ジャンパーズニー(膝の痛み)の腱の変性と痛みの原因|福岡県筑紫野市杏鍼灸整骨院

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こんにちは!福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

バスケットボールやバレーボール、サッカーなどのスポーツをされている方で膝のお皿の下あたりに痛みを感じている方はいらっしゃいませんか?

その痛みもしかしたら「ジャンパーズニー(膝蓋腱炎)」かもしれません。

ジャンパーズニーは、スポーツをしている方によく見られる膝の痛みですが「なかなか治らない」「何ヶ月も痛みが続いている」という声をよく耳にします。

実は、この治りにくさには医学的な理由があるのです。ここを理解していないと「痛みが無くなった=治った」と思い再発を繰り返し結局長期化してしまうことがあります。

理解をしたうえで施術をしていくと効果を上げることができますし、再発を防げます。

是非最後までご覧ください。

目次

ジャンパーズニーとは?

ジャンパーズニーは正式には「膝蓋腱炎(しつがいけんえん)」や「膝蓋腱症(しつがいけんしょう)」と呼ばれています。

膝のお皿(膝蓋骨)と、すねの骨(脛骨)をつなぐ腱に問題が起きる状態です。

ジャンプや着地、ダッシュなどの動作を繰り返すスポーツで発症しやすくバレーボールやバスケットボール選手に多いことから「ジャンパーズニー」という名前がついたと考えられています。

主な症状としては膝のお皿の下あたりの痛み、運動時や運動後の痛み、階段の上り下りでの痛みなどが挙げられます。

今回は研究論文をもとに、ジャンパーズニーがなぜ治りにくいのかそのメカニズムを患者さん向けに分かりやすくお伝えしていきます。

「炎症」ではなく「変性」が起きている

ジャンパーズニーが治りにくい最も大きな理由の一つは実は「炎症」ではなく「変性」という状態が起きているからなのです。

炎症と変性の違い

「炎症」はケガをしたときに赤くなって腫れて熱を持つような状態です。

炎症は体が治ろうとする反応で通常は数日から数週間で治まっていきます。

一方、「変性」というのは腱の組織そのものが傷んで質が変わってしまった状態を指します。

多くの研究によると慢性的なジャンパーズニーでは炎症細胞がほとんど見られず代わりに腱の組織が変性してしまっていることが分かっています。

このため、最近では「膝蓋腱炎(Tendinitis)」という炎症を示す名前よりも、「膝蓋腱症(Tendinopathy)」という変性を示す名前が使われることが多くなっています。

腱の変性とは具体的にどういうこと?

健康な腱はコラーゲンという線維が規則正しく並んでいてまるできれいに編み込まれたロープのような構造をしています。

このきれいな構造のおかげで腱は強い力に耐えることができ、健康な膝蓋腱は体重の何倍もの力に耐えられると言われています。

ところが、変性が起きると次のような変化が起こります。

コラーゲン線維の配列が乱れる:きれいに並んでいた線維がバラバラになり、ロープがほつれたような状態になります。規則正しい配列が失われることで、腱の強度が大きく低下してしまいます。

コラーゲンの質が変わる:本来、腱には「I型コラーゲン」という丈夫なタイプが約95%を占めていますが、変性すると「III型コラーゲン」という弱いタイプのコラーゲンが増えてしまいます。

細胞や血管の配置が変わる:健康な腱では腱細胞は細長い形で整然と並んでいますが、変性した腱では細胞の形が丸くなったり配列が乱れたりします。

また、新しい血管が増えることがありますが、この新生血管は構造が不完全で効率的に栄養を運ぶことができません。

粘液のような物質が増える:腱の中に「ムコイド変性」と呼ばれる、粘液のような物質が溜まることがあります。

石灰化が起こることもある:一部のケースでは腱の中にカルシウムが沈着して、柔軟性がさらに低下することがあります。

これらの変化によって腱は本来の強さや弾力性を失ってしまうのです。

変性した腱は、正常な腱に比べて引っ張る力に対する強度が30〜50%程度低下することもあると報告されています。

なぜ腱の変性は起きるのか?

