片頭痛の予防に鍼治療は役立つの?最新研究から分かること

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こんにちは!筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

今回は頭痛に対する鍼灸の効果の可能性をご紹介していきたいと思います。

片頭痛でお悩みの方は、世界中に多くいらっしゃいます。

調査によれば、人口の10%から20%の方が片頭痛を経験しているといわれています。頭の片側がズキズキと痛み、吐き気や光・音への過敏さを伴うこともあり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

お薬での予防治療もありますが、副作用が気になったり、効果が不十分だったりすることもあります。

そんな中、古くから東洋医学で用いられてきた「鍼治療」が、片頭痛の予防に役立つ可能性があるという研究結果が増えてきています。

今回は、2020年に医学雑誌BMJで発表された研究を中心に、複数の研究結果をもとに、鍼治療が片頭痛予防にどのように役立つかについてご紹介していきたいと思います。。

目次

頭痛研究はどのように行われたの?

2020年のBMJ研究では、中国の7つの病院で、前兆のない片頭痛を持つ150名の患者さんを対象に調査が行われました。参加者の平均年齢は約36歳で、82%が女性でした。これまで鍼治療を受けたことのない方々が対象となりました。

患者さんは3つのグループに分けられました:

  • 本物の鍼治療グループ:伝統的な鍼のツボに本当の鍼を刺すグループ
  • 偽の鍼治療グループ:ツボではない場所に、皮膚を貫通しない特殊な鍼を当てるグループ
  • 通常治療のみグループ:鍼治療は受けず、生活指導などの通常のケアだけを受けるグループ

鍼治療は8週間にわたって週に2〜3回、合計20回行われました。その後、12週間の経過観察が続きました。

頭痛に対してどんな結果が得られたの?

調査開始前、参加者の方々は月に平均約6日、片頭痛に悩まされていました。

治療後の13週目から20週目にかけて:

  • 本物の鍼治療グループでは、片頭痛の日数が月に平均3日減少しました
  • 偽の鍼治療グループでは、約2日減少しました
  • 通常治療のみグループでは、約1.4日減少しました

つまり、本物の鍼治療を受けた方は、偽の鍼治療を受けた方よりも平均で月に1.4日多く片頭痛が減ったということになります。

また、片頭痛の発作回数についても、本物の鍼治療グループでは月に約2回減少し、これは他のグループよりも良い結果でした。

重要なのは、この効果が治療終了後も続いたことです。鍼治療をやめた後の経過観察期間でも、片頭痛の減少効果が維持されていました。

他の頭痛研究では何が分かっているの?

長期的な効果について

2017年にJAMA Internal Medicine誌で発表された研究では、249名の片頭痛患者さんを対象に、4週間の鍼治療(週5回、計20回)を行い、その後20週間の経過観察を行いました。

この研究でも、本物の鍼治療を受けたグループでは、治療後16週目の時点で、片頭痛発作が月に平均3.2回減少しました。これは、偽の鍼治療グループ(2.1回減少)や待機リストグループ(1.4回減少)よりも良い結果でした。

大規模レビュー研究の結果

2016年にコクランレビュー(信頼性の高い医学研究のまとめ)では、22の研究、合計4985名のデータを分析しました。その結果:

  • 鍼治療を受けた方の約57%が、片頭痛の回数を半分以下に減らすことができました(お薬では46%)
  • 鍼治療を受けた方では、月6日あった片頭痛が約3.5日に減少しました(通常ケアのみでは5日、偽の鍼やお薬では4日)
  • 鍼治療は、予防薬と同じくらい、またはそれ以上の効果がある可能性が示されました
  • 副作用はお薬よりも少ない傾向がありました

最新のメタアナリシス(2024年)

2024年の研究では、鍼治療の「量」と効果の関係が調べられました。その結果:

  • 約16回のセッションで最も良い効果が得られる可能性
  • 週に3回程度の頻度が効果的である可能性
  • 2ヶ月程度の治療期間で効果が現れ始める可能性

これらの結果から、一定期間継続して鍼治療を受けることが大切だと考えられています。

鍼治療はどのように働くの?

鍼治療が片頭痛に効く仕組みについては、まだ完全には解明されていませんが、いくつかの可能性が考えられています:

  1. 脳の血流や神経活動の調整:脳の特定の領域の活動を調整する可能性
  2. 痛みを抑える仕組みの活性化:体が持つ自然な痛み止めシステムを活性化する可能性
  3. 炎症物質の調整:片頭痛に関連する炎症を抑える可能性
  4. ストレス反応の調整:自律神経のバランスを整える可能性

脳画像研究では、鍼治療が脳の痛み処理に関わる領域の活動を変化させることが確認されています。

安全性はどうなの?

多くの研究で、鍼治療は比較的安全だと報告されています。主な副作用としては:

  • 針を刺した部分の軽い痛みやあざ
  • 一時的なだるさ
  • まれに軽い出血

これらは、予防薬の副作用(めまい、眠気、体重増加など)と比べると、一般的に軽いものと考えられています。

研究では、鍼治療による重大な副作用はほとんど報告されていません。ただし、必ず資格を持った施術者による治療を受けることが大切です。

どんな方に向いているの?

鍼治療は、以下のような方に特に検討される価値があるかもしれません:

  • 予防薬の副作用が気になる方
  • 予防薬の効果が不十分だった方
  • 薬を使用できない事情がある方
  • 薬以外の方法も試してみたい方
  • 慢性的な片頭痛で、長期的な管理が必要な方

ただし、鍼治療は「万能」ではありません。効果には個人差があり、すべての方に同じように効くとは限りません。

研究では20回程度のセッションで効果が見られています。すぐに効果が出なくても、数週間は続けてみることが大切かもしれません。

まとめ

複数の研究から、鍼治療は片頭痛の予防に一定の効果がある可能性が示されています。特に:

  • 片頭痛の日数や発作回数を減らす効果が期待できる可能性
  • 予防薬と同程度、またはそれ以上の効果がある可能性
  • 副作用が比較的少ない可能性
  • 治療後も効果が続く可能性

片頭痛の治療は、一人ひとりに合わせた方法を見つけることが大切です。鍼治療は、その選択肢の一つとして検討する価値があるかもしれません。気になる方は、ぜひ医療専門家に相談してみてください。

またなにか怪我に関してやテーピング方法など疑問がある方は気軽にご相談ください。



参考文献

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投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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