膝の裏側の痛み、膝窩筋に鍼灸は効くの?論文から分かる治療効果

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こんにちは!福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

膝の裏側がなんだかズキズキする、階段を降りるときに違和感がある。そんな症状にお悩みではありませんか?

膝の裏側には「膝窩筋(しつかきん)」という筋肉があります。この筋肉は膝の曲げ伸ばしや安定性に大切な役割を果たしていて、スポーツや日常生活で痛めやすい部分でもあるんです。

今回は、この膝窩筋の痛みに対して鍼灸治療がどのような効果を発揮するのか、研究論文の結果をもとに、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。

目次

膝窩筋ってどんな筋肉?

まずは、膝窩筋について少しご説明しましょう。

膝窩筋は、膝の裏側の深いところにある筋肉です。太ももの骨から始まって、すねの骨につながっています。膝を曲げたり、すねの骨を内側にひねったりする動きを助けているんですね。

普段あまり意識することのない筋肉かもしれませんが、実はとても大切な働きをしています。特に、自転車をこぐ動作や、坂道を下るとき、階段を降りるときなどに活躍する筋肉なんです。

どうして膝窩筋が痛くなるの?

膝窩筋が痛くなる原因はいくつか考えられます。

  • スポーツでの使い過ぎ(自転車競技、スキー、マラソンなど)
  • 下り坂を走ったり、階段の昇り降りを繰り返したりする動作
  • 中腰の姿勢を長時間続けること
  • 膝の靭帯を痛めたことがある方
  • 変形性膝関節症の影響

膝の裏側が痛いとき、実は膝窩筋に負担がかかっていることが少なくないのです。

膝の痛みに対する鍼灸治療の研究結果

では、こうした膝の痛みに対して、鍼灸治療は本当に効果があるのでしょうか。世界中で行われている研究を見てみましょう。

大規模な研究が示すこと

2017年に発表された大規模な研究では、2万人以上の患者さんのデータを集めて分析しました。その結果、鍼治療は筋肉や骨の慢性的な痛み、変形性膝関節症、慢性的な頭痛、肩の痛みに対して、実際に鍼をした鍼治療が鍼をするといってしなかった鍼治療よりも効果的であることが分かったのです。

この研究で大切なのは、鍼の効果が「単なる気のせい」ではないことが科学的に証明されたという点です。

統計的にはっきりとした差が認められたんですね。

日本国内の研究から分かること

埼玉医科大学の研究チームが2020年に発表した論文では、変形性膝関節症に対する鍼灸治療の効果について詳しく報告されています。

この研究では、61名の患者さんに鍼治療を行ったところ、約82%の方に効果が見られました。特に興味深いのは、膝の裏側にある膝窩筋を含めた複数の筋肉に対して鍼治療を行うことで、痛みが和らいだという点です。

研究チームは、膝の周りの筋肉の緊張をほぐすことと、鍼治療の効果の間に良い関係があることを発見しました。つまり、筋肉の緊張が取れれば取れるほど、痛みも改善されやすいということなんです。

ドイツでは保険適用になった

特筆すべきは、ドイツで行われた大規模な臨床試験の結果です。

この試験では、鍼治療が通常の西洋医学的な治療よりも効果が大きかったという結果が出ました。その結果を受けて、ドイツでは変形性膝関節症に対する鍼治療が保険でカバーされることになったんです。

これは、鍼治療の効果が国際的にも認められた大きな証拠と言えるでしょう。

鍼灸治療はどのように効くの?

では、鍼灸治療は体の中でどのような変化を起こしているのでしょうか。研究から分かっていることをご紹介します。

痛みを和らげる物質が出る

鍼を刺すと、体の中から「エンドルフィン」という天然の痛み止め物質が出てくることが分かっています。これは、体が自分で作り出す鎮痛剤のようなものなんですね。

2018年に発表された研究論文では、鍼の刺激が脳や神経系に働きかけて、痛みの伝わり方を調整する効果があることが報告されています。

血液の流れが良くなる

鍼を刺すことで、その周辺の血液の流れが良くなることも分かっています。

血液の流れが改善されると、痛みの原因となる炎症物質が流れていきやすくなります。また、組織の修復に必要な栄養や酸素がしっかり届くようになるため、回復が促されるんです。