研究によると腱の変性が起きる主な原因は「繰り返しの負荷」だと考えられています。では、なぜ繰り返しの負荷が変性を引き起こすのでしょうか。

オーバーユース(使いすぎ)のメカニズム

腱は、運動によって小さな損傷を受けると通常は休息することで修復されます。

これは「正常な適応反応」と呼ばれるものです。適度な負荷と適度な休息があれば腱はむしろ強くなっていきます。

しかし、修復が追いつかないペースで負荷がかかり続けると微細な損傷が蓄積していきます。

ジャンプの着地を繰り返すたびに膝蓋腱には大きな力がかかりこの力が何百回、何千回と繰り返されることでコラーゲン線維に小さな傷が入っていきます。

体は傷を治そうとしますが修復が完了する前に次の負荷がかかってしまうと不完全な修復が繰り返されだんだんと組織の質が落ちていきます。

この段階で、前述したような変性の変化が起こり始め最終的に腱が変性してしまうのです。

血流の問題

腱は元々、筋肉などに比べて血流が少ない組織です。

特に膝蓋腱の中央部分は「血流が乏しい領域」として知られており、栄養や酸素が届きにくいことが分かっています。この部分はちょうどジャンパーズニーの痛みが最もよく出る場所と一致しています。

血流が少ないということは、修復に必要な栄養や酸素が届きにくく、傷んだ組織から出る老廃物が排出されにくいため治癒のプロセス全体が遅くなります。

興味深いことに、ジャンパーズニーの患者さんの腱では、痛みのある部分で新生血管の増加が確認されることがあります。

ただしこれらの新生血管は構造が不完全でかえって痛みの原因になっている可能性も指摘されています。

痛みが続く理由

変性が起きるとなぜ痛みが続くのでしょうか。

ここには、いくつかの重要なメカニズムが関わっています。

神経の増加

健康な腱には神経終末がほとんどありません。

正確に言うと腱の表面を覆う薄い膜には神経がありますが腱の本体部分にはほとんど神経がないのです。

ところが変性した腱では、神経線維が腱の本体部分に入り込んでくることが研究で明らかになっています。

特に重要なのはサブスタンスPという痛みを伝える神経伝達物質を含む神経線維やグルタミン酸の受容体が増加していることです。

興味深いことにこれらの神経線維は前述した新生血管と一緒に腱の中に入り込んでくることが多いのです。

新生血管が形成される時、その周りに神経線維も一緒に伸びてくる傾向があります。

このため新生血管が多い部分では神経も多く痛みを感じやすい状態が作られてしまうのです。

痛みの悪循環

痛みがあると、私たちは無意識のうちに

  • 痛い部分をかばう
  • 動きが不自然になる
  • 筋肉の使い方が変わる
  • 姿勢が変化する

といった代償動作をとってしまいます。

すると本来とは違う筋肉の使い方や関節の動きになり膝蓋腱にかかる負荷の分散が不均等になります。

結果的に、特定の部分に過度な負荷が集中してしまいさらに症状が悪化するという悪循環に陥ることがあるのです。

また痛みがあることで運動を控えると、筋力が低下したり、柔軟性が失われたりして、復帰した時にまた痛みが出やすくなるという別の悪循環も生まれます。

治りにくさを左右する要因

組織の修復速度の遅さ

腱は筋肉などに比べて新陳代謝が非常に遅い組織です。

これは、腱が血流の少ない組織であることと関係しています。

研究によると腱のコラーゲンは完全に入れ替わるまでに数ヶ月から数年かかる可能性があると言われています。

一部の研究では腱のコラーゲンの半減期(半分が入れ替わるまでの時間)は数ヶ月から1年以上とも報告されています。

つまり、一度変性してしまった腱の組織を元の健康な状態に戻すには、相当な時間がかかるということなのです。

これは筋肉の損傷が数週間で治ることと比べると非常に長い期間です。

細胞レベルの変化

少し難しい話ですが変性した腱では腱細胞(テノサイト)自体の性質も変わってしまっています。

健康な腱では腱細胞は細長い形で整然と並んでいますが変性した腱では細胞の形が丸くなったり配列が乱れたりします。

また遺伝子の発現パターンも変わり、I型コラーゲンの産生が減少し、III型コラーゲンの産生が増加します。さらに、一部の研究では腱細胞の死が増加していることも報告されています。

このような細胞レベルの変化が起きると、たとえ負荷を減らしても、腱が本来の状態に戻りにくくなってしまうのです。

マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の増加

マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は簡単に言うと「組織を分解する酵素」です。変性した腱では、このMMPという酵素が増えていることが研究で示されています。

