
こんにちは!福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。
今回のテーマはアキレス腱の痛みについてです。特に杏鍼灸整骨院で来院の多い短距離選手のアキレス腱痛についてです。
短距離選手は全力で走ることを追い求めるからこそ、アキレス腱には大きな負担がかかります。
なぜ傷めやすいのかここについて最新の研究から見えてきたことをやさしくお伝えします。
また杏鍼灸整骨院でよく使われる微弱電流療法についてもアキレス腱への効果をご紹介していきたいと思います。
アキレス腱はどんな組織なのか

アキレス腱はふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)とかかとの骨をつなぐ人体のなかでもっとも太くて強い腱です。
長さは約15センチほどで成人の場合、最大で体重の7〜10倍もの力に耐えられるとされています。(約一トンぐらいといわれています!!)
腱の中身は主に「コラーゲン線維」という糸のような成分でできています。
コラーゲン線維がきれいにそろって並ぶことで、腱は強くしなやかに力を伝えることができます。
腱には筋肉と比べて「血液が流れる量が少ない」という大切な特徴があります。
血流が少ないということは栄養や酸素が届きにくく傷んだときに回復しにくいということでもあります。アキレス腱のなかでも特にかかとの骨から2〜6センチの部分は血流がとても少なく傷みやすいゾーンとして知られています。
腱を専門に研究するKannus(1997年)やMaffulliら(2003年)の報告によると腱の組織は使いすぎや加齢によってコラーゲンの整列が乱れ、脂肪や不規則な新生血管が増えていきます。
これを「腱症(tendopathy)」といいます。「炎症」という言葉を使うこともありますが、実際には古典的な炎症細胞よりも変性した組織が中心であることが多いとされています。
なぜ短距離選手はとくに傷めやすいのか

短距離走とりわけ100m・200m・400mといった種目ではスタートからゴールまでほぼ全力の力を発揮し続けます。
この「爆発的な力の出し方」がアキレス腱にとって大きな負担になります。
走るときのアキレス腱の動きを想像してみてください。
地面に足がついた瞬間、体の重みと勢いがまず足首にかかります。
次の瞬間、かかとが地面を蹴り上げるときにアキレス腱が強くはじけるように縮みます。
この「伸ばされてから縮む」という繰り返しの動作を、スポーツ科学では「伸張・短縮サイクル(stretch-shortening cycle)」と呼びます。
Komi(2000年)の研究ではスプリント中のアキレス腱にかかるピーク荷重は体重の約9倍に達することが報告されています。
これは長距離ランナーの約7倍と比べても明らかに大きく、一歩ごとに腱が受けるストレスが格段に高いことを示しています。
さらに、短距離走ではつま先よりの接地(フォアフット走法)が多くなります。フォアフット接地はかかと接地よりもアキレス腱の伸張が大きくなるためより腱に負荷が集中しやすいとされています(Edingtonら,1990年)。
競技レベルが上がるほど練習の強度も高まります。
練習量が急に増えたとき、あるいは休養が不十分なときに、腱は回復しきれない状態のまま再び強い刺激を受け続けます。
これが積み重なると少しずつ組織にダメージが蓄積していくのです。
主な原因を一つひとつ見ていきましょう

