慢性アキレス腱症に対するラジオ波治療の可能性

  • URLをコピーしました!

こんにちは!筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

アキレス腱の痛みで悩んでいる方は多いですね。

特にスポーツをされている方や、日常的によく歩く方の中には、かかとの後ろ側に痛みを感じたり、腫れを感じたりする経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

このような症状が3か月以上続く場合、「慢性アキレス腱症」と呼ばれることがあります。

最近、この慢性アキレス腱症の治療法として、「ラジオ波治療」という新しい治療方法が注目を集めています。

今回は、この治療法についてできるだけわかりやすくご説明したいと思います。

目次

アキレス腱症とは何でしょうか

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ、とても大切な腱です。私たちが歩いたり、走ったり、ジャンプしたりする時に、この腱には体重の何倍もの力がかかっていると言われています。

アキレス腱症になると、主に次のような症状が現れることがあります。

  • かかとの後ろ側、または少し上の部分に痛みを感じる
  • 腱の周辺が腫れたように感じる
  • 運動をした後に痛みが強くなる
  • 朝起きた時や、動き始めに特に痛みを感じる

このような症状が3か月以上続く場合、慢性的な状態になっている可能性があります。慢性化すると、日常生活やスポーツ活動に支障が出ることもあり、中には手術が必要になる方もいらっしゃいます。

ラジオ波治療って何ですか

ラジオ波治療は、「電気の力を使った深部温熱療法」とも呼ばれる治療法です。難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと「体の深い部分を温めることで、自然治癒力を高める治療法」です。

この治療法には、「容量性」と「抵抗性」という2つのモードがあります。

容量性モードは皮膚に近い部分を、抵抗性モードはより深い組織(腱や骨など)を温めることができると考えられています。

ラジオ波治療の特徴は、単に外から温めるのではなく、電気エネルギーを使って体の内側から温度を上げる点にあります。

このため、表面だけでなく深い部分の組織にも効果が期待できると言われています。

杏鍼灸整骨院ではこの機器をいち早く取り入れています。

ラジオ波治療はどのように働くのでしょうか

ラジオ波治療が体に与える影響について、研究者たちは次のようなことを考えて研究結果を発表しています。

血液の流れを良くする効果

治療によって組織が温まると、血管が広がり、血液の流れが良くなる可能性があります。

血液の流れが良くなると、傷ついた組織の修復に必要な栄養や酸素がより多く届けられることが期待されます。

また、不要になった老廃物も効率よく運び出されると考えられています。

細胞の働きを活発にする効果

温度が上がることで、細胞の代謝活動が活発になる可能性があると考えられています。

これによって、傷ついた組織の修復が促進されることが期待されています。

腱の柔軟性を高める効果

研究によると、温度と電気刺激の組み合わせが、腱などの組織の粘弾性(伸び縮みする性質)に影響を与える可能性があるとされています。

これにより、硬くなった組織が柔らかくなることが期待されています。

むくみを改善する効果

リンパ液の流れが良くなることで、腫れやむくみが改善される可能性があると言われています。

痛みを和らげる効果

ラジオ波治療によって、痛みを感じる神経の活動が落ち着く可能性があると考えられています。

慢性アキレス腱症の治療に関する研究

アキレス腱症の治療については、これまで多くの研究が行われてきました。

エキセントリック運動の重要性

従来、慢性アキレス腱症の治療では「エキセントリック運動」と呼ばれる特殊な筋力トレーニングが効果的だと考えられてきました。これは、かかとをゆっくりと下ろす動作を繰り返すトレーニングです。

研究によると、このエキセントリック運動を12週間続けることで、多くの患者さんの痛みが改善したという報告があります。ただし、すべての方に同じように効果があるわけではなく、特にスポーツをしていない方や女性では、効果が少し控えめになる傾向があるという指摘もあります。

エキセントリック運動がなぜ効くのかについては、まだ完全には解明されていません。以前は「腱の構造自体が改善するから」と考えられていましたが、最近の研究では、「筋肉の働きが変わって、腱にかかる負担が減るから」という説が有力になってきています。