MMPは本来古くなった組織を分解して新しい組織と入れ替える「組織のリモデリング」に重要な役割を持っています。しかし過剰に働くと健康な組織まで分解してしまいます。

つまり体が治そうとして新しいコラーゲンを作っても同時にMMPによる分解も進んでしまうため「作っては壊れ、作っては壊れ」という状態になりなかなか治らないという状況が生まれてしまうのです。

画像診断で見える変化

超音波検査やMRIなどの画像検査で、変性した腱の特徴を見ることができます。

超音波検査での所見

  • 腱の肥厚:変性した部分では腱が通常より太くなっています
  • 低エコー領域:変性した部分は超音波画像で暗く映ります
  • 血流シグナルの増加:新生血管が増えているため血流シグナルが見られます

MRI検査での所見

  • T2強調画像で変性した部分が白っぽく映ります
  • 腱の形態変化が確認できます

これらの画像所見は、腱の構造が変わってしまっていることを示しています。ただし、画像所見と症状の強さが必ずしも一致しないこともあります。

治療の難しさ

「痛いなら休めば治る」と思われがちですが変性した腱は単に安静にしているだけでは元の健康な状態には戻りにくいことが分かっています。

これは変性が単なる「炎症」ではなく組織の質的な変化だからです。安静にすることで痛みは軽減するかもしれませんが、腱の変性そのものが改善するわけではありません。

むしろ、適切な負荷をかけて腱を強化していく「エキセントリック運動」などのリハビリテーションが重要だと考えられています。エクセントリック運動とは、筋肉を伸ばしながら力を入れる運動のことで、研究では腱の構造を改善し、痛みを減らす効果があることが示されています。

また、同じような症状でも変性の程度、痛みの感じやすさ、組織の修復能力、日常生活やスポーツの負荷などは人それぞれであり効果的な治療法も個人によって異なる可能性があります。

回復に向けて大切なこと

ジャンパーズニーが治りにくい理由は、腱の変性という根深い問題があるからです。しかし、適切な対応をすることで、改善の可能性は十分にあると考えられています。

早期発見・早期対応

痛みを感じ始めた初期の段階であれば、まだ変性が進んでいない可能性があります。「少し痛いくらいなら大丈夫」と我慢せず、早めに医療機関を受診することが大切です。

長期的な視点

腱の変性は短期間で起きたものではありません。同じように、回復にも時間がかかることを理解して、焦らず根気強く取り組むことが大切だと言えるでしょう。

まとめ

ジャンパーズニーが治りにくい理由をまとめると:

1. 炎症ではなく変性が起きている 一時的な炎症ではなく、腱の組織そのものが質的に変化してしまっています。コラーゲン線維の配列が乱れ、質の異なるコラーゲンが増え、腱の強度が低下しています。

2. 腱の血流が少ない 特に膝蓋腱の中央部分は血流が乏しく、修復に必要な栄養が届きにくいため、治癒が遅くなります。

3. 神経が増加している 痛みを伝える神経線維が増え、新生血管と一緒に腱に入り込むことで、痛みを感じやすい状態が作られています。

4. 組織の修復に時間がかかる 腱のコラーゲンの入れ替わりには数ヶ月から数年かかる可能性があり、一度変性した組織を元の健康な状態に戻すには相当な時間が必要です。

5. 細胞レベルでの変化がある 腱細胞自体の性質が変わってしまっており、遺伝子発現のパターンも変化しています。

6. 分解と修復のバランスが崩れている 組織を分解する酵素(MMP)が増加することで、修復と分解のバランスが崩れ、「作っては壊れ」という状態になっています。

これらの理由からジャンパーズニーは「ちょっと休めばすぐ治る」というものではないことがお分かりいただけたかと思います。

しかしメカニズムが分かってきたことでより効果的な治療法も研究されています。

痛みに悩んでいる方は一人で抱え込まずぜひ相談してみてください。

何かお力になれればと思っております。

最後までご覧くださりありがとうございました!

杏鍼灸整骨院の陣内由彦でした。

また当院で行っている施術やテーピング方法などをInstagramYouTubeなど各種SNSにアップしていますので気になる方は是非見てみてください。

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※この記事は医学的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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