
こんにちは!福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。
陸上の短距離選手にとって太ももの裏側の筋肉いわゆる「ハムストリング」の肉離れは本当に厄介なケガですよね。
全力でスタートを切った瞬間に「バチッ」という音とともに太ももの裏側に激痛が走りそのまま走れなくなってしまう。そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
最近スポーツ医療の現場で注目されている治療法の一つに「ラジオ波治療」というものがあります。別名「TECAR療法」とも呼ばれているこの治療法について実際に効果はあるのかどんな仕組みで働くのかを実際に杏鍼灸整骨院で行っている施術と研究論文をもとに分かりやすくお伝えしていきたいと思います。
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ハムストリング肉離れとは?なぜ短距離選手に多いのか

まずは基本的なことからご紹介していきますね。ハムストリングというのは太ももの裏側にある3つの筋肉のグループの総称です。
具体的には「大腿二頭筋」「半腱様筋」「半膜様筋」という3つの筋肉から成り立っています。
肉離れが起こるメカニズム

肉離れは簡単に言うと「筋肉が強く引き伸ばされながら同時に強く縮もうとしたときに起こる損傷(遠心性収縮)」です。
スポーツ医学の研究によれば、ハムストリングの肉離れは特に短距離走の選手に多く見られることが分かっています。
なぜ短距離走で起こりやすいのでしょうか。走るとき特に全力疾走のときに、足が地面に着く直前から着いた直後にかけてハムストリングには非常に大きな力がかかります。
この瞬間筋肉は引き伸ばされながら力を発揮しなければならずこれが肉離れを引き起こす原因となるのです。
肉離れの重症度

日本体育協会のスポーツ医学研究によると、ハムストリングの肉離れは重症度によって3つのタイプに分類されています。
Ⅰ型(軽症):筋肉の中で出血が起きている状態。腱や筋膜には損傷がありません。
Ⅱ型(中等症):筋肉と腱の境目に部分的な断裂が見られる状態。
Ⅲ型(重症):腱が完全に断裂したり付着部が骨からはがれてしまったりする状態。
軽症であれば約2週間程度で復帰できる可能性がありますが重症の場合は数ヶ月から半年以上かかることもあり選手生命に関わることさえあります。
ラジオ波治療とは?その仕組みを理解しよう

ラジオ波って何?
ラジオ波は英語で「Radiofrequency」、略して「RF」と呼ばれています。
AMラジオなどで使われている電波と同じような周波数帯の高周波のことで、医療分野では古くから利用されてきました。
ラジオ波治療はこの高周波を体に流すことで、体の深い部分から熱を発生させる温熱療法の一種なんです。
従来の温熱療法と大きく違うのは表面だけでなく体の奥深くまで温められるという点にあります。
どうやって体を温めるの?
ラジオ波の仕組みは少し不思議に感じられるかもしれません。
体にラジオ波を流すと体の中の水分や細胞が振動し始めます。この振動によって「摩擦熱」が生まれ体の内側から温かくなっていくのです。
最新の研究論文(2025年発表)によると、ラジオ波治療に使われる周波数は主に300kHzから1.2MHzの範囲で、この周波数帯が体の組織に最も効果的に働きかけることができるとされています。
2つのモード:キャパシティブとレジスティブ

ラジオ波治療には、「キャパシティブモード」と「レジスティブモード」という2つの方式があります。ちょっと難しい言葉ですが、簡単に説明しますね。
キャパシティブモードは、水分の多い組織、つまり筋肉や皮下組織を中心に温める方式です。電極に絶縁体が付いていて、比較的浅い部分を効果的に温めることができます。
レジスティブモードは、腱や靭帯骨といった固い組織を温める方式です。電気抵抗の高い部分に熱が集中するという特性を利用しています。
施術者は、治療したい部位や目的に応じて、これらのモードを使い分けたり、組み合わせたりして治療を行います。
杏鍼灸整骨院での実際の施術
この方は福岡市から来院された高校2年生の陸上短距離選手です。
ハムストリングの肉離れ後の回復期にラジオ波をしている所です。
超音波なども患部を温める事が出来るのですが温める範囲が狭いのでラジオ波のように広範囲に温めると動きが劇的に変わる事が多いです。
ラジオ波後にストレッチや運動療法を加える事が多いです。
論文から見るラジオ波治療の効果

