ドライアイに鍼治療が役立つかもしれない?最新研究からわかること

  • URLをコピーしました!

こんにちは!筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

今回は眼精疲労に対する鍼灸の効果の可能性をご紹介していきたいと思います。

パソコンやスマートフォンを長時間使っていると、目がゴロゴロする、乾く、疲れるといった症状に悩まされていませんか?実は日本では、約2,200万人もの方がドライアイに悩んでいるといわれています。

そんな中、最近注目されているのが「鍼治療」です。「え、鍼って目にも効果があるの?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、2025年に発表された最新の研究論文をもとに、鍼治療がドライアイにどのような効果を示す可能性があるのか、わかりやすくご紹介したいと思います。

目次

ドライアイってどんな病気?

まず、ドライアイについて簡単にご説明いたします。

ドライアイは、涙の量が足りなくなったり、涙の質が変化したりすることで起こる病気です。

たとえるなら、お肌が乾燥して「肌荒れ」を起こすように、目の表面が「荒れてしまう」状態と考えていただくとわかりやすいかもしれません。

ドライアイの主な症状

  • 目が乾く
  • 目がゴロゴロする、異物感がある
  • 目が疲れやすい
  • 目がかすむ、見えにくい
  • 目が痛い
  • 目が重い感じがする
  • まぶしく感じる

意外かもしれませんが、「目が乾く」と最初から訴える方は実はそれほど多くないのです。むしろ「疲れる」「ゴロゴロする」といった症状で気づく方が多いんですね。

ドライアイが増えている理由

現代社会では、ドライアイになりやすい「3つのコン」があるといわれています。

  1. エアコン: 室内の空気が乾燥し、涙が蒸発しやすくなります
  2. コンタクトレンズ: レンズが涙の膜を分断してしまい、目が乾きやすくなります
  3. コンピュータ(パソコン・スマホ): 画面を見つめているとまばたきの回数が通常の4分の1にまで減ってしまい、涙が目全体に行き渡らなくなります

これらの要因が重なることで、ドライアイに悩む方が年々増えているのです。

従来のドライアイ治療

これまでドライアイの治療といえば、主に「目薬」が中心でした。

ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬は、涙に近い成分を持ち、粘性があるため目の表面に長くとどまって潤いを保つことができます。皆さんもドラッグストアなどで見かけたことがあるかもしれませんね。

ただ、点眼薬だけでは症状が改善しにくいケースもあり、より効果的な治療法が求められていました。

鍼治療とドライアイ:新しい研究の発見

研究の概要

今回ご紹介する研究は、中国で行われた156名の患者さん(312眼)を対象とした臨床試験です。

患者さんは2つのグループに分けられました:

  1. 対照グループ(78名): ヒアルロン酸点眼薬のみを使用
  2. 観察グループ(78名): ヒアルロン酸点眼薬に加えて、鍼治療を受ける

両グループとも4週間の治療を受け、その効果が比較されました。

どこに鍼を打つの?

研究で使用されたツボ(経穴)は、目の周りにある以下の場所です:

  • 攅竹(さんちく/BL2): 眉毛の内側の端
  • 糸竹空(しちくくう/TE23): 眉毛の外側の端
  • 四白(しはく/ST2): 目の下、頬骨の上
  • 睛明(せいめい/BL1): 目頭の少し上

これらのツボは、東洋医学では昔から目の症状に用いられてきた場所なんですね。

治療は週4回、1日1回行われました。「透刺法」という特別な方法で、ツボからツボへと鍼を通すように刺激を与えるそうです。たとえるなら、点と点を線でつなぐような感じでしょうか。

研究結果:どんな効果が見られた?

研究の結果、鍼治療を併用したグループでは、点眼薬だけのグループと比べて、いくつかの指標で良好な結果が示されました。

1. 自覚症状の改善

患者さん自身が感じる目の不快感や痛みについて、鍼治療を受けたグループでより改善が見られたようです。これは患者さんにとって最も実感しやすい変化ですよね。

2. 涙の安定性の向上

「涙液層破壊時間(BUT)」という検査があります。これは、まばたきをした後、涙の膜が壊れるまでの時間を測るものです。この時間が長いほど、涙が安定しているということになります。

鍼治療を併用したグループでは、この時間が延びる傾向が見られました。つまり、涙が目の表面により長くとどまるようになった可能性があるということですね。

3. 涙の量の増加

「シルマー検査」という、涙の分泌量を測る検査でも、鍼治療グループで改善が見られる傾向があったようです。

4. 目の表面の傷の改善

ドライアイが進行すると、目の表面(角膜)に小さな傷ができてしまいます。鍼治療を受けたグループでは、この傷の程度が軽減される可能性が示されました。

5. 炎症反応の抑制

研究では、涙の中の炎症に関わる物質(サイトカイン)も測定されました。鍼治療を受けたグループでは、これらの炎症物質が減少する傾向が見られたそうです。

これは、鍼治療が単に症状を和らげるだけでなく、ドライアイの原因となる炎症そのものを抑える可能性があることを示唆しています。

鍼治療はなぜドライアイに効果を示す可能性があるの?

「なぜ鍼がドライアイに効くの?」と疑問に思われる方も多いでしょう。実は、鍼治療のメカニズムについては、まだ完全には解明されていませんが、いくつかの仮説が立てられています。

1. 血流の改善

鍼を刺すことで、その周辺の血流が改善される可能性があります。目の周りの血流が良くなれば、涙腺への栄養供給が増え、涙の分泌が促進されるかもしれません。

水道管に例えると、詰まっていた管が通りやすくなるようなイメージでしょうか。

2. 神経への働きかけ

鍼刺激は、周辺の神経に働きかける可能性があります。涙の分泌は自律神経によってコントロールされていますから、鍼刺激が神経を介して涙腺の働きを活性化させるのかもしれません。

3. 炎症を抑える作用

動物実験などでは、鍼治療が炎症に関わる物質を減少させることが報告されています。ドライアイには炎症が深く関わっていますから、この抗炎症作用が症状改善につながる可能性があります。

4. 痛みの緩和

鍼治療には、エンドルフィンなどの「体内の痛み止め物質」を分泌させる作用があることが知られています。ドライアイの不快感を和らげるのに、この作用が一役買っているのかもしれません。

他の研究でも効果が報告されている

今回ご紹介した研究だけでなく、他の臨床試験でも鍼治療のドライアイへの効果が報告されています。

2022年に発表された研究では、「睛明(BL1)」という目頭近くのツボへの鍼治療が、人工涙液(目薬)と比較されました。その結果、鍼治療を受けたグループで涙の量が増加し、症状が改善したという報告がありました。

また、複数の研究をまとめて分析したメタアナリシスという手法でも、鍼治療が涙の安定性や分泌量、症状スコアを改善する可能性が示されています。

ただし、これらの研究の多くは中国で行われており、研究の質にばらつきがあることや、鍼治療の方法(使用するツボ、治療頻度、期間など)が研究ごとに異なることが課題として指摘されています。

鍼治療を受ける際の注意点

鍼治療に興味を持たれた方もいらっしゃるかもしれませんが、いくつか知っておいていただきたいことがあります。

1. すぐには効果が出ないかもしれない

今回の研究では4週間の治療期間が設定されていました。効果を実感するには、ある程度の回数と期間が必要になる可能性があります。

2. 目薬との併用が前提

この研究では、鍼治療だけではなく、点眼薬と併用することで効果が得られています。鍼治療は点