第一肋骨の疲労骨折にLIPUS(オステオトロン)の効果

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こんにちは!福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

スポーツをされている皆さんの中で、肩甲骨のあたりや背中の上のほうに痛みを感じることはありませんか?

もしかしたら、それは「第一肋骨の疲労骨折」という珍しい骨折かもしれません。

杏鍼灸整骨院でも肩甲骨周囲の痛みでご来院された方の中でもこの第一肋骨の疲労骨折もおられました。

今日は、この第一肋骨の疲労骨折に対する「LIPUS(ライプス)」という治療法について、実際の研究論文をもとに、できるだけわかりやすくご説明したいと思います。

目次

第一肋骨の疲労骨折ってどんな骨折?

まずは第一肋骨について

私たちの胸にある肋骨は全部で12対、つまり左右で24本あります。その中で一番上にあるのが「第一肋骨」です。実は、この第一肋骨は他の肋骨とは少し違った特徴を持っています。

第一肋骨は、鎖骨や肩甲骨、そして周りの筋肉に守られているため、普通の外傷では骨折しにくい場所なんです。ところが、スポーツなどで繰り返し負担がかかると、疲労骨折を起こすことがあります。

どんな人がなりやすい?

研究によると、第一肋骨の疲労骨折は以下のような方に多く見られるようです。

  • 野球選手(特にピッチャー)
  • ウェイトリフティングをされている方
  • バレエダンサー
  • テニスやバレーボールなど、腕を頭より上に挙げる動作が多いスポーツをされている方

平均年齢は18歳前後の若い方が多く、成長期のスポーツ選手に起こりやすい傾向があります。また、なで肩の体型や猫背姿勢の方は、特に注意が必要かもしれません。

杏鍼灸整骨院に来られた方は上記以外ではソフトボールのピッチャーやバスケットボールの選手でした。

どうして疲労骨折が起こるの?

第一肋骨には、首から伸びている「斜角筋(しゃかくきん)」という筋肉や、肩甲骨から伸びている「前鋸筋(ぜんきょきん)」という筋肉が付いています。

スポーツで腕を繰り返し使うと、これらの筋肉が何度も何度も収縮して、第一肋骨を引っ張ったり押したりします。特に、鎖骨の下を通る血管の溝のあたりは、第一肋骨の中でも弱い部分とされていて、そこに繰り返しストレスがかかることで、疲労骨折が起こると考えられています。

どんな症状が出るの?

多くの方が訴える症状は、肩甲骨の周りや背中の上のほうの痛みです。約8割の方が、この「肩甲背部痛」を経験されるそうです。

この痛みは、なぜか胸の前側にある肋骨の骨折なのに、背中側に感じるんです。

不思議ですよね。これは、第一肋骨の近くを通っている神経(第8頚神経や第1胸神経)が関係していて、骨折部分からの刺激が神経を伝わって、背中に痛みとして感じられるためだと考えられています。

LIPUSって何?どんな治療法なの?

LIPUSの基本

LIPUS(ライプス)は、「Low Intensity Pulsed Ultrasound(低出力パルス超音波)」の略称です。日本語にすると「弱い超音波を断続的に当てる」治療法、といったところでしょうか。

超音波と聞くと、妊婦健診でお腹の赤ちゃんを見る時のエコー検査を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。LIPUSも同じように超音波を使うのですが、目的は全く違います。

LIPUSは、骨折部位に超音波の刺激を与えることで、骨の治りを早める効果が期待できる治療法なんです。

どうやって治療するの?

治療はとてもシンプルです。骨折した部分の皮膚の上から、専用の機械(治療ヘッド)を当てるだけ。1回の治療時間は約20分で、それを1日1回、毎日続けます。

痛みや不快感はほとんどありません。ピリピリした電気刺激のようなものもなく、電気が苦手な方でも安心して受けられる治療です。

LIPUSはどうやって骨を治すの?

