シンディング・ラーセン・ヨハンソン病とLIPUS治療|福岡県筑紫野市二日市の杏鍼灸整骨院

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こんにちは!福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

お子さんが「膝のお皿の下が痛い」と訴えていませんか?

スポーツを頑張っている10歳から14歳のお子さんに起こりやすい「シンディング・ラーセン・ヨハンソン病」という病気があります。

今回はこの成長期骨端症と、新しい治療法として注目されている「LIPUS(低出力超音波パルス治療)」について最新の研究論文をもとに分かりやすくご説明いたします。

目次

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病とは

このシンディング・ラーセン・ヨハンソン病は膝のお皿(膝蓋骨)の下の部分に痛みが出る成長期骨端症です。

成長期のお子さんに起こることが多くいくつかの研究によると主に10歳から14歳の活発なお子さんに見られます。

特にサッカーやバスケットボール、バレーボール、陸上競技など走ったりジャンプしたりする動作が多いスポーツをしているお子さんに発症しやすいことが分かっています。

男の子に起こることが比較的多いとも報告されています。

どんな症状があるのか

典型的な症状としては以下のようなものがあります。

  • 膝のお皿の下の部分を押すと痛い
  • 運動をすると痛みが強くなる
  • 膝を曲げたり、階段を上り下りしたりすると痛い
  • 膝のお皿の下が少し腫れている感じがする
  • 膝の動きが制限される感じがする

これらの症状は特に運動をした後や膝に負担がかかる動作をした時に強くなることが多いようです。

なぜ起こるのか

成長期のお子さんの膝のお皿の下の部分はまだ軟骨の状態で完全に硬い骨になっていません。

太ももの前側にある大きな筋肉(大腿四頭筋)が膝蓋腱という腱を通じて膝のお皿を引っ張ることでこの部分に繰り返しストレスがかかります。

このストレスが積み重なることで膝のお皿の下の部分に小さな傷ができたり炎症が起こったりすると考えられています。

研究ではこれを「牽引性骨軟骨炎」と呼んでいます。

従来の治療方法とその効果

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病は基本的には時間とともに自然に治っていく病気だと考えられています。

最近の総合的な研究レビューによれば多くの場合保存的治療(手術をしない治療)で良い結果が得られることが分かっています。

一般的な治療アプローチ

従来の治療法としては以下のようなものがあります。

運動の制限: 痛みを引き起こすスポーツ活動を一時的に控えることが推奨されています。研究では、多くの患者さんが活動制限によって症状が改善したと報告されています。完全に運動を止める必要はありませんが、ジャンプや急な方向転換など、膝に負担がかかる動作は避けることが大切です。

安静とアイシング: 痛みがあるときは患部を休ませ炎症を抑えるために冷やすことが勧められています。1回15分から20分程度、1日に数回冷やすことが一般的です。

ストレッチング: 太ももの筋肉を柔らかくすることで膝にかかる負担を減らすことができると考えられています。特に大腿四頭筋やハムストリングスのストレッチが重要とされています。

理学療法: 専門家の指導のもと適切なエクササイズを行うことで回復を促すことが期待されています。筋力強化や柔軟性の改善を目的としたプログラムが組まれます。

多くの研究報告ではこれらの保存的治療によって2週間から数ヶ月で症状が改善することが示されています。

ただし、完全に治るまでには12ヶ月から24ヶ月かかることもあるようです。

LIPUS治療とは何か

ここからは、新しい治療の選択肢として研究が進められているLIPUS治療についてお話しします。

LIPUSの基本

LIPUSは「Low-Intensity Pulsed Ultrasound」の略で日本語では「低出力超音波パルス治療」と呼ばれています。

これは非常に弱い超音波を短い間隔(パルス)で患部に当てることで組織の治癒を促すとされる治療法です。

超音波といっても妊婦さんのお腹の赤ちゃんを見るときに使う超音波検査(エコー)とは目的が違います。

LIPUSは見るための超音波ではなく組織に機械的な刺激を与えることで細胞レベルで治癒のプロセスを促進すると考えられています。

LIPUSの特徴

研究によると、LIPUSには以下のような特徴があることが分かってきています。

  • 非侵襲的: 体に傷をつけることなく治療できます
  • 無痛: 治療中に痛みを感じることはほとんどないとされています
  • 低温: 組織を温めることなく、機械的な刺激だけを与えることができます
  • 携帯可能: 小型の装置を使えば、医療機関以外でも治療を続けられる場合があります

腱や骨の治癒に対するLIPUSの効果

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病に直接焦点を当てた大規模な臨床研究はまだ限られていますが似たような組織(腱と骨の接合部)の治癒に対するLIPUSの効果については多くの科学的研究が行われています。

動物実験からの知見

2021年に発表された系統的レビュー(複数の研究をまとめて分析したもの)では28の動物実験が調査されました。

これらの研究では、アキレス腱や膝蓋腱、肩の腱(回旋腱板)など、様々な腱の損傷モデルが使用されました。

その結果、LIPUS治療を受けたグループでは、以下のような効果が認められたと報告されています。

  • 腱の主要な構成成分であるコラーゲンが、より多く、より整った形で作られるようになった
  • 腱と骨がつながる部分での新しい骨の形成が早まった
  • 腱と骨の間にある特殊な軟骨組織(線維軟骨)の再生が促進された
  • 治癒した組織がより強くなり、再び負荷に耐えられるようになった

治癒のメカニズム

ここはちょっと難しいので苦手な方は飛ばしてもらって大丈夫です!