埼玉医科大学の研究では、鍼灸治療が筋肉の緊張を緩めて血液循環を促進させることで、痛みが軽減すると説明されています。

筋肉の緊張がほぐれる

膝窩筋を含む膝周りの筋肉が硬くなっていると、膝関節に余計な負担がかかってしまいます。

鍼治療は、硬くなった筋肉の緊張を直接ほぐすことができます。埼玉医科大学の研究では、膝周りの筋肉の圧痛(押したときの痛み)や緊張が和らぐことと、患者さんが感じる痛みの改善との間に良い関係があることが確認されています。

特に膝窩筋は膝の裏側の深いところにあるため、マッサージなどでは届きにくい場所です。でも、鍼なら直接その筋肉にアプローチできるんですね。

炎症を抑える効果も

最近の研究では、鍼治療が炎症を抑える効果についても注目されています。

膝の痛みの多くは、筋肉や腱、靭帯などの組織に起こる炎症が原因となっています。鍼の刺激が自律神経系に働きかけて、過剰な炎症反応を抑える可能性があることが2024年の研究で報告されています。

実際の鍼灸治療ではどこに鍼をするの?

膝窩筋の痛みに対する鍼灸治療では、どのような場所に鍼をするのでしょうか。

膝窩筋そのものへのアプローチ

膝の裏側にある膝窩筋に直接鍼を刺すことがあります。この筋肉は深い場所にあるため、ある程度の長さの鍼を使うことになりますが、熟練した鍼灸師であれば安全に施術できます。

埼玉医科大学の研究論文では、膝窩筋を含む膝関節周囲の筋肉や腱、靭帯、神経などに対して、痛みのある場所や筋肉の緊張がある場所を中心に鍼灸治療を行うことが推奨されています。

周辺の筋肉も大切

実は、膝窩筋の痛みを改善するには、周辺の筋肉にも注目する必要があります。

研究によると、太ももの前側にある大腿四頭筋、太ももの裏側にあるハムストリングス、ふくらはぎの筋肉など、膝の動きに関わる複数の筋肉に対して鍼治療を行うことで、より良い効果が得られることが分かっています。

これは、膝の痛みが一つの筋肉だけの問題ではなく、周りの筋肉のバランスが崩れることで起こることが多いからなんです。

ツボ(経穴)も活用

東洋医学の伝統的な考え方に基づいて、膝周りにある特定のツボに鍼をすることもあります。

例えば、「委中(いちゅう)」「陰谷(いんこく)」「委陽(いよう)」といった膝の裏側にあるツボは、膝の痛みに対してよく使われる場所です。「足三里(あしさんり)」というすねの外側にあるツボも、膝の治療には欠かせません。

現代の研究では、これらのツボが筋肉や神経、血管が集まる場所と一致していることが分かってきています。

どれくらいの期間で効果が出るの?

気になるのは、「どれくらい通えば良くなるの?」という点ですよね。

短期的な効果

2007年の研究では、鍼治療の効果は治療終了後8週間以内に最も高いことが報告されています。多くの患者さんは、数回の治療で痛みの軽減を実感されるようです。

ただし、これは個人差が大きい部分でもあります。急性の痛み(最近起こったばかりの痛み)であれば、比較的早く改善する傾向があります。

長期的な効果

同じ研究では、治療終了から6ヶ月後の時点でも、鍼治療を受けた方のほうが痛みや膝の機能が良好に保たれていたことが分かっています。

これは、鍼治療が単に一時的に痛みを抑えるだけでなく、体の状態を改善して、その効果が持続する可能性を示しています。

定期的な治療が大切

多くの専門家は、週に1〜2回程度の治療を4〜8週間続けることを推奨しています。

埼玉医科大学の研究では、軽度の変形性膝関節症の患者さんに対して、4週間にわたって週1〜2回の円皮鍼(置き鍼)による治療を行ったところ、痛みの評価が有意に改善したと報告されています。

他の治療との組み合わせ

研究によると、鍼灸治療だけでなく、運動療法やストレッチ、必要に応じて装具を使うことなどを組み合わせることで、より効果的に症状を改善できることが分かっています。

「鍼灸か運動か」ではなく、「鍼灸も運動も」という考え方が大切なんですね。

副作用は少ないけれど

鍼灸治療は比較的安全な治療法とされていますが、まったく副作用がないわけではありません。

埼玉医科大学の研究では、円皮鍼を使った治療で、軽い痒みや違和感、痛みを感じた方が少数いらっしゃいました。ただし、治療を続けられなくなるような重大な副作用はありませんでした。