LIPUSから出る超音波は、1秒間に数百万回という細かい振動を起こします。この微細な振動が骨折部分に伝わると、以下のような効果があると考えられています。

  1. 骨芽細胞(こつがさいぼう)の活性化 骨芽細胞というのは、新しい骨を作る細胞です。LIPUSの刺激によって、この細胞が「もっと骨を作ろう!」と活発に働くようになります。
  2. 軟骨細胞の分化促進 骨が治る過程では、まず軟骨ができて、それが徐々に硬い骨に変わっていきます。LIPUSは、この軟骨から骨への変化を助ける働きがあるとされています。
  3. 血流の改善 超音波の振動は、骨折部分の血の流れを良くする効果も期待できます。血流が良くなれば、骨を治すための栄養や酸素がたくさん届くようになります。

詳しくはこちらもどうぞ

第一肋骨の疲労骨折にLIPUSは効くの?研究結果は?

それでは、本題です。第一肋骨の疲労骨折に、LIPUSは本当に効果があるのでしょうか?いくつかの研究論文から見ていきましょう。

ケースレポート1:高校生のウェイトリフティング選手

ある医学雑誌に掲載された症例報告では、17歳の男子高校生のウェイトリフティング選手の例が紹介されています。

この選手は、左肩と肩甲骨の周りに痛みを感じ始めました。特に大きな怪我をしたわけではなく、痛みは徐々に強くなっていったそうです。運動量を減らしてみても症状は改善せず、痛みを感じ始めてから4ヶ月後に病院を受診しました。

レントゲン検査の結果、左の第一肋骨の真ん中あたりに、はっきりとした骨折線が見つかりました。しかも、骨折してからかなり時間が経っているのに、骨がくっつく兆候(仮骨形成)が全く見られませんでした。

そこで、医師は次のような治療を行いました。

  1. スポーツ活動の完全休止(特に左腕を使う運動)
  2. LIPUSによる治療を1日20分、毎日実施

使用したLIPUS機器の設定は以下の通りです。

  • 周波数:1.5MHz
  • 出力強度:30mW/cm²(空間平均・時間平均)
  • 1日の照射時間:20分

治療を続けた結果、6ヶ月後のレントゲン写真では、骨折部分に仮骨(新しい骨)ができて、骨がしっかりくっついていることが確認できました。痛みを感じ始めてから1年後には、症状が完全になくなり、元のレベルでウェイトリフティングに復帰することができたそうです。さらに、その2年後の追跡調査でも、痛みの再発はなく、問題なく競技を続けられていたとのことです。

ケースレポート2:ヨガインストラクターの女性

別の研究では、38歳の女性ヨガインストラクターの症例が報告されています。

この方は、ヨガのポーズを取っているときに、右肩と肩甲骨の周りに4ヶ月間続く痛みを経験していました。レントゲン撮影とCT検査の結果、第一肋骨の疲労骨折で、しかも「遷延治癒(せんえんちゆ)」、つまり骨がくっつくのに時間がかかっている状態と診断されました。

治療は、ヨガの活動制限に加えて、LIPUSを使用。その結果、骨折は無事に治癒し、競技復帰を果たすことができたと報告されています。

この症例は、ヨガのような比較的ソフトな運動でも第一肋骨の疲労骨折が起こりうること、そして治りにくい骨折に対してもLIPUSが効果を示す可能性があることを示しています。

ケースレポート:バスケットボール選手の男性

この方は実際に杏鍼灸整骨院に来院された方で大学三年生のバスケットボール選手でした。

シュートを打とうと手を挙げると背中に痛みがあるという事で第一肋骨の疲労骨折を疑い整形外科に紹介状出し受診して頂きました。

  • 周波数:1.5MHz
  • 出力強度:30mW/cm²
  • 1日の照射時間:20分

で約1カ月程度で復帰する事が出来ました。

疲労骨折全般に対するLIPUSの効果

第一肋骨に限らず、他の部位の疲労骨折に対するLIPUSの効果も研究されています。

脛骨(すねの骨)の疲労骨折に対する研究では、5人のアスリートにLIPUSを毎日20分照射したところ、以下のような結果が得られました。

  • 競技への完全復帰:平均3ヶ月
  • 痛みの消失:平均3.8ヶ月
  • レントゲン上での骨の完全な治癒:平均11ヶ月

従来の安静のみの治療と比べて、明らかに優れた成績だったと報告されています。

肋骨骨折全般に対する最新研究

2024年から2025年にかけて行われた最新の研究では、複数の肋骨を骨折した患者さん20名を、LIPUS治療を受けるグループ(10名)と、従来の治療のみを受けるグループ(10名)に分けて比較しました。

その結果、LIPUS治療を受けたグループでは、痛みの軽減が有意に優れていたことが分かりました。また、気胸(肺に穴が開く状態)や血胸(胸腔に血が溜まる状態)などの合併症がある場合でも、LIPUSは特に効果的だったとされています。

LIPUSの効果:どのくらい治りが早くなるの?

