
足首の内側にある「内果(ないか)」という骨に、疲労骨折が起こることがあります。特にランニングやジャンプを繰り返すスポーツをされている方に見られることが多いケガです。
この記事では、内果疲労骨折の治療法として注目されている「LIPUS(ライプス)」という治療について、分かりやすくご説明します。
内果疲労骨折とは何か

内果とは、足首の内側にあるくるぶしの骨のことです。
正確には脛骨(すねの骨)の先端部分にあたります。
疲労骨折というのは一度の大きな衝撃で折れるのではなく繰り返しの負担が積み重なって起こる骨折のことです。
金属の針金を何度も曲げ伸ばししていると、最終的に折れてしまうのと似ています。
内果疲労骨折は全ての疲労骨折の中では比較的珍しく足首周辺の疲労骨折の約10%程度とされています。
ただし、一度起こると治りにくい「ハイリスク骨折」として知られており、適切な治療が大切になります。
どんな人に起こりやすいのか
主に次のような方に見られます。
- 陸上競技(特に中長距離走)をされている方
- バスケットボールやバレーボールなどジャンプが多い競技をされている方
- サッカーなどの方向転換が多いスポーツをされている方
- 急にトレーニング量を増やした方
- 足の形(内反足など)に特徴がある方
主な症状
- 足首の内側の痛みと腫れ
- 歩いたり走ったりすると痛みが強くなる
- 休むと楽になるけれど、また動くと痛む
- 内くるぶしを押すと痛い
最初は「ちょっとした痛み」程度のことも多く、見逃されやすいのが特徴です。レントゲン写真でも初期には写らないことがあるため、MRI検査が診断に役立つとされています。
LIPUSとは何か

LIPUS(ライプス)とは、「Low Intensity Pulsed Ultrasound(ローインテンシティ パルスト ウルトラサウンド)」の略称です。日本語では「低出力超音波パルス治療」と呼ばれています。
LIPUSの仕組み
簡単に言うととても弱い超音波を使って骨が治るのを助ける治療法です。
超音波というと妊婦さんのお腹の赤ちゃんを見るエコー検査を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
LIPUSでは、それよりもずっと弱い、でも骨の治癒を促すのに適した強さの超音波を使います。
この弱い超音波が骨に当たると、次のようなことが起こると考えられています。
- 骨を作る細胞が元気になる: 骨芽細胞(こつがさいぼう)という、骨を作る細胞の働きが活発になります
- 骨の材料が増える: コラーゲンというタンパク質の生成が促進され、骨の基礎となる材料が増えます
- 血流が良くなる: 新しい血管ができやすくなり、骨折部に栄養がよく届くようになります
- 炎症が適切に調整される: 治るために必要な炎症反応を、適切にコントロールします
LIPUSの歴史
LIPUSの研究は、1980年代にウサギを使った実験から始まりました。その後、人への応用が進み、今では世界中で使われる治療法になっています。
日本でも2006年に先進医療として認められ、2008年からは保険適用の範囲も広がっています。海外のトップアスリート、例えば元メジャーリーガーの松井秀喜選手や、元サッカー選手のデイビッド・ベッカム選手も、この治療を受けて早期復帰を果たしたことが知られています。
内果疲労骨折に対するLIPUSの効果

研究で示されている効果
多くの研究によって、LIPUSが骨折の治癒を早める可能性が示されています。
通常の骨折に対する研究では、LIPUSを使うことで骨が治るまでの期間が約30〜40%短縮できたという報告があります。例えば、通常なら10週間かかる骨折が、LIPUSを使うと6〜7週間で治る計算になりますね。
疲労骨折への応用
脛骨(すねの骨)の疲労骨折に対する研究では、LIPUSを1日20分使用したところ、従来の保存治療と比べて良好な成績が得られたという報告があります。競技復帰まで平均3ヶ月、痛みの消失まで平均3.8ヶ月、骨の完全な癒合まで平均11ヶ月という結果でした。
ただし、正直に申し上げると、疲労骨折に対するLIPUSの効果については、研究によって結果が分かれているのも事実です。「効果がある」という研究もあれば、「明確な差が見られなかった」という研究もあります。
内果疲労骨折の特徴
内果疲労骨折は、他の部位の疲労骨折と比べて治りにくいとされています。適切に治療しないと、次のようなリスクがあります。
- 完全骨折への進行
- 偽関節(骨がくっつかない状態)
- 長引く痛み
- スポーツ復帰の遅れ
そのため、できるだけ早く、そして確実に治す方法が求められています。LIPUSは、そうした治療の選択肢の一つとして考えられています。
LIPUSの治療方法