研究をもとに整理すると短距離選手のアキレス腱のトラブルには大きく分けて次のような要因が関わっています。
① トレーニング量の急激な変化
急に練習量を増やしたり休み明けにいきなり高強度の練習を再開したりすると腱が適応する時間が足りなくなります。
Purdamら(2004年)はトレーニング量の急増が腱症のもっとも大きなリスク因子の一つであると述べています。
腱は筋肉よりも適応に時間がかかる組織なので「筋肉は平気なのに腱だけ悲鳴をあげる」という状況が起きやすいのです。
② ふくらはぎの筋力・柔軟性の不足
ふくらはぎの筋肉が硬くなったり疲れて力が出にくくなると本来は筋肉が受け持つはずの衝撃を腱が代わりに受けてしまいます。
MagnussonとKjaer(2003年)は、筋腱ユニットの柔軟性と腱への負荷の関係を詳しく解析しています。
日々のストレッチやケアが腱を守るうえでとても大切な理由がここにあります。
③ アライメント(骨格の配置)の問題
足首や膝の動きの癖、かかとの内側への倒れ込み(回内足)、扁平足なども腱に不均一なストレスをかける要因になります。
Clementら(1984年)は、回内足をはじめとする下肢アライメントの乱れとアキレス腱炎の関連を報告しています。走り方のクセや足のアーチの状態は思った以上に腱への影響が大きいのです。
④ 血流不足と組織の特性
前述のようにアキレス腱の特定部位は血流が少ないため細胞の入れ替わりが遅く損傷の修復に時間がかかります。
年齢とともにこの傾向は強まり30代以降にアキレス腱のトラブルが増えるのはこのためとも考えられています。
⑤ シューズ・路面環境
スパイクシューズは足底が薄くかかとのクッションが少ないため着地の衝撃が直接伝わりやすい構造になっています。また、固い路面(アスファルト・固いトラック)での練習が続くと衝撃吸収の機会が減ります。
練習環境の選択も、腱への負担に関係しています。
⑥ 休養・睡眠・栄養の不足
腱の修復は安静時に行われます。
睡眠不足や栄養の偏り特にタンパク質・ビタミンC・コラーゲン合成に関わる栄養素の不足は腱の回復を遅らせる可能性があります(Shawら,2017年)。
食事と睡眠は地味に見えますが腱のコンディション管理においてとても重要な要素です。
一つひとつの要因が単独で問題になることは少なく、多くの場合は複数が重なり合うことで腱に症状が現れてきます。スプリントの繰り返しで腱に微細な傷が生じ血流の少ない腱は回復が遅く、次の練習までに組織が修復しきれない。
その状態が続くとコラーゲンの配列が乱れ、弾力・強度が低下し、やがて朝の動き始めの痛みや練習後の違和感として現れてくるのです。
これらの事から「アキレス腱は消耗品」という残念な表現をした言葉をアスリートから聞いたことがあります。
ただしっかりケアができると回復量が上回り痛みが出ないようになることもちゃんとあります。
微弱電流(マイクロカレント)ってなに?
「電気で治す」というと少し驚かれるかもしれませんが微弱電流は私たちの体のなかでもともと流れている生体電流ととても近い性質のごくごく弱い電気です。
単位は「マイクロアンペア(μA)」で、1マイクロアンペアは100万分の1アンペア。皮膚に触れてもほとんど感じない強さです。
これに対してよく知られる「低周波治療(TENS)」や「干渉波治療」は「ミリアンペア(mA)」というもっと強い電気を使います。
ビリビリとした刺激を感じるのはこちらです。
マイクロカレントは感じないくらい弱いけれど細胞レベルに直接働きかけると考えられているところが最大の特徴です。
私たちの細胞はそれぞれが微弱な電位差を持ちながら機能しています。
組織が傷ついたときには「傷害電流(current of injury)」と呼ばれる電気的な変化が生じこれが修復のスイッチの一つになると考えられています。
マイクロカレントはこの傷害電流に近い電気を外から補うことで細胞の修復プロセスをサポートする可能性があるとされています(Chengら,1982年)。
腱・靱帯・筋肉などの結合組織の細胞(線維芽細胞)はコラーゲンを作る工場のような存在です。
研究によるとマイクロカレントがこの線維芽細胞を活性化しコラーゲン合成を促す可能性が示されています。
研究が示す微弱電流の効果

① ATP(細胞のエネルギー)産生を高める
細胞が動くためには「ATP(アデノシン三リン酸)」というエネルギーの通貨が必要です。
Chengら(1982年)の基礎研究では、マイクロカレントを当てることでATP産生が最大500%近く増加することが報告されました。
さらにタンパク質合成も促進されたといいます。
一方、強すぎる電流ではむしろATP産生が低下することも示されており「弱い電流だからこそ効く」という逆説的なメカニズムが注目されました。
② コラーゲン合成と腱の修復
Bylら(1996年)はラットを使った実験で手術で切断した腱にマイクロカレントを当てると当てない群と比べてコラーゲンの合成量が増え腱の引っ張り強度も高くなることを報告しています。
腱の修復プロセスを助ける可能性を示した重要な研究の一つです。
③ 炎症の調整と痛みの緩和
Ngら(2003年)がアキレス腱炎の患者さんを対象に行ったランダム化比較試験ではマイクロカレント治療を行ったグループは偽治療(電流を流さないまま機器を当てるだけ)のグループと比べて痛みのスコアや機能面の改善がより早くより大きかったことが報告されています。
またマイクロカレントは炎症に関係する物質(プロスタグランジンなど)の産生を調整し過剰な炎症を穏やかにする可能性があるとされています(Bertolucci,1995年)。
痛みを伝える神経の興奮を和らげる作用も報告されており練習後の腫れや朝の痛みを和らげる助けになるかもしれないとされています。
④ 筋肉の疲労回復
スポーツの現場では練習後の疲労回復にもマイクロカレントが使われることがあります。
Curtisら(2010年)の報告では高強度運動後にマイクロカレントを当てたグループは翌日の筋肉痛(DOMS:遅発性筋肉痛)が軽減する傾向が見られました。
腱だけでなくふくらはぎの筋肉の疲労を和らげることで間接的にアキレス腱を守ることにもつながるかもしれません。
実際にはどう使うの?
マイクロカレントはスポーツ医学や整形外科のリハビリ、接骨院などの現場で使われています。
アキレス腱への対応では練習後の炎症・腫れの予防的ケアやアキレス腱炎の初期から慢性期の治療補助、術後や長期離脱からの復帰に向けた組織修復サポートなどさまざまな場面で活用されることがあります。
近年、家庭用のマイクロカレント機器も増えてきましたが、電流の質・精度・出力範囲などはプロ用機器と異なる場合があります。セルフケアとして活用したい場合は杏鍼灸整骨院では貸し出しも販売も行っておりますのでご相談ください。
マイクロカレントはあくまでも回復を助けるツールの一つです。
アキレス腱のトラブルに対するより総合的なアプローチとしては適切な練習量のコントロール腱に適切な負荷をかけながら組織の再生を促すエキセントリックエクササイズ(かかとをゆっくり下ろす運動など)ふくらはぎの柔軟性を保つストレッチそしてコラーゲン合成を支える栄養と十分な睡眠の確保こういった内容が組み合わせて行われることが多いです。
エキセントリックエクササイズについてはこちらもご覧ください!

