多く見られる症状です。

また、デスクワークで長時間座っている方も、膝を90度に曲げた状態が続くことで膝窩筋が硬くなってしまい、腱炎のリスクが高まるといわれています。

杏鍼灸整骨院では陸上選手が多いです。

他の症状との見分けが難しい

膝窩筋腱炎の厄介なところは、腸脛靭帯症候群(ランナー膝)や半月板損傷など、他の膝の症状と似ているため、誤診されやすいという点です。

そのため、きちんと専門医の診察を受けて、正確な診断をしてもらうことが大切になります。

マイクロカレント療法って何?

それでは、本題のマイクロカレント療法についてお話ししていきましょう。

マイクロカレントとは、「微弱電流」という意味です。私たちの体には、普段から「生体電流」と呼ばれる微弱な電流が流れているのをご存じでしょうか。

この生体電流は、細胞の修復や新陳代謝など、体の様々な機能を支える大切な働きをしています。マイクロカレント療法は、この生体電流と同じくらいの弱い電流を体に流すことで、体が本来持っている治癒力を高めようとする治療法です。

普通の電気治療とは何が違うの?

整骨院や整形外科で受ける電気治療といえば、「低周波治療器」を思い浮かべる方が多いかもしれません。低周波治療では、ピリピリとした電気の刺激を感じますよね。

マイクロカレントの大きな特徴は、この刺激をほとんど感じないということです。

低周波治療器で使われる電流の単位は「ミリアンペア(mA)」ですが、マイクロカレントで使われるのは「マイクロアンペア(μA)」という、その1000分の1という非常に弱い電流なのです。

なぜ刺激が弱いのに効果があるの?

「そんなに弱い電流で本当に効果があるの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

実は、ここが科学的に非常に興味深いポイントなんです。

低周波治療は、電気刺激で筋肉を収縮させたり、神経に働きかけて痛みの信号をブロックしたりすることで効果を発揮します。つまり、「刺激を与えて痛みを和らげる」というアプローチです。

一方、マイクロカレント療法は、「細胞レベルで組織の修復を促進する」という、まったく違うアプローチをとります。神経や筋肉を興奮させないため、ケガをした直後の炎症が強い時期でも使用できるというメリットがあります。

科学的な研究から分かったこと

それでは、マイクロカレント療法が腱炎にどのような効果をもたらすのか、実際の研究結果を見ていきましょう。

ATP(エネルギー)の産生が大幅に増加する

ちょっと古い研究ですが1982年に発表されたCheng博士らの研究は、マイクロカレント療法の効果を科学的に示した重要な論文として、今でも多くの研究者に引用されています。

この研究では、500マイクロアンペアの電流を流すことで、細胞内のATP(アデノシン三リン酸)という物質の産生が、なんと最大500%も増加したことが確認されました。

ATPというのは、細胞が活動するためのエネルギー源です。車でいえばガソリンのようなものですね。細胞が傷ついた組織を修復するためには、このATPがたくさん必要になります。

マイクロカレントによってATPの産生が増えることで、細胞の修復スピードが速まる可能性があると考えられています。

タンパク質の合成も促進される

同じ研究では、タンパク質の合成に関わる物質の取り込みも30〜40%増加したことが報告されています。

腱というのは、コラーゲンというタンパク質でできています。傷ついた腱を修復するためには、このタンパク質をしっかりと作り出すことが必要です。

マイクロカレントがタンパク質の合成を促進することで、腱の修復過程を助けてくれる可能性があるわけです。

アキレス腱炎での研究結果

膝窩筋腱炎そのものを対象にした研究は少ないのですが、同じ腱の炎症である「アキレス腱炎」に対するマイクロカレント療法の効果を調べた研究があります。

2002年に発表されたChapman-JonesとHillの研究では、慢性的なアキレス腱炎の患者さんにマイクロカレント療法を行ったところ、従来の保存的治療よりも効果的だったという結果が報告されています。

また、2011年に発表された動物実験(ウサギを使った研究)では、マイクロカレントを使用したグループでは、腱の生体力学的な強度が有意に改善したことが確認されました。つまり、腱がより強く、しっかりと修復されたということです。

テニス肘での研究から分かること

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)も、膝窩筋腱炎と同じく腱の炎症です。

2011年に発表されたPoltawskiらの研究では、慢性的なテニス肘の患者さんに対して、50マイクロアンペアのマイクロカレント療法を数十時間行ったところ、症状の軽減と腱の正常化が見られたと報告されています。

ただし、この研究は予備的な小規模研究であり、より大規模な臨床試験が必要だとも述べられています。

炎症と腫れに対する効果

2011年に日本で発表された研究では、足首の靭帯損傷の患者さんに対してマイクロカレント刺激を20分間行ったところ、腫れの軽減に効果があることが示されました。

腱炎でも靭帯損傷でも、急性期には炎症と腫れが問題になります。マイクロカレントがこうした症状を軽減する可能性があるというのは、患者さんにとって心強い情報ではないでしょうか。

コラーゲン線維の再編成を促す

2020年に発表された動物実験では、マイクロカレント療法によって、損傷した腱のコラーゲン線維の再編成が促進されることが示されました。

腱は、コラーゲン線維が規則正しく並んでいることで強度を保っています。損傷した腱では、このコラーゲン線維の配列が乱れてしまいます。

マイクロカレントがコラーゲン線維の再編成を助けることで、より強い腱の修復につながる可能性があるわけです。

マイクロカレント療法のメリット

これまでの研究結果から、マイクロカレント療法には次のようなメリットがあると考えられています。

1. 痛みをほとんど感じない

電気治療というと、ピリピリした刺激を想像される方が多いかもしれません。でも、マイクロカレントは刺激をほとんど感じないため、電気の感覚が苦手な方でも安心して受けられます。

