
こんにちは!筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内です。
今回は肩こりに対する鍼治療の腸脛靭帯炎に対しての効果をご紹介していきたいと思います。
膝の外側が痛くて走れない、階段の上り下りがつらい。そんな症状にお悩みではありませんか?
もしかするとそれは「腸脛靭帯炎」かもしれません。別名「ランナー膝」とも呼ばれるこの症状は、ランニングや自転車競技の方などに多くみられます。
今回は、腸脛靭帯炎に対する鍼灸治療について、最新の研究をもとに分かりやすくご説明していきます。
「鍼って本当に効くの?」という疑問をお持ちの方にも、科学的な根拠と共にお伝えしていきますね。
腸脛靭帯炎ってどんな症状?

まず、腸脛靭帯炎とは何かを簡単にご説明します。
腸脛靭帯というのは、お尻の筋肉から太ももの外側を通って、膝の下まで伸びている厚い筋膜のことです。この靭帯が膝の骨と繰り返しこすれることで、炎症が起きて痛みが出てきます。
靭帯と名前がついていますが最近は靭帯というよりも長くて太い結合組織である筋膜といわれています。
特に以下のような症状が特徴的です。
- 走っていると膝の外側が痛くなってくる(多くの場合、4〜5km程度で痛みが出始めます)
- 階段の上り下りで痛みを感じる
- 膝を曲げたり伸ばしたりすると違和感がある
- 安静にしていると痛みは治まるけれど、また走ると痛くなる
ランニングを始めて半年から1年くらいの初心者の方に多く見られますが、実は経験豊富なランナーでも発症することがあります。
過去にはオリンピック選手も悩まされたことがあるほど、誰にでも起こりうる症状なのです。
なぜ腸脛靭帯炎になるの?

腸脛靭帯炎の原因はいくつか考えられています。
使いすぎ(オーバーユース)が最も多い原因です。特に急に走る距離を増やしたり、トレーニング量を急に変更したりすると、腸脛靭帯に負担がかかりやすくなります。
その他にも以下のような要因が関係していると言われています。
- O脚や足首の向き(内反)など、体のアライメントの問題
- お尻の筋肉(大臀筋)や股関節周りの筋肉の弱さ
- ランニングシューズが足に合っていない
- 同じ方向にばかり走る(道路の傾斜の影響)
- 運動前のストレッチ不足
つまり、腸脛靭帯炎は単に「使いすぎ」だけでなく、体全体のバランスや筋肉の使い方の問題が背景にあることが多いのです。
れていて、根本的な原因である筋肉のバランスの乱れや、体の使い方の問題まではアプローチできていないことがあるのです。
鍼灸治療はどう効くの?科学的な根拠

では、鍼灸治療は腸脛靭帯炎にどのような効果があるのでしょうか。実は近年、様々な研究が行われています。
研究で明らかになった効果
韓国の研究チームが2025年に発表したシステマティックレビュー(複数の研究を総合的に分析したもの)によると、腸脛靭帯炎に対する鍼灸治療の効果が確認されています。
11件の臨床研究を分析した結果、鍼治療を受けたグループは、従来の治療だけを受けたグループと比べて、統計的に有意な改善が見られたと報告されています。
また、アメリカの医学雑誌「Medical Acupuncture」に掲載された研究では、電気鍼(鍼に電流を流す方法)を週1回、6週間続けたところ、MRI画像で腸脛靭帯の肥厚(厚くなっていた部分)が減少し、痛みも軽減したことが確認されました。
さらに、中国で行われた無作為化比較試験では、従来の鍼治療と芒針(長い鍼を使った特殊な技法)を比較したところ、両方のグループで膝の機能スコアが改善し、鍼灸治療の有効性が示されました。
鍼灸はなぜ効くの?そのメカニズム
では、なぜ鍼灸が腸脛靭帯炎に効果があるのでしょうか。研究から分かってきたメカニズムをご紹介します。
1. 血流の改善
鍼を刺すと、その周辺の血流が良くなることが分かっています。血流が改善すると、炎症を起こしている部分に酸素や栄養が届きやすくなり、痛んだ組織の修復が促進されます。また、老廃物の排出もスムーズになるため、炎症が治まりやすくなるのです。
2. 筋肉の緊張をほぐす
腸脛靭帯は、お尻の筋肉(大臀筋)や太ももの筋肉と密接につながっています。これらの筋肉が硬くなると、腸脛靭帯も引っ張られて緊張してしまいます。鍼治療では、腸脛靭帯に関連する筋肉に直接アプローチすることで、筋肉の緊張を和らげ、腸脛靭帯への負担を軽減することができます。
3. 痛みを抑える物質の放出
鍼刺激によって、体の中から「エンドルフィン」という天然の痛み止め物質が分泌されることが知られています。これにより、痛みが和らぎやすくなります。
4. 炎症を抑える作用
鍼治療には抗炎症作用があることが、多くの研究で報告されています。鍼刺激が炎症性のサイトカイン(炎症を引き起こす物質)の発現を抑えることで、炎症が治まりやすくなると考えられています。
実際の鍼灸治療ではどんなことをするの?