まとめ
短距離走は瞬間的に体重の9倍もの力がアキレス腱にかかるスポーツです。
血流が乏しい腱は本来回復に時間がかかる組織ですが、練習量の急増・柔軟性の低下・アライメントの問題・栄養や休息の不足といった要因が重なると、づかないうちにダメージが積み重なっていきます。
微弱電流(マイクロカレント)は細胞のエネルギー代謝を高め、コラーゲン合成を促し、炎症を調整する可能性を持つケアの手法です。
強い電流ではなく、体の生体電流に近いごく弱い電気だからこそ、細胞に優しく働きかけられるという点がユニークです。
もちろん、マイクロカレントだけで何もかもが解決するわけではありません。
トレーニングの計画・体のコンディション管理・エクササイズ・栄養などを組み合わせた包括的なアプローチが、アキレス腱を守りながら競技を続けていくためにはもっとも大切です。
「最近、朝の動き始めにアキレス腱が痛い」「練習後にじわじわ違和感が出る」という方はぜひ早めにご相談ください。早期のケアが、長い競技生活を守る一番の近道かもしれません。
最後までご覧くださりありがとうございました!
杏鍼灸整骨院の陣内由彦でした。
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参考文献
- Kannus P. (1997). Etiology and pathophysiology of chronic tendon disorders in sports. Scand J Med Sci Sports, 7(2), 78–85.
- Maffulli N, et al. (2003). Overuse tendon conditions: time to change a confusing terminology. Arthroscopy, 14(8), 840–843.
- Komi PV. (2000). Stretch-shortening cycle: a powerful model to study normal and fatigued muscle. J Biomech, 33(10), 1197–1206.
- Edington CJ, et al. (1990). The kinematic determinants of plyometric diving performance. Int J Sport Biomech, 6(4), 441–448.
- Purdam CR, et al. (2004). A pilot study of the eccentric decline squat in the management of painful chronic patellar tendinopathy. Br J Sports Med, 38(4), 395–397.
- Magnusson SP, Kjaer M. (2003). Region-specific differences in Achilles tendon cross-sectional area in runners and non-runners. Eur J Appl Physiol, 90(5–6), 549–553.
- Clement DB, et al. (1984). Achilles tendinitis and peritendinitis: etiology and treatment. Am J Sports Med, 12(3), 179–184.
- Shaw G, et al. (2017). Vitamin C–enriched gelatin supplementation before intermittent activity augments collagen synthesis. Am J Clin Nutr, 105(1), 136–143.
- Cheng N, et al. (1982). The effects of electric currents on ATP generation, protein synthesis, and membrane transport in rat skin. Clin Orthop Relat Res, 171, 264–272.
- Byl NN, et al. (1996). Incisional wound healing: a controlled study of low and high dose ultrasound. J Orthop Sports Phys Ther, 24(5), 301–310.
- Ng GY, et al. (2003). Microcurrent therapy facilitates recovery of acute lateral ankle sprain without subsequent muscle dysfunction. J Orthop Sports Phys Ther, 33(8), 448–455.
- Bertolucci LE. (1995). Introduction of anti-inflammatory drugs by iontophoresis: double blind study. J Orthop Sports Phys Ther, 21(5), 289–295.
- Curtis D, et al. (2010). The efficacy of frequency specific microcurrent therapy on delayed onset muscle soreness. J Bodyw Mov Ther, 14(3), 272–279.
投稿者プロフィール

- 柔道整復師、鍼灸師
-
院長 柔道整復師 鍼灸師
福岡医健専門学校卒業
株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。
陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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