研究者たちによってLIPUSがどのように組織の治癒を促すのかについていくつかのメカニズムが提案されています。

血管の新生促進: 2008年の研究では、LIPUSが血管内皮成長因子(VEGF)という物質の発現を調節することで新しい血管の形成を促進することが示されました。

血流が改善されることで傷ついた組織に酸素や栄養素がより多く届くようになると考えられています。

炎症反応の調節: 2021年の研究では、LIPUSがマクロファージ(免疫細胞の一種)の働きに影響を与えることが報告されています。具体的には炎症を起こすタイプのマクロファージ(M1型)が組織の修復を助けるタイプ(M2型)に変化することを促す可能性があるようです。これにより、過度な炎症を抑えながら、治癒を促進できると考えられています。

コラーゲン合成の促進: 2010年の研究では、LIPUSが腱の治癒過程の早期段階において、コラーゲンの合成を促進することが示されました。ただし、興味深いことに、この研究では治癒の後期段階にLIPUSを適用すると、かえって特定のタンパク質の発現が抑制されることも分かりました。

このことから、LIPUSの効果は治療を開始するタイミングによって異なる可能性があり、治癒の早期段階で使用することが重要かもしれないと考えられています。

他の疾患での臨床応用

LIPUSはシンディング・ラーセン・ヨハンソン病と似た特徴を持つ他の病気の治療においても研究が進められています。

骨折治療での実績

LIPUSは特に骨折の治癒促進においてすでに多くの臨床実績があります。

日本を含む多くの国で骨折治療の補助として医療機器として承認されています。

骨折後の治癒期間を短縮できる可能性があることが複数の臨床試験で示されています。

最新の応用研究

2024年の研究では血流障害を起こす病気(バージャー病)に対してLIPUSを使用したところ4週間後に痛みのスコアが有意に改善したと報告されています。

また別の研究では運動ニューロン疾患のモデル動物においてLIPUSが脳血流を改善し神経炎症を抑制することが示されました。

これらの研究はLIPUSが様々な組織の治癒や機能改善に役立つ可能性を示唆しています。

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病への適用可能性

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病は膝蓋腱と膝蓋骨の接合部における牽引性の損傷です。

これまでご説明してきた研究から考えるとLIPUSがこの病気の治癒を促進する理論的な根拠はいくつかあると考えられます。

研究結果から推測すると患部への血液供給が増えることで治癒に必要な栄養や酸素がより多く届くこと、過度な炎症を抑えながら、組織修復に必要な炎症反応は維持すること、腱の主要な構成成分であるコラーゲンの生成が促進されること、組織の治癒が促進されることで、痛みが早く軽減されることなどが期待できる可能性があります。

ただし、この病気の患者さんを対象とした大規模な臨床試験はまだ行われておらず、最適な治療条件も十分に分かっていません。現時点では研究段階であることを理解しておく必要があります。

総合的なアプローチの重要性

現時点では、LIPUSは従来の保存的治療を完全に置き換えるものではなく、それらを補完する選択肢の一つとして考えられています。

最も効果的な治療は、痛みを引き起こす活動を避ける適切な運動制限、専門家の指導のもとでの理学療法、これらの保存的治療に加えて組織の治癒を促進する補助的な手段としてのLIPUS治療、症状の改善を確認しながら治療計画を調整していく定期的な経過観察、といった要素を組み合わせることかもしれません。

LIPUSの安全性については多くの研究で良好な結果が報告されています。

重大な副作用は報告されておらず体に傷をつけないため感染のリスクもなく治療中に不快感を感じることはほとんどないとされています。

まとめ

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病は、成長期のスポーツをするお子さんに起こりやすい病気です。多くの場合、適切な運動制限と保存的治療によって、時間とともに改善していくことが期待できます。

LIPUS治療は、腱や骨の治癒を促進する可能性を示す多くの科学的根拠があり将来的にはこの病気の治療選択肢の一つとなる可能性があります。ただし、現時点ではまだ研究段階であり実際の臨床応用には慎重な検討が必要です。

もしお子さんがシンディング・ラーセン・ヨハンソン病と診断された場合は、まずは医師の指示に従って従来の治療法を試すことが推奨されます。

その上でLIPUS治療に興味がある場合は担当の医師に相談してみることをお勧めします。

どんな治療法も一人ひとりの患者さんに合わせて選択されるべきものです。

最新の科学的知見を参考にしながら、お子さんにとって最適な治療を見つけていくことが大切です。

何かございましたらご気軽にご相談ください。

またテーピングや怪我に関して疑問がある方は気軽にご質問ください。


投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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