通常の鍼治療でも、刺入時にチクッとした痛みを感じたり、治療後に軽いだるさを感じたりすることがありますが、これらは一時的なものであることがほとんどです。

鍼灸治療が特に効果的なケース

すべての膝の痛みに鍼灸治療が同じように効くわけではありません。どのようなケースで特に効果が期待できるのでしょうか。

軽度〜中等度の変形

埼玉医科大学の研究では興味深い発見がありました。膝の変形が軽度の方のほうが、変形が進んだ方よりも鍼治療の効果が高かったのです。

これは、痛みの原因が筋肉の緊張や軟部組織の問題である場合、鍼治療が直接その原因にアプローチできるためと考えられています。

逆に言えば、膝の痛みは早めに対処することが大切だということですね。

筋肉由来の痛み

骨自体に大きな問題がなく、筋肉の硬さや緊張、循環不良が痛みの主な原因となっている場合、鍼灸治療が特に有効である可能性があります。

膝窩筋の痛みの多くは、まさにこのカテゴリーに入ります。使い過ぎによる筋肉の疲労や緊張が原因となっていることが多いんです。

運動器の痛み全般に

2018年の大規模な研究では、筋肉や骨、関節などの「運動器」と呼ばれる部分の慢性的な痛みに対して、鍼治療が効果的であることが示されています。

膝窩筋の痛みも、まさに運動器の痛みの一つです。ですから、研究結果から見ても、鍼灸治療が効果を発揮する可能性は十分にあると考えられます。

鍼灸治療以外にできること

鍼灸治療と併せて、ご自身でできることもあります。

ストレッチ

膝窩筋を含む膝周りの筋肉をゆっくりと伸ばすストレッチは、とても大切です。ただし、痛みがある時に無理に伸ばすのは逆効果になることもあるので、鍼灸師や理学療法士の指導を受けながら行うのが安心です。

適度な運動

膝の周りの筋肉を鍛えることは、膝関節の安定性を高めるために重要です。特に太ももの筋肉(大腿四頭筋)を強化することが推奨されています。

ただし、痛みがある時に激しい運動をするのは避けましょう。鍼灸治療で痛みが和らいでから、少しずつ運動量を増やしていくのが理想的です。

日常生活での工夫

  • 長時間の中腰姿勢を避ける
  • 階段の昇り降りは手すりを使ってゆっくりと
  • 適正体重を維持する(膝への負担を減らすため)
  • 痛みがあるときは無理をせず、適度に休む

こうした日常生活での小さな工夫も、膝窩筋の負担を減らすことにつながります。

よくある質問

Q: 鍼は痛くないですか?

鍼灸で使う鍼は、注射針よりもずっと細いものです(髪の毛くらいの太さ)。多くの方は「思ったより痛くない」「チクッとする程度」と感じられます。

痛みの感じ方は個人差がありますが、熟練した鍼灸師であれば、痛みを最小限に抑えながら治療を行うことができます。

Q: 何回くらい通えばいいですか?

症状の程度や発症からの期間によって異なりますが、一般的には週1〜2回の治療を4〜8週間続けることが推奨されることが多いです。

軽症の場合は数回で改善することもありますし、慢性化している場合はもう少し時間がかかることもあります。

Q: 他の治療と併用できますか?

はい、多くの場合、併用できます。実際、研究でも、運動療法や装具療法と鍼灸治療を組み合わせることで、より良い効果が得られることが示されています。

ただし、関節内への注射(ヒアルロン酸やステロイド)を受けた直後は、鍼灸治療を控えるほうが良いとされています。

まとめ

膝窩筋の痛みを含む膝の痛みに対して、鍼灸治療は科学的な研究でも効果が認められている治療法です。

海外では2万人以上のデータを集めた大規模研究で効果が確認され、ドイツでは保険適用にもなっています。日本国内の研究でも、約8割の患者さんに効果が見られたという報告があります。

鍼灸治療の効果は、以下のようなメカニズムによるものと考えられています。

  • 天然の痛み止め物質(エンドルフィン)の分泌促進
  • 血液循環の改善
  • 筋肉の緊張緩和
  • 炎症を抑える効果

特に、変形が軽度のうちに治療を始めることで、より高い効果が期待できることが分かっています。

膝の裏側の痛みでお悩みの方は、治療の選択肢の一つとして、鍼灸治療を考えてみてはいかがでしょうか。


杏鍼灸整骨院の陣内でした!

投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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