2. 急性期から使用できる

一般的な電気治療は、炎症が強い時期には使えないことがあります。しかし、マイクロカレントは神経や筋肉を興奮させないため、ケガをした直後から使用できるという特徴があります。

3. 細胞レベルで組織の修復を促す

マイクロカレントは、単に痛みを一時的に和らげるだけではなく、細胞のエネルギー産生を高めたり、タンパク質の合成を促進したりすることで、組織の修復そのものを助ける可能性があります。

4. 他の治療と併用できる

マイクロカレント療法は、リハビリテーション運動や物理療法、薬物療法などと併用することができます。複数の治療を組み合わせることで、より良い効果が期待できるかもしれません。

マイクロカレント療法の限界と注意点

ここまでマイクロカレントの良い面をお伝えしてきましたが、いくつか知っておいていただきたいことがあります。

効果には個人差がある

マイクロカレント療法の効果には個人差があります。すべての方に同じように効果が現れるわけではないということを、理解しておく必要があります。

治療のパラメーターが重要

研究によると、電流の強さ、周波数、治療時間、極性(プラスかマイナスか)など、様々な要素によって効果が変わってくることが分かっています。

例えば、2011年の研究では、500マイクロアンペアの電流でATPの産生が最大になったものの、5ミリアンペア(5000マイクロアンペア)では逆に産生が抑制されてしまったことが報告されています。

つまり、「強ければ強いほど良い」というわけではなく、適切な設定で治療を受けることが大切だということです。

根本的な原因への対処も必要

マイクロカレント療法は、組織の修復を助ける可能性がありますが、それだけで完全に治るというわけではありません。

膝窩筋腱炎の原因となっている動作の癖、筋力のバランス、体の使い方といった根本的な問題にも、同時に取り組む必要があります。

杏鍼灸整骨院ではこの辺りも重要視しています。

実際の治療ではどのように使われるの?

マイクロカレント療法は、医療現場やスポーツの現場で、どのように使われているのでしょうか。

治療の頻度と期間

研究によって設定は様々ですが、多くの場合、1回15〜30分程度の治療を、週に数回行うことが一般的なようです。

アキレス腱炎の研究では、数十時間にわたって連続的にマイクロカレントを使用したケースもあります。

RICE処置との併用

ケガをした直後の応急処置として、RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)が推奨されています。

医療現場では、このRICE処置とマイクロカレント療法を併用することで、急性期の炎症と腫れをより効果的にコントロールしようとするアプローチが取られることもあります。

リハビリテーション運動との組み合わせ

マイクロカレント療法だけでなく、適切なストレッチや筋力トレーニングを組み合わせることが重要です。

研究では、膝窩筋腱炎に対して、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)のエキセントリック運動(筋肉を伸ばしながら力を入れる運動)が効果的だとされています。

また、お尻の筋肉(中臀筋)の強化も大切だといわれています。

プロのアスリートも使用している

マイクロカレント療法は、プロスポーツの現場で広く活用されています。

早期復帰を目指すアスリートにとって、急性期から使用でき、組織の修復を促進する可能性があるマイクロカレント療法は、魅力的な選択肢の一つとなっています。

ただし、アスリートの場合は、専門のトレーナーや医師の管理のもとで、他の治療やリハビリテーションと組み合わせて使用されているという点に注意が必要です。

家庭用のマイクロカレント機器について

最近では、家庭用のマイクロカレント機器も販売されています。

ただし、家庭用機器を使用する場合は、次の点に注意してください。

  • 必ず医師や専門家に相談してから使用する
  • 取扱説明書をよく読み、正しく使用する
  • 効果を過度に期待せず、他の治療と併用する
  • 症状が改善しない場合は、すぐに医療機関を受診する

家庭用機器は、医療機関で使用される機器とは性能が異なる場合があります。また、自己判断で使用すると、かえって症状を悪化させてしまう可能性もあります。

おすすめはこちらです。

まとめ

ここまで、膝窩筋腱炎に対するマイクロカレント療法について、科学的な研究をもとにお話ししてきました。

現時点での研究結果から言えることをまとめると、次のようになります。

期待できること

  • 細胞のエネルギー産生を高める可能性がある
  • タンパク質の合成を促進する可能性がある
  • 腱の修復過程を助ける可能性がある
  • 炎症や腫れを軽減する可能性がある
  • 急性期から安全に使用できる

マイクロカレント療法は、膝窩筋腱炎の治療において、有望な選択肢の一つと考えられます。ただし、「これさえやれば治る」という魔法の治療法ではありません。

適切なリハビリテーション、生活習慣の改善、必要に応じた薬物療法など、総合的なアプローチの中の一つの手段として捉えることが大切です。

膝の裏に痛みがある方はご気軽にご相談くださいね!


参考文献

  • Cheng N, Van Hoof H, Bockx E, et al. The effects of electric currents on ATP generation, protein synthesis, and membrane transport of rat skin. Clin Orthop Relat Res. 1982.
  • Chapman-Jones D, Hill D. Novel microcurrent treatment is more effective than conventional therapy for chronic Achilles tendinopathy: randomised comparative trial. Physiotherapy. 2002.
  • Polarity effect of microcurrent electrical stimulation on tendon healing: Biomechanical and histopathological studies. 2011.
  • Poltawski L, Watson T. Microcurrent therapy in the management of chronic tennis elbow: pilot studies to optimize parameters. Physiotherapy Research International. 2012.
  • Investigating the therapeutic efficacy of microcurrent therapy: a narrative review. PMC. 2021.

注意事項 この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスではありません。症状がある場合は、必ず医師の診察を受けてください。

投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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