ラジオ波治療を加えることの意義

最近行われた臨床試験では、従来のエキセントリック運動に加えて、ラジオ波治療を併用することの効果が調べられています。

この研究では、3か月以上症状が続いている慢性アキレス腱症の患者さんを対象に、エキセントリック運動だけを行うグループと、エキセントリック運動にラジオ波治療を加えるグループを比較しました。

研究者たちは、ラジオ波治療を加えることで、以下のような追加効果が得られるのではないかと考えています。

  • 痛みがより早く改善する
  • 運動機能がより向上する
  • 腱の構造的な変化がより促進される
  • スポーツへの復帰がより早くなる

ただし、この研究はまだ進行中であり、確実な結果が出るまでには時間がかかります。

他の治療法との比較

アキレス腱症の治療には、ラジオ波以外にもいくつかの選択肢があります。

衝撃波療法

衝撃波療法は、強い音波を使って体の自然治癒力を活性化させる治療法です。研究によると、最低3回の治療を受けた後、4か月経過した時点で、約52〜64%の患者さんが完全に回復したか、大幅に改善したという報告があります。

ただし、治療中に痛みを感じることがあるため、すべての方に適しているわけではありません。

レーザー治療

低出力レーザー治療は、細胞の代謝活動を高めることで、自己治癒能力を刺激する治療法です。研究では、エキセントリック運動と組み合わせることで、より早い回復が期待できるという報告があります。

超音波療法

超音波療法は、高周波の音波を使って痛みを軽減し、機能を改善する治療法です。多くの理学療法施設で利用できるため、アクセスしやすいという利点があります。衝撃波療法と比較すると効果はやや控えめかもしれませんが、患者さんが受け入れやすい治療法だと言われています。

ラジオ波治療の位置づけ

ラジオ波治療は、これらの治療法の中では比較的新しい選択肢です。単独で使用されることは少なく、通常は他の治療法と組み合わせて使用されることが多いようです。

ラジオ波治療の利点として、次のような点が挙げられます。

  • 表面だけでなく深部の組織まで治療できる
  • 痛みが少なく、患者さんが受け入れやすい
  • 手技療法と組み合わせやすい
  • 様々な段階の症状に対応できる

治療を受ける際の注意点

ラジオ波治療を検討される場合、以下の点にご注意ください。

注意が必要な方

  • ペースメーカーを使用している方
  • 治療部位の近くに金属製のインプラントがある方
  • 悪性腫瘍の治療中の方
  • 治療に使用するクリームにアレルギーがある方

治療の進め方

通常、ラジオ波治療は週に数回、数週間から数か月にわたって継続的に行われます。治療効果を実感できるまでには、ある程度の時間がかかることが多いようです。

また、ラジオ波治療だけでなく、エキセントリック運動などの自主トレーニングも併せて行うことが推奨されることが多いです。

手技療法との組み合わせ

興味深いことに、研究によると、ラジオ波治療は手技療法(マッサージや関節の動きを改善する手技)と組み合わせることで、より効果的になる可能性があるとされています。

これは、ラジオ波治療の治療時間が比較的長く(通常20〜30分程度)、その間にセラピストが手技を加えることができるためです。組織を温めながら、同時に手技を行うことで、相乗効果が期待できると考えられています。

ある研究では、エキセントリック運動に15分間の手技療法を加えることで、12週間後の成功率が50%から100%に向上したという報告もあります。

治療にかかる期間と経過

アキレス腱症の治療には、残念ながら即効性は期待できません。多くの研究で、少なくとも12週間(約3か月)の継続的な治療が推奨されています。

症状の改善には個人差がありますが、一般的には次のような経過をたどることが多いようです。

  • 最初の2〜4週間:痛みが一時的に増すこともありますが、これは正常な反応であることが多いです
  • 4〜8週間:徐々に痛みが軽減し始めることが多いです
  • 8〜12週間:日常生活での痛みがかなり改善することが期待されます
  • 12週間以降:スポーツ活動への復帰を検討できる段階になることがあります

ただし、これはあくまで一般的な目安であり、実際の回復速度は個人の状態や症状の重さによって大きく異なります。

治療効果を高めるために

ラジオ波治療の効果を最大限に引き出すためには、以下のような点が重要だと考えられています。

継続的な取り組み

治療を途中でやめてしまうと、せっかくの改善効果が失われてしまう可能性があります。医師や理学療法士の指導に従って、根気強く治療を続けることが大切です。

自宅でのエクササイズ

治療施設での治療だけでなく、自宅でのエキセントリック運動などのセルフケアも重要です。ただし、痛みが強い場合は無理をせず、専門家に相談しましょう。

生活習慣の見直し

  • 急激な運動量の増加を避ける
  • 適切な靴を選ぶ
  • ウォーミングアップとクールダウンを丁寧に行う
  • 十分な休養を取る

現在わかっていることと今後の課題

ラジオ波治療については、まだ研究段階のことも多く、すべてが明らかになっているわけではありません。

現在わかっていること

  • ラジオ波治療は組織の温度を上げ、血流を改善する可能性がある
  • 多くの患者さんで痛みの軽減が報告されている
  • 比較的安全で、副作用が少ない治療法である
  • 他の治療法と組み合わせやすい

まだ不明な点

  • どのような患者さんに最も効果的なのか
  • 最適な治療回数や強度はどのくらいか
  • 長期的な効果はどの程度持続するのか
  • エキセントリック運動だけの場合と比べて、どの程度の追加効果があるのか

これらの疑問に答えるために、現在も世界中で研究が続けられています。

まとめ

慢性アキレス腱症は、日常生活やスポーツ活動に大きな影響を与える可能性がある症状です。ラジオ波は、この症状に対する新しい治療選択肢の一つとして注目されています。

従来のエキセントリック運動に加えて、テカールセラピーを併用することで、より早い回復やより良い治療効果が得られる可能性があると考えられていますが、まだ研究段階のことも多く、今後さらなる研究結果の蓄積が待たれます。

もしアキレス腱の痛みでお悩みの場合は、自己判断せず、まずは医師や理学療法士に相談されることをお勧めします。症状の程度や生活スタイル、目標に応じて、最適な治療法を一緒に考えていくことが大切です。

治療には時間がかかることが多いですが、適切な治療と継続的な取り組みによって、多くの方が症状の改善を経験しています。焦らず、根気強く治療に取り組んでいただければと思います。

またなにか怪我に関してやテーピング方法など疑問がある方は気軽にご相談ください。


参考文献

  1. Clijsen R, et al. (2020). Does the Application of Tecar Therapy Affect Temperature and Perfusion of Skin and Muscle Microcirculation? A Pilot Feasibility Study on Healthy Subjects. Journal of Alternative and Complementary Medicine, 26(2):147-153.
  2. López-de-Celis C, et al. Thermal effects and current flow in the myotendinous junction of the medial gastrocnemius and Achilles tendon during TECAR therapy (詳細は臨床試験レジストリNCT05539586を参照).
  3. Malliaras P, et al. (2015). Eccentric or Concentric Exercises for the Treatment of Tendinopathies? Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 45(11):853-863.
  4. Prudêncio DA, et al. (2023). Eccentric exercise is more effective than other exercises in the treatment of mid-portion Achilles tendinopathy: systematic review and meta-analysis. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation, 15:9.
  5. Beyer R, et al. (2015). Heavy Slow Resistance Versus Eccentric Training as Treatment for Achilles Tendinopathy. The American Journal of Sports Medicine, 43(7):1704-1711.
  6. Stania M, et al. (2019). Extracorporeal Shockwave Therapy for Achilles Tendinopathy: A systematic review.
  7. Notarnicola A, et al. (2017). Short term efficacy of capacitive-resistive diathermy therapy in patients with low back pain: A prospective randomized controlled trial. Journal of Biological Regulators and Homeostatic Agents, 31:509-515.
  8. Dedes V, et al. (2020). Comparison of ultrasound with shockwave therapy for Achilles tendinopathy.
  9. TECAR Therapy Associated with High-Intensity Laser Therapy (HILT) and Manual Therapy in the Treatment of Muscle Disorders: A Literature Review. PMC Articles, 2022.
  10. The Effectiveness of TECAR Therapy in Musculoskeletal Disorders (2024). Indian Journal of Physiotherapy and Occupational Therapy – An International Journal, 18(Conf 1):36.

※本記事の内容は、2025年11月時点での研究情報に基づいており、今後の研究によって内容が更新される可能性があります。実際の治療については、必ず医師や理学療法士にご相談ください。

投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次