
こんにちは!福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。
今回はちょっと変わった視点から腰痛に対してのアプローチをご紹介しいきたいと思います。
感覚や多裂筋っていう身体を支えるために必要な筋肉に対しての話になります。
最後までよろしくお願いします!
感覚のリセットが腰痛を変えるかもしれない話

腰痛がなかなか良くならない背景には「筋力の弱さ」だけでなく感覚のズレが関係していることがあります。
とくに背骨のすぐ横にあるインナーマッスル、多裂筋(たれつきん)は、姿勢を細かく調整するセンサーのような役割を持っています。
痛みが続くと多裂筋はうまく働かなくなり脳との連携も乱れやすくなります。
その結果、必要なタイミングで力が入らず腰まわりが不安定になりさらに痛みが出やすくなる…という悪循環が起こります。
ここで大切なのが「鍛える」よりも先に「感覚をリセットする」こと。
やさしく触れる、軽く揺らす、呼吸と合わせて動かすなどの刺激で、多裂筋にもう一度「ここにあるよ」「こう動くよ」と脳に伝えてあげます。
すると無意識の安定性が戻り腰の負担が減っていきます。
強いトレーニングの前にまずは感覚の再教育。
多裂筋との対話が慢性的な腰痛を変えるきっかけになるかもしれません。
1. 「多裂筋」ってどんな筋肉? まず基本を知ろう

腰が痛くなったとき多くの方は「腰の筋肉が張っている」と感じると思います。
でも実は腰を支えている筋肉は表面だけではありません。
背骨のすぐそばに、とても深いところで静かに働いている筋肉があって、それが**多裂筋(たれつきん)**です。
多裂筋は背骨の一つひとつの骨(椎骨)をまたいで斜めに走っている小さな筋肉の集まりです。
首から腰まで縦に並んでいますが特に腰の部分(腰椎)でもっとも発達していて腰を安定させる役割の中心を担っています。
よく「体幹を鍛えましょう」という話を聞くと思いますがその体幹の中でも特に重要とされているのがこの多裂筋です。
お腹まわりの筋肉(腹横筋など)と一緒に背骨を内側からしっかり守っています。
さらに多裂筋にはほかの筋肉にはあまり見られない特徴があります。
それは「筋紡錘(きんぼうすい)」という筋肉の伸び縮みをセンサーのように感じる器官が非常に多く詰まっているということです。
つまり多裂筋は「力を出す」だけでなく「体の状態を感じとる」役割も同時に果たしているのです。
この点が多裂筋をほかの筋肉とは少し違う特別な存在にしています。
多裂筋は「姿勢を保つ縁の下の力持ち」。日常の動きのなかで、背骨が崩れないようにコンマ数秒前から先手を打って収縮する、とても賢い筋肉なのです。
2. 感覚を脳に伝える仕組み──固有感覚という名の”体内GPS”

人間の体にはいろいろな感覚があります。
「暑い・冷たい」という温度感覚、「痛い」という痛覚。
でも実は私たちが日ごろあまり意識しない感覚のなかに姿勢や動きを支えるうえでとても重要なものがあります。それが固有感覚(こゆうかんかく)です。
固有感覚とは「自分の体が今どんな姿勢で、どのくらい動いているか」を感じとる感覚のことです。
目を閉じていても手がどこにあるかわかる、歩きながら足元を見なくても転ばずに歩ける、あれが固有感覚のおかげです。
この固有感覚を担う器官は主に3つあります。
筋肉の伸びを感じる筋紡錘、筋肉の張力を感じる腱器官(ゴルジ腱器官)、そして関節の角度を感じる関節受容器です。
多裂筋は特に筋紡錘が豊富で背骨まわりの感覚情報を脳へ送る「中継局」のような役割を担っています。
筋紡錘から発せられた信号は脊髄を通じて脳へ届きます。
脳はその情報をもとに「今どんな姿勢か」「どう動けばいいか」を瞬時に判断し筋肉への指令を出します。
この情報のやりとりが、スムーズで安全な動きを支えているわけです。
研究者のPanjabi(パンジャビ)は、この仕組みを「受動的支持(靭帯や骨)・能動的支持(筋肉)・神経コントロールの三本柱が脊椎を支えている」と整理しました(Panjabi, 1992)。
多裂筋はその3本すべてに深く関わるまさに背骨の守護者といえるかもしれません。
3. 腰痛があると多裂筋の感覚はどう変わる?