腸脛靭帯炎に対する鍼灸治療では、以下のようなアプローチが行われます。
使用されるツボ(経穴)
研究で効果が報告されているツボには、以下のようなものがあります。
陽陵泉(ようりょうせん) 膝の外側にあるツボで、筋肉の症状に効果があるとされています。膝のお皿の外側から少し下の部分にあります。
風市(ふうし) 太ももの外側にあるツボです。気をつけの姿勢をとったときの中指の位置あたりにあり、腸脛靭帯炎の痛みや炎症に効果的とされています。
居髎(きょりょう) 股関節の外側にあるツボで、お尻の筋肉の緊張をほぐすのに使われます。
梁丘(りょうきゅう) 太ももの前面にあるツボで、膝の痛みに効果があるとされています。
これらのツボに加えて、痛みが強く出ている「阿是穴(あぜけつ)」と呼ばれる圧痛点にも鍼を打つことがあります。
治療の流れ
- 問診と検査 まず、現在の痛みの状態や生活習慣、運動歴などを詳しくお聞きします。その後、実際に膝を動かしてもらったり、触診をしたりして、痛みの原因を探っていきます。
- 鍼治療 炎症が起きている部分やその周辺に鍼を刺していきます。状態に応じて、鍼に電気を流す「鍼通電療法」を行うこともあります。この方法は、炎症を抑えるとともに、痛みを和らげる効果が期待できます。
- お灸 鍼と合わせてお灸を使うこともあります。お灸の温かさで患部の血流を改善し、白血球を集めることで炎症を鎮める効果が期待できます。
- 全身のバランス調整 腸脛靭帯炎は、膝だけの問題ではありません。お尻の筋肉や太もも、股関節など、下半身全体のバランスを整えることが大切です。そのため、患部だけでなく、体全体を診ながら治療を進めていきます。
治療頻度と期間
症状の程度によって異なりますが、多くの研究では週1〜2回の治療を数週間から数ヶ月続けることで効果が得られています。
急性期(痛みが強い時期)は、できるだけ早めに治療を開始することが大切です。慢性化している場合は、それだけ治療期間も長くかかる傾向があります。
他の治療法との組み合わせ
鍼灸治療は、単独で行うこともできますが、他の治療法と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
ストレッチやトレーニング 鍼灸治療で筋肉の緊張をほぐした後は、適切なストレッチやトレーニングを行うことが大切です。特に、お尻の筋肉(大臀筋)や股関節周りの筋肉を強化することで、再発を防ぐことができます。
運動療法 最近の研究では、走り方(フォーム)を改善することと運動療法で股関節の筋力強化を組み合わせた治療が効果的であることが報告されています。
鍼灸治療でまず痛みを和らげ、その後にこうした運動療法を行うことで、より根本的な改善が期待できます。
シューズの見直し 足に合っていないシューズは腸脛靭帯炎の原因になることがあります。治療と並行して、シューズの見直しも検討してみましょう。
再発を防ぐために
腸脛靭帯炎は再発しやすい症状の一つです。治療で痛みが治まった後も、以下のことを心がけましょう。
運動前後のケア 運動前には必ずウォーミングアップとストレッチを行いましょう。
急激な負荷増加を避ける トレーニング量や走行距離を増やす場合は、徐々に増やしていくことが大切です。一般的には、週に10%程度の増加にとどめることが推奨されています。
定期的なメンテナンス 症状が治まった後も、定期的に鍼灸治療を受けることで、筋肉のバランスを保ち、再発を予防することができます。
筋力トレーニング 特にお尻の筋肉(大臀筋)や股関節周りの筋肉を鍛えることで、腸脛靭帯への負担を軽減できます。
まとめ
腸脛靭帯炎は、ランナーやスポーツ愛好家を悩ませる症状ですが、適切な治療を受けることで改善が期待できます。
鍼灸治療は、多くの研究でその効果が確認されており、以下のような作用によって症状の改善に役立つことが分かっています。
- 血流を改善して組織の修復を促進する
- 筋肉の緊張をほぐして腸脛靭帯への負担を軽減する
- 痛みを抑える物質の分泌を促す
- 炎症を抑える
- 体全体のバランスを整える
従来の治療で改善が見られない方や、何度も再発を繰り返している方は、鍼灸治療を検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、鍼灸治療だけに頼るのではなく、適切な運動療法や生活習慣の改善と組み合わせることで、より効果的な治療が期待できます。
膝の痛みを我慢せず、早めに専門家に相談することが、早期回復への近道です。痛みのない快適な生活を取り戻して、また思い切り運動を楽しめる日が来ることを願っています。
参考文献
- Korea Science. (2025). “Acupuncture Treatment for Iliotibial Band Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Journal of Korean Medicine Rehabilitation.
- Yamada, T., et al. (2017). “The Effects of Electroacupuncture with Direct Current on Iliotibial Band Syndrome.” Medical Acupuncture, Liebert Publishers.
- Wang, L., et al. (2022). “Effect of mángzhēn huīcì (relaxing needling with sharp long needle) for iliotibial band friction syndrome: A randomized clinical trial.” Journal of Traditional Chinese Medical Sciences, ScienceDirect.
- Razie, M., Leila, K., Saied, K. (2021). “Shockwave therapy versus dry needling for the management of iliotibial band syndrome: a randomized clinical trial.” Galen Medical Journal.
- Singh, A., Bhagat, U., Sharma, M. (2024). “Effectiveness of dry needling on pain & disability in athletes with iliotibial band tightness- a clinical trial.” Journal of Bodywork and Movement Therapies.
- Fairclough, J., et al. (2006). “Is iliotibial band syndrome really a friction syndrome?” Journal of Science and Medicine in Sport.
- Kanno, K., et al. (2023). “Combined effects of gait retraining and hip abductor strengthening exercises in runners with iliotibial band syndrome: A randomized controlled trial.” Journal of Athletic Training.
- van der Worp, M.P., et al. (2012). “Iliotibial band syndrome in runners: A systematic review.” Sports Medicine.
投稿者プロフィール

- 柔道整復師、鍼灸師
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院長 柔道整復師 鍼灸師
福岡医健専門学校卒業
株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。
陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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