筋肉の回復を早める可能性
2024年に発表された研究では激しい運動の後にラジオ波治療を受けたグループと何もしなかったグループを比較しました。
その結果ラジオ波治療を受けたグループでは筋肉の機能パラメーター(筋力や柔軟性など)の回復が早かったことが報告されています。
この研究ではラジオ波が筋肉の温度を上げることで以下のような効果が生じると説明されています。
- 血液の流れが良くなる(微小循環の改善)
- 酸素の供給が増える(ヘモグロビンの酸素飽和度の上昇)
- 疲労物質や老廃物の排出が早くなる
組織の修復を助けるメカニズム
2025年に発表された最新の総説論文によればラジオ波治療は単に温めるだけでなく細胞レベルでさまざまな変化を引き起こすことが分かってきています。
具体的には、以下のような効果が期待できるとされています。
1. ヒートショックプロテインの産生促進
体温が上がると、「ヒートショックプロテイン」という特別なタンパク質が体の中で作られます。このタンパク質は、傷ついた細胞を修復したり、保護したりする働きがあるんです。つまり、ラジオ波で体を温めることで、自然治癒力を高めることができる可能性があるということですね。
2. 血管の新生を促す
研究によるとラジオ波治療は血管を作る成長因子の産生を増やす可能性があるとされています。
新しい血管ができれば、それだけ酸素や栄養が届きやすくなり、治癒が早まると考えられます。
3. 炎症の調整
ラジオ波治療は炎症反応をうまく調整することで過度な炎症を抑えつつ必要な修復プロセスを助ける可能性があります。
痛みを和らげる効果
痛みの軽減についてはいくつかの研究で効果が報告されています。
2018年の研究ではスポーツによる筋肉の損傷に対してラジオ波治療を行ったところ、痛みのスコア(VAS:視覚的アナログスケール)が大幅に改善したと報告されています。
痛みが軽減するメカニズムとしては、以下のような理由が考えられています。
- 血流が良くなることで痛みを引き起こす物質が流されやすくなる
- 温熱効果により筋肉の緊張がほぐれる
- 高周波の振動が痛みを伝える神経の働きを和らげる可能性がある
ランナーへの研究結果
特に興味深いのはランナーを対象にした研究です。
2018年に発表された研究では疲労困憊するまで走った後にラジオ波治療を受けたランナーは何もしなかったランナーと比べて歩幅が大きくなり、足の角度も改善したことが報告されています。
この結果はラジオ波治療が単に痛みを和らげるだけでなく筋肉の機能そのものを回復させる可能性を示唆しているのかもしれません。
ハムストリング肉離れへの具体的な応用

急性期の治療
肉離れを起こした直後、いわゆる「急性期」では、まずRICE処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)が基本となります。この時期にラジオ波治療を行うかどうかは状況判断によります。
一般的には急性期の炎症が落ち着いてからつまり受傷後3日から5日程度経過してから、ラジオ波治療を開始することが多いようです。
亜急性期から回復期の治療
痛みが落ち着いてきた段階(受傷後1週間から2週間程度)ではラジオ波治療が積極的に活用されることがあります。
この時期の治療目的は、以下のようなものです。
- 損傷部位の血流を改善し、治癒を促進する
- 筋肉の硬さ(しこり)を柔らかくする
- 周囲の筋肉の緊張をほぐす
- リハビリテーション前のウォーミングアップとして使用する
研究によればラジオ波治療は筋肉の深部まで温めることができるため表面からのマッサージでは届かない深い部分の硬さにもアプローチできる可能性があります。
他の治療法との組み合わせ
大切なのはラジオ波治療だけに頼るのではなく、他の治療法と組み合わせることです。
多くの研究ではラジオ波治療を以下のような治療と組み合わせることでより良い効果が得られる可能性が示唆されています。
- リハビリテーション運動(ストレッチング、筋力トレーニング)
- 手技療法(マッサージ、整体)
- 鍼治療
- 超音波治療
杏鍼灸整骨院では様々な施術と組み合わせで早期の復帰を目指しています。

治療の実際
施術の流れ
ラジオ波治療を受けるときどんな感じなのか気になりますよね。一般的な流れをご紹介します。
- 準備:治療部位を露出し、専用のクリームやジェルを塗ります。これは、電極の滑りを良くして、肌を保護するためです。
- 電極の配置:体のどこかに「対極板」と呼ばれる板を当てます。これが電気の帰り道になります。
- 施術:治療者が専用のハンドピース(電極)を使って、患部をゆっくりと動かしながら治療します。
- 温度調整:患者さんの感じる温かさに応じて、出力を調整していきます。
施術中の感覚
多くの方が「じんわりと体の奥から温かくなる感じ」と表現されます。
表面だけが熱くなるのではなく、深いところから温まってくる独特の感覚があるようです。
施術後の変化
施術が終わった後もしばらく温かさが持続することが多いです。
これは、血流が改善された状態が続いているためと考えられます。
人によっては施術直後に筋肉が柔らかくなったことを実感できることもあります。ただし、効果の感じ方には個人差がありますので、すぐに効果を感じられなくても心配しないでください。
効果が出るまでの期間と頻度
治療頻度
研究論文や臨床報告を見るとラジオ波治療の頻度は状況によって異なりますが、一般的には以下のような頻度で行われることが多いようです。
- 急性期から亜急性期:週に2〜3回
- 回復期:週に1〜2回
- 維持期:週に1回または2週間に1回
ただし、これはあくまで目安であり、実際の治療頻度は症状の程度や回復の状況に応じて施術をしていきましょう。
効果を感じるまでの期間
これも個人差が大きいのですが、一般的な傾向としては以下のようなことが報告されています。
- 即時効果:施術直後から筋肉の柔らかさや可動域の改善を感じる方もいます
- 短期効果:3〜5回の施術で、痛みの軽減や動きやすさの改善を感じる方が多い
- 長期効果:1〜2ヶ月の継続的な施術で、より安定した改善が見られる可能性があります
臨床現場からの報告では、定期的にラジオ波治療を受けていると最初の1ヶ月は効果が1週間程度で切れてしまうものの3ヶ月目以降は1〜3ヶ月も効果が持続するようになるとも言われています。
注意すべき点と限界