ここが今回の核心に近い話です。
腰が痛くなると多裂筋の「感じる力」にも変化が起きることが近年の研究で少しずつ明らかになってきています。
筋肉が萎縮して、センサーも鈍くなる
慢性腰痛(長く続く腰の痛み)を持つ方の多裂筋をMRI(磁気共鳴画像)で調べると痛みのある側の多裂筋が萎縮(やせ細ること)しているケースが多く報告されています。
Hidesら(1994, 1996)の研究では初発の腰痛患者において痛みのある側の多裂筋が対側と比べて有意に萎縮していることが確認されました。
さらに痛みが消えても筋肉は自然には回復しにくく意識的なリハビリが必要であることも示されています。
これはとても大切なポイントです。
「痛みが引いたから大丈夫」ではなく筋肉そのものの回復には別のアプローチが必要になる場合がある、ということです。
体位感覚の誤差が大きくなる
腰痛がある人は「背骨が今どの角度にあるか」という感覚が健康な人より不正確になりやすいことも研究で示されています。
これは「位置感覚誤差(Joint Position Sense Error)」と呼ばれる現象で多裂筋を含む深層筋からの感覚信号が乱れていることが原因の一つと考えられています。
Brumagne ら(2000)は腰痛患者が体幹の位置感覚誤差を示す割合が健常者より有意に高く特に多裂筋の固有感覚の低下と関連している可能性を報告しました。
感覚が鈍くなると脳からの指令がうまく働かず体をさらに不安定にする悪循環が起きやすくなるといわれています。
痛みが感覚を狂わせ、感覚の乱れがさらに痛みや不安定感を生む
──このサイクルを断ち切ることが、腰痛ケアの重要なカギになるのです。
4. 「振動」が感覚入力に与える効果とは
振動と聞くと「マッサージ機?」と思われるかもしれません。でもここでいう振動は、もう少し特定の周波数を意識した「筋肉や腱に直接届かせる刺激」のことです。
振動が筋紡錘を強く刺激する
1970年代、MatthewsとBurkeという研究者が「筋肉や腱に振動を与えると、筋紡錘が特異的に興奮する」という発見をしました。筋紡錘が活発になると、「筋肉が伸びている」という強い感覚信号が脳に送られます。これは脳を「だます」というより、強制的に感覚入力を高める効果として捉えられています。
De-la-Torre ら(2023)のシステマティックレビューでは、振動刺激(特に腱振動)が筋紡錘からの感覚神経活動を活性化し、体位感覚や姿勢制御に影響を与えることが多くの研究で確認されていると報告しています。
どんな振動が効果的?
研究で多く使われている振動の条件は、周波数30〜100Hz(ヘルツ)、振幅0.5〜2mm程度のものです。特に70〜80Hz前後が筋紡錘を最も効率よく刺激するという報告が多く見られます。
この刺激を筋肉や腱の走行に沿って当てることで、感覚神経への入力が高まるとされています。
振動刺激には大きく2種類あります。特定の部位(筋腱)に振動子(バイブレーター)を当てる局所振動刺激と、プレートや椅子ごと全身に振動を加える全身振動刺激(WBV)です。多裂筋への感覚入力を高めるには、局所振動が用いられることが多いとされています。
5. 多裂筋への振動刺激──研究では何がわかった?

