シンスプリントでお悩みの方へ鍼灸治療という選択肢

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こんにちは!筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

今回はシンスプリントに対する鍼灸の効果の可能性をご紹介していきたいと思います。

目次

シンスプリントってどんな症状?

ランニングやジャンプをする競技をされている方なら、「シンスプリント」という言葉を一度は耳にされたことがあるかもしれません。正式には「脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)」といい、すねの内側に痛みが出る症状のことです。

運動を始めると痛みが出て、休むと少し楽になる。でもまた練習を再開すると痛みがぶり返してしまう。そんな経験はありませんか?これがシンスプリントの典型的な症状パターンです。

陸上競技やバスケットボール、サッカー、バレーボールなど、走ったり跳んだりする動作が多い競技で特によく起こります。統計では、ランナーの約15~20%が経験するといわれており、決して珍しい症状ではありません。

当院でもよく来院されるものになります。

なぜシンスプリントになるの?

シンスプリントは、すねの骨(脛骨)に繰り返し負担がかかることで起こります。ランニングやジャンプの着地のたびに、骨には衝撃が伝わります。これが何度も何度も繰り返されると、骨を覆っている膜や骨そのものに小さなダメージが蓄積していくのです。

特に以下のような場合に起こりやすいことが分かっています:

  • 練習量や強度を急に増やしたとき:体がまだ慣れていない状態で負担をかけすぎると危険です
  • 硬い地面で練習するとき:コンクリートやアスファルトは衝撃が大きくなります
  • シューズが合っていないとき:古くなったシューズやサイズが合わないシューズは要注意です
  • 足の形の問題:扁平足(へんぺいそく)やオーバープロネーション(着地時に足が内側に倒れ込みすぎること)がある場合

また、最近の研究では、ふくらはぎの奥にある筋肉(特に後脛骨筋という筋肉)の緊張や疲労も関係していることが分かってきています。

この筋肉がすねの骨に引っ張る力が強くなりすぎると、骨への負担が増えてしまうのです。

従来の治療法

シンスプリントと診断されると、多くの場合、以下のような治療が勧められます:

安静(相対的休養) 完全に運動を止めるのではなく、痛みが出ない範囲で活動量を調整します。水泳や自転車など、すねへの負担が少ない運動に切り替えることもあります。

アイシング 炎症を抑えるために、練習後に患部を冷やします。

ストレッチング ふくらはぎや足首周りの筋肉を柔らかくすることで、すねへの負担を減らします。

筋力トレーニング 足首やすね周りの筋肉を強化することで、衝撃を吸収する力を高めます。

インソール(足底板) 足のアライメントを整えて、負担を減らします。

これらの方法は確かに効果的なのですが、改善までに時間がかかることも多く、競技への早期復帰を望むアスリートにとっては悩ましいところです。

鍼灸治療という新しい選択肢

近年、シンスプリントに対する治療法として、鍼灸治療が注目を集めています。特に「ドライニードリング」という手法や「鍼通電(はりつうでん)」という電気を使った鍼治療が、痛みの軽減に効果があることが研究で示されてきました。

ドライニードリングとは?

ドライニードリングは、細い鍼を筋肉に刺して、筋肉のこわばりや痛みを改善する治療法です。「ドライ」という名前は、薬を注射するのではなく、針だけ(乾いた状態)を使うことから来ています。

筋肉の中にある「トリガーポイント」と呼ばれる固く緊張した部分に鍼を刺すと、筋肉が「ピクッ」と反応することがあります。これは筋肉の緊張がほぐれるサインで、この反応の後に筋肉が柔らかくなり、血流が良くなって、痛みが和らぐと考えられています。

鍼がなぜ痛みに効くの?

鍼治療が痛みを和らげるメカニズムは、実は科学的にも解明されてきています:

1. 痛みの信号をブロック 鍼の刺激が、痛みの信号が脳に届くのを邪魔します。これを「ゲートコントロール」といいます。例えるなら、鍼の刺激が痛みの情報を通す「門」を閉めてくれるようなイメージです。

2. 天然の鎮痛物質を出す 鍼の刺激によって、体の中で「エンドルフィン」という天然の痛み止めが作られます。これは体が自分で作り出す鎮痛剤のようなもので、痛みを感じにくくしてくれます。

3. 血流を良くする 鍼を刺すと、その周りの血流が良くなります。新鮮な血液が届くことで、痛みのもとになる物質が流され、組織の回復が促されます。

鍼通電ってなに?

鍼通電は、刺した鍼に弱い電気を流す治療法です。普通の鍼治療よりも、さらに強い効果が期待できるといわれています。

電気を流すといっても、感じ方は人それぞれで、「ピリピリする」「トントンする」というような心地よい刺激を感じる程度です。この電気刺激によって、筋肉が自然にポンプのように動いて、より効果的に血流が改善されるのです。

また、電気の周波数(1秒間に何回刺激するか)を変えることで、違った効果を引き出すこともできます。低い周波数では深い鎮痛効果が、高い周波数では即効性のある痛みの軽減が期待できるとされています。

シンスプリントへの効果は実証されているの?

最近の研究では、シンスプリントに対するドライニードリングの効果が報告されています。

ある臨床研究では、ドライニードリングを受けたグループは、受けなかったグループに比べて、痛みが明らかに減ったという結果が出ています。特に、運動中の痛みや、押したときの痛みの改善が顕著だったそうです。

また、足首の動きやすさ、特につま先を上げる動作(背屈といいます)も良くなったという報告もあります。これは、ふくらはぎの筋肉の緊張がほぐれた証拠で、シンスプリントの改善につながる大切なポイントです。

ただし、鍼灸治療の研究はまだまだ発展途上の段階です。どのくらいの頻度で、どのくらいの期間治療を続ければ最も効果的なのか、どんな人により効果があるのかなど、今後さらに詳しく調べていく必要があります。

治療はどんな風に進むの?

初回

まず、詳しくお話を聞かせていただきます。痛みがいつから始まったのか、どんなときに痛むのか、これまでどんな治療を受けてきたのか、などです。

次に、実際に患部を触って確認します。どこが痛むのか、筋肉の緊張はどうか、足首の動きはスムーズかなどをチェックします。

場合によっては、より重い状態(疲労骨折など)との区別が必要なこともあります。そのような場合は、整形外科での画像検査をお勧めすることもあります。

治療の流れ

鍼灸治療では、主にふくらはぎの奥の筋肉(後脛骨筋やヒラメ筋など)に鍼を刺します。これらの筋肉は、すねの骨の内側につながっていて、シンスプリントと深く関係しているからです。

触診で固くなっているところや、押すと痛いところを見つけて、そこに鍼を入れていきます。鍼の太さは髪の毛程度の細さで、多くの場合、思ったほど痛くないことに驚かれる方も多いです。

鍼通電を行う場合は、刺した鍼に電極をつないで、弱い電気を流します。最初はとても弱い刺激から始めて、心地よいと感じる強さに調整していきますのでご安心ください。

治療時間は、通常15分から30分程度です。

治療の頻度と期間

症状の程度にもよりますが、最初のうちは週に1~2回程度の治療が推奨されることが多いです。症状が改善してきたら、徐々に間隔を空けていきます。

効果を実感できるまでの期間も人それぞれですが、早い方では数回の治療で痛みの軽減を感じられることもあります。ただし、しっかりと治して再発を防ぐためには、ある程度の期間(数週間から数ヶ月)は継続することをお勧めします。

治療を受けるときの注意点

起こりうる反応

鍼治療の後、一時的に以下のような反応が出ることがあります:

  • 治療した部分に軽い痛みや重だるさを感じる
  • 少し眠気や倦怠感を感じる
  • 翌日に筋肉痛のような感覚がある

これらは体が反応している証拠で、通常は1~2日で自然に治まります。心配な場合は、遠慮なくご相談ください。

鍼治療を受けられない場合

以下のような方は、鍼治療、特に鍼通電を受けられない場合があります:

  • 心臓ペースメーカーを使用している方
  • 妊娠中の方
  • 電気刺激に対して過敏な方
  • 鍼を刺す部分に感染がある方

該当する場合は、必ず事前にお伝えください。

鍼灸治療だけで大丈夫?

鍼灸治療は確かに痛みの軽減に効果的ですが、それだけで完璧というわけではありません。シンスプリントを根本から治し、再発を防ぐためには、総合的なアプローチが大切です。

セルフケアも大切

適切な休養 痛みが強いときは、無理せず休むことも重要です。完全に運動を止める必要はありませんが、すねに負担のかからない運動(水泳や自転車など)に切り替えるのも良い方法です。

ストレッチング ふくらはぎやアキレス腱のストレッチを毎日続けることで、筋肉の柔軟性が保たれ、再発予防につながります。治療者から教わったストレッチは、ぜひ習慣にしてください。

アイシング 練習後のアイシングは、炎症を抑えるのに効果的です。15~20分程度、患部を冷やしましょう。

シューズの見直し 古くなったシューズは衝撃吸収力が落ちています。定期的に新しいものに替えることや、足に合ったものを選ぶことが大切です。

トレーニング計画の見直し 練習量や強度を急に増やさないこと。徐々に体を慣らしていくことが、シンスプリントの予防には欠かせません。

他の治療との組み合わせ

鍼灸治療を理学療法やマッサージなどと組み合わせることで、より良い結果が得られることもあります。

例えば、鍼で筋肉の緊張をほぐした後にストレッチをすると、より効果的に柔軟性が改善されます。また、痛みが軽減した段階で適切な筋力トレーニングを始めることで、再発予防にもつながります。

再発を防ぐために

シンスプリントは、一度良くなっても再発しやすい症状です。以下のポイントを心がけることで、再発のリスクを減らすことができます:

1. 段階的な競技復帰 症状が改善しても、すぐに元の練習量に戻すのは危険です。少しずつ、様子を見ながら運動量を増やしていきましょう。

2. 継続的なケア 症状がなくなった後も、定期的なストレッチやセルフマッサージ、必要に応じたメンテナンス的な鍼灸治療を続けることで、良い状態を保てます。

3. 体からのサインを見逃さない 軽い痛みや違和感を感じたら、無理せず休息を取る。早めの対処が、悪化を防ぎます。

4. トレーニング環境の整備 可能であれば、柔らかい地面(土のグラウンドや芝生など)で練習する、適切なシューズを使う、といった工夫も大切です。

最後に

シンスプリントは、適切に対処すれば必ず良くなる症状です。鍼灸治療、特にドライニードリングや鍼通電は、痛みを和らげ、早期の競技復帰をサポートする有効な選択肢の一つといえるでしょう。

ただし、治療法に「これだけで完璧」というものはありません。鍼灸治療と、適切な休養、セルフケア、生活習慣の改善などを組み合わせることで、より確実に回復へと向かうことができます。

痛みのない、思い切り体を動かせる日々を取り戻すために、一緒に頑張りましょう。

またなにか怪我に関してやテーピング方法など疑問がある方は気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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