こんな方は受けられないことがあります
ラジオ波治療には、受けられない場合があります。以下に該当する方は、必ず医師に相談してください。
- 心臓にペースメーカーを入れている方
- 妊娠中の方
- がんの治療中の方、またはがんの既往がある方
- 重度の心臓病や高血圧の方
- 治療部位に金属が入っている方
- てんかんの既往がある方
- 感染症や高熱がある方
- 急性期の炎症が強い時期
副作用について
一般的には安全性の高い治療法とされていますが、以下のような副作用が起こることがあります。
- 皮膚の赤み
- 一時的なほてり感
- まれにやけど(出力が高すぎる場合や、同じ場所に長時間当て続けた場合)
- 治療後の一時的な疲労感
これらの多くは軽度で、数日で自然に治まることがほとんどですが、症状が続く場合は必ず医療機関に相談してください。
予防も大切

ラジオ波治療で回復したとしても予防策を怠れば再発のリスクは高まります。
研究によれば、ハムストリングの肉離れは再発率が高いケガの一つとされています。
実際残念ながらハムストリングの肉離れを繰り返し起こしてしまう方もおられます。
柔軟性の維持
ハムストリングの柔軟性を保つことはとても大切です。
毎日のストレッチングを習慣にしましょう。
ただしストレッチにもコツがあります。
一方向だけではなく、筋肉の走行に合わせて、様々な角度からストレッチすることが推奨されています。
筋力バランスの改善
大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)とハムストリングの筋力バランスも重要です。研究によると、このバランスが90%以下になると、ハムストリング損傷のリスクが高まるとされています。
特に「エキセントリック筋力」つまり筋肉が伸びながら力を発揮する能力を鍛えることが大切です。「ノルディックハムストリングエクササイズ」という運動が効果的だと、多くの研究で報告されています。
適切なウォーミングアップ
練習前には十分なウォーミングアップを行いましょう。冷えた筋肉は柔軟性が低下し、ケガをしやすくなります。
ウォーミングアップでは、軽いジョギングから始めて、徐々に強度を上げていくことが大切です。そして、競技に近い動きを取り入れた「動的ストレッチング」を行うことも効果的とされています。
疲労管理
疲労は肉離れの大きなリスク要因です。研究によると、ハムストリングの損傷の多くは、スプリントトレーニングの後半つまり疲労が溜まってきた時に起こることが分かっています。
練習量や強度を適切に管理し、十分な休養を取ることが大切です。また、疲労回復のために、適切な栄養摂取や睡眠も重要になります。
まとめ
ここまで、陸上短距離選手のハムストリング肉離れに対するラジオ波治療について、研究論文をもとにお伝えしてきました。
現時点で分かっていること
研究から分かってきていることをまとめると、以下のようになります。
- 温熱効果:ラジオ波治療は体の深部まで温め、血流を改善する可能性があります
- 組織修復の促進:ヒートショックプロテインの産生などを通じて、組織の修復を助ける可能性があります
- 痛みの軽減:多くの研究で、痛みの軽減効果が報告されています
- 機能回復:筋肉の機能パラメーターの回復を早める可能性が示唆されています
- 他の治療との相乗効果:運動療法や手技療法と組み合わせることで、より良い効果が期待できるかもしれません
ラジオ波治療は、ハムストリング肉離れからの回復を助ける可能性のある治療法の一つです。
ただしそれは「魔法の治療法」ではありません。
大切なのは、適切な診断を受け総合的なリハビリテーションプログラムの一部として取り入れることだと思います。
ラジオ波治療に興味を持たれたら是非ご相談ください!
皆さんが一日も早く安心して全力で走れるように杏鍼灸整骨院は応援しています。
最後までご覧くださりありがとうございました!
杏鍼灸整骨院の陣内由彦でした。
また当院で行っている施術やテーピング方法などをInstagramやYouTubeなど各種SNSにアップしていますので気になる方は是非見てみてください。
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この記事は以下の研究論文・資料を参考にしています:
- Lupowitz LG, et al. TECAR Therapy: A Clinical Commentary on its Evolution, Application, and Future in Rehabilitation. International Journal of Sports Physical Therapy. 2025.
- Evaluation of the Effectiveness of TECAR and Vibration Therapy as Methods Supporting Muscle Recovery After Strenuous Eccentric Exercise. PMC. 2024.
- Duñabeitia I, et al. Effects of a capacitive-resistive electric transfer therapy on physiological and biomechanical parameters in recreational runners. Physical Therapy in Sport. 2018.
- 日本体育協会スポーツ医・科学専門委員会. 肉離れに関する最新の指針. 2008.
- その他、ハムストリング損傷とラジオ波治療に関する複数の研究論文
投稿者プロフィール

- 柔道整復師、鍼灸師
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院長 柔道整復師 鍼灸師
福岡医健専門学校卒業
株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。
陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数