では実際に多裂筋周囲への振動刺激が「感覚入力を改善する」「腰痛に効果がある」という証拠はどのくらい積み上がっているのでしょうか。
代表的な研究をいくつかご紹介します。
① 姿勢の安定感が変わる
腰部多裂筋周辺への振動刺激を与えると、立ったときの体の揺れ(重心動揺)に変化が起きることが報告されています。
Kavounoudias ら(2001)は、腰部傍脊柱筋への振動刺激が体幹の傾き感覚や立位バランスに影響を与えることを実験的に示し、この領域の筋紡錘が姿勢制御において重要な役割を担っていると述べました。
② 腰部の位置感覚誤差が改善する可能性
腰痛患者に振動刺激を組み合わせたリハビリを行うと、体幹の位置感覚誤差が改善するという報告も出ています。
Brumagne ら(2008)は、腰部の感覚再教育プログラムに振動刺激を組み入れることで、慢性腰痛患者における体幹固有感覚の改善および痛みの軽減が得られた可能性を示しました。感覚システムへの積極的な介入が腰痛リハビリに有効であることを支持する結果でした。
③ 脳の処理パターンが変化する
振動刺激の効果は、筋肉レベルだけでなく脳(中枢神経系)にも届いています。機能的MRIを使った研究では、腰部への振動刺激が感覚を処理する脳の領域(体性感覚野)を活性化することが確認されています。
Tsao ら(2010)の研究では、慢性腰痛患者では体性感覚野における多裂筋の脳内マップが縮小していることが示され、感覚入力を高めるアプローチが脳の可塑性(変化する力)に働きかける可能性を論じています。痛みが「脳のレベルで」感覚を変えてしまっているとすれば、そこに働きかけることがいかに大切かが伝わってくる研究です。
④ 全身振動(WBV)と多裂筋活動
全身振動プレートを使った研究では、腰部深層筋の筋活動が高まるという報告があります。
Rittweger ら(2002)やOliver ら(2018)の研究では全身振動が多裂筋を含む傍脊柱筋群の筋電図(EMG)活動を増加させることを報告しており体幹深層筋への神経筋的刺激として機能しうることが示唆されています。
ただし多裂筋への直接的な感覚入力改善については局所振動より効果の評価が難しく今後のさらなる研究が期待されているところです。
6. 振動刺激はどのように使われている?
研究で得られた知見をもとに振動刺激はリハビリや理学療法の場でも活用が広がっています。
ただし「どの機器を・どの部位に・どれくらいの強さで・どのくらいの期間」使うのが最適かはまだ研究中の部分も多いのが現状です。
どんな場面で使われているかというとまず慢性腰痛のリハビリで感覚再学習を目的として運動療法と組み合わせて使用されることがあります。
また腰椎手術後の多裂筋萎縮への対応として回復を促す補助的なアプローチとしても検討されています。
そのほか、高齢者の姿勢制御訓練として体幹の固有感覚を賦活させることで転倒予防につながる可能性が研究されていたり、スポーツ障害の予防・復帰プログラムとして深層筋の感覚機能を高める目的で一部のスポーツ現場でも取り入れられていたりします。
注意: 振動刺激はあくまで専門家の指導のもとで行うものです。自己判断で市販の振動機器を使うことがすべての方に適しているわけではありません。腰痛や体の不調を感じている場合はご相談ください。特に骨粗鬆症、人工関節、心臓ペースメーカーをお持ちの方などは注意が必要です。
振動刺激と運動療法の組み合わせ
現在の研究が示唆しているのは、振動刺激を「単独で使う」よりも、意識的な運動療法(特に多裂筋を動員するドローイン・バードドッグなどの体幹トレーニング)と組み合わせることで、より大きな効果が期待できるという考え方です。振動で感覚入力を高めながら、正しい動きを学習させる──このアプローチが、神経系の再教育につながると考えられています。
7. まとめ:振動でカラダの「センサー」を整えよう
長くなりましたが、最後に今回の内容を整理させてください。
- 多裂筋は背骨の深いところにある筋肉で、姿勢の安定と感覚の両方を担っている
- 腰痛が続くと多裂筋が萎縮し、固有感覚(体位を感じる力)が低下しやすい
- 振動刺激は筋紡錘を通じて感覚入力を高め、脳への信号を活性化する
- 多裂筋周囲への振動刺激が姿勢制御・位置感覚誤差の改善に関わる可能性が研究で示されている
- 振動と運動療法の組み合わせが、感覚と筋機能の回復に効果的かもしれない
- 実際の使用の指導のもとで行うことが大切
「腰痛=筋力が足りない」「腰痛=安静にする」という考え方は少しずつ変わってきています。
筋肉の「力」だけでなく、筋肉の「感じる力」を回復させることが、腰痛の本質的な改善につながるかもしれません。
多裂筋という小さな筋肉に、振動というシンプルな刺激を通じて新しい感覚を届ける
──そんなアプローチが、腰痛で悩む方の生活を少しでも楽にする手助けになることを、現在も世界中の研究者が探っています。
なかなか治らないと思いの方是非ご相談ください‼
最後までご覧くださりありがとうございました!
杏鍼灸整骨院の陣内由彦でした。
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参考文献
- Panjabi MM. (1992) The stabilizing system of the spine. J Spinal Disord
- Hides JA et al. (1994, 1996) Multifidus muscle atrophy in acute LBP. Spine
- Brumagne S et al. (2000) Proprioception and LBP. Spine
- Brumagne S et al. (2008) Sensory retraining in chronic LBP. Clinical Rehabilitation
- Kavounoudias A et al. (2001) Trunk vibration and postural control. Exp Brain Res
- Tsao H et al. (2010) Reorganization of the motor cortex in LBP. Cerebral Cortex
- Rittweger J et al. (2002) Whole-body vibration and trunk muscles. Clinical Physiology
- De-la-Torre GH et al. (2023) Tendon vibration review. J NeuroEngineering Rehabil
- Oliver GD et al. (2018) WBV and paraspinal muscle EMG. J Strength Cond Res
投稿者プロフィール

- 柔道整復師、鍼灸師
-
院長 柔道整復師 鍼灸師
福岡医健専門学校卒業
株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。
陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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