実際の治療の流れ
- 診断: まずMRI検査などで疲労骨折の有無や程度を確認します
- 治療計画: 医師がLIPUS治療が適切かどうかを判断します
- 治療の実施:
- 1日1回、約20分間の治療を行います
- 皮膚の上から専用の機器を当てるだけです
- ギプスや装具をつけたままでも治療できます
- 痛みやピリピリ感はほとんどありません
- 継続: できれば毎日、少なくとも週に3〜4日は治療を受けることが推奨されています
- 経過観察: 定期的にレントゲンやMRIで骨の治り具合を確認します
整骨院や接骨院で骨折のLIPUSを受ける時は医師の同意が必要となります。
治療中の注意点
照射位置が大切: 超音波がきちんと骨折部に当たるように、正確な位置に機器を当てることが重要です。医師や技師が適切な位置を確認してくれます。
根気よく続ける: 効果を得るためには、継続して治療を受けることが大切です。忙しくても、できるだけ通院を続けましょう。
他の治療との併用: LIPUSだけでなく、安静や固定、リハビリテーションなど、他の治療と組み合わせることで、より良い結果が期待できます。
LIPUSのメリットとデメリット
メリット
痛みがほとんどない: 治療中に痛みを感じることはほとんどありません。電気治療のようなピリピリ感もありません。
副作用が少ない: 報告されている副作用はほとんどなく、安全性の高い治療法とされています。
年齢制限がない: 子どもからご高齢の方まで、幅広い年齢層で使用できます。
ギプスの上からでもOK: 固定している状態でも治療できるので、骨折の治療と同時進行できます。
早期復帰の可能性: 治療期間が短縮できれば、スポーツや仕事への早期復帰が期待できます。
デメリット・注意点
効果に個人差がある: すべての人に同じように効果があるわけではありません。骨折の状態や個人の治癒力によって差があります。
継続的な通院が必要: 毎日、または頻繁に通院する必要があるため、時間的な負担があります。
保険適用の条件: 疲労骨折の場合、保険適用にならないことがあり、費用が自己負担になる可能性があります。
他の治療法との比較
内果疲労骨折の治療には、LIPUS以外にもいくつかの方法があります。
保存的治療
安静と固定: ギプスや装具で足首を固定し、体重をかけないようにして自然に治るのを待つ方法です。治療期間は数ヶ月かかることが多いです。
メリット: 手術のリスクがない、費用が比較的安い デメリット: 治療期間が長い、競技復帰まで時間がかかる
手術療法
骨折がひどい場合や、保存治療で治らない場合には、手術でネジなどを使って骨を固定する方法もあります。
メリット: 早期から動かせる、確実な固定ができる デメリット: 手術のリスク、傷跡が残る、
研究によると、手術を受けた選手は平均6〜8週間で競技に復帰できたという報告がありますが、保存治療でも適切に行えば同様の期間で復帰できたという報告もあります。
LIPUSの位置づけ
LIPUSは、保存治療と手術の中間的な選択肢として位置づけられることが多いです。手術までは必要ないけれど、通常の保存治療よりも積極的に治癒を促したい、という場合に検討されます。
治療を受ける際のポイント

早期診断が大切
内果疲労骨折は、早期には症状が軽く、見逃されやすい特徴があります。足首の内側に痛みや腫れを感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
特に、スポーツをしていて次のような症状がある場合は要注意です。
- 走ると痛いが、休むと楽になる
- 徐々に痛みが強くなってきた
- 内くるぶしを押すと痛い
医師とよく相談を
LIPUS治療を受けるかどうかは、医師とよく相談して決めましょう。次のような点について、遠慮なく質問してください。
- 自分の骨折の状態はどうか
- LIPUSが適しているか
- 他の治療法との比較
- 治療期間の見込み
- 費用について
- 通院の頻度
生活習慣も大切
LIPUSの効果を最大限に引き出すためには、治療だけでなく、日常生活にも気をつけることが大切です。
栄養: カルシウムやビタミンD、タンパク質など、骨の形成に必要な栄養をしっかり摂りましょう。
禁煙: タバコは骨の治りを遅くすることが知られています。治療中は禁煙をお勧めします。
適切な休養: 無理をせず、医師の指示に従って安静を保ちましょう。
リハビリテーション: 骨が治ってきたら、段階的にリハビリを行い、筋力や柔軟性を回復させます。
療として認められている治療なので、医療機関によっては自費でも受けられることがあります。
よくある質問

Q: 治療は痛いですか?
A: いいえ、ほとんど痛みを感じません。弱い超音波を当てるだけなので、電気治療のようなピリピリ感もありません。リラックスして受けられる治療です。
Q: どのくらいで効果が出ますか?
A: 個人差がありますが、数週間から数ヶ月で効果が現れることが多いです。定期的な検査で骨の治り具合を確認していきます。
Q: 副作用はありますか?
A: 重大な副作用の報告はほとんどありません。安全性の高い治療法とされています。
Q: スポーツはいつから再開できますか?
A: 骨の治り具合によりますが、LIPUSを使うことで、通常より早く復帰できる可能性があります。ただし、医師の許可が出るまでは無理をしないでください。
Q: 毎日通院しないといけませんか?
A: 理想的には毎日ですが、週3〜4日でも効果は期待できます。ご自身の生活スタイルに合わせて、医師と相談して決めましょう。
まとめ
内果疲労骨折は、適切に治療しないと長引く可能性のある、やっかいなケガです。LIPUSは、骨の治癒を促進する可能性のある治療法として、選択肢の一つになり得ます。
ただし、LIPUSがすべての人に効果があるわけではなく、また疲労骨折への効果については、さらなる研究が必要な面もあります。
大切なのは、早期に適切な診断を受け、医師とよく相談しながら、ご自身に合った治療法を選択することです。LIPUS、保存治療、手術など、それぞれにメリットとデメリットがあります。
疲労骨折は、体からの「休んでください」というサインでもあります。この機会に、トレーニング方法や生活習慣を見直すことも大切かもしれません。
一日も早い回復を心よりお祈りしています。不安なことがあれば、遠慮なく医療スタッフに相談してくださいね。
何か不安なことや分からないことがあればご気軽にご相談ください。
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※この記事の情報は一般的な知識に基づいており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。治療については必ず医師にご相談ください。
【参考文献】
- 日本臨床スポーツ医学会誌「下肢疲労骨折に対するLIPUS療法」
- Irion V, Miller TL, Kaeding CC. “The treatment and outcomes of medial malleolar stress fractures: a systematic review”
- Touhey DC, et al. “Medial Malleolar Stress Fracture Treatment and Return to Activity: A Systematic Review”
- その他、複数の医学論文および臨床報告を参考にしています
投稿者プロフィール

- 柔道整復師、鍼灸師
-
院長 柔道整復師 鍼灸師
福岡医健専門学校卒業
株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。
陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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