多くの研究で一致している結果は、「LIPUSを使用すると、骨がくっつくまでの期間が約40%短縮される」というものです。

例えば、通常50日かかって骨がくっつく骨折の場合、LIPUSを使うと約30日(1ヶ月)で骨がくっつく可能性があるということです。

ただし、これはあくまで目安で、骨折の場所や程度、個人の体質などによって効果には差があることを理解しておく必要があります。

LIPUSのメリットとは?

1. 非侵襲的な治療

LIPUSは、手術のように体にメスを入れる必要がありません。皮膚の上から機械を当てるだけなので、体への負担が非常に少ない治療法です。

2. 痛みがない

治療中に痛みを感じることはほとんどありません。「本当に治療しているの?」と思うくらい、何も感じないという方も多いようです。

3. 早期復帰の可能性

骨の治癒期間が短縮されることで、スポーツや日常生活への早期復帰が期待できます。特にアスリートにとっては、競技から離れる期間を短くできることは大きなメリットです。

4. 治りにくい骨折にも効果の可能性

通常の骨折だけでなく、治りにくい骨折や遷延治癒、さらには骨がくっつかない「偽関節(ぎかんせつ)」という状態になってしまった骨折に対しても、効果が報告されています。

5. 自宅でも使える機器がある

医療機関での治療が基本ですが、携帯型のLIPUS機器を貸し出ししている施設もあり、自宅で毎日治療を続けることができる場合もあります。

気をつけたいポイント

1. 毎日の継続が大切

LIPUSの効果を得るためには、毎日きちんと治療を続けることが重要です。「今日は面倒だから休もう」と思わず、コツコツ継続することが大切です。

2. 運動制限は守る

LIPUSを使っているからといって、すぐにスポーツに復帰できるわけではありません。骨折部分に負担をかけないよう、医師の指示に従った運動制限を守ることが必要です。

3. 個人差がある

効果には個人差があります。誰もが同じように早く治るとは限らないことを理解しておきましょう。

4. 診断が難しい場合も

第一肋骨の疲労骨折は、レントゲンだけでは見つけにくいこともあります。MRI検査やCT検査が必要になる場合もあるため、痛みが続く場合は、専門医に相談することをお勧めします。

まとめ:第一肋骨の疲労骨折とLIPUS治療

これまでの研究結果から、以下のことが言えそうです。

  1. 第一肋骨の疲労骨折は珍しいが、腕を頭上に挙げる動作が多いスポーツ選手に起こりうる 特に野球、ウェイトリフティング、バレエ、ヨガなどをされている方は注意が必要かもしれません。
  2. 肩甲骨の周りや背中上部の痛みが続く場合は、この骨折の可能性も考える 特に、普通の治療で改善しない場合は、専門医の診察をお勧めします。
  3. LIPUSは第一肋骨の疲労骨折に対して効果が期待できる治療法 複数の症例報告で、良好な結果が示されています。
  4. 運動制限とLIPUSを組み合わせることで、より良い結果が得られる可能性がある LIPUSだけでなく、適切な運動制限も重要です。
  5. 治りにくい骨折に対しても、LIPUSは有効な選択肢となりうる 遷延治癒や偽関節の状態になっても、手術を避けられる可能性があります。

最後に

第一肋骨の疲労骨折は、診断が難しく、治療にも時間がかかることがあります。しかし、LIPUSという治療法の登場により、より早く、より確実に治る可能性が出てきました。

もし、肩甲骨の周りや背中上部に原因不明の痛みが続いている場合は、第一肋骨の疲労骨折の可能性も考えて、スポーツ医学や整形外科の専門医に相談してみてください。

そして、もし第一肋骨の疲労骨折と診断された場合は、LIPUS治療という選択肢があることを覚えておいていただければと思います。

最後までご覧いただきありがとうございます。杏鍼灸整骨院の陣内由彦でした。


是非気軽にお問い合わせください。

※この記事で紹介した研究結果は、限られた症例数に基づくものです。すべての方に同じ効果があるとは限りませんので、ご了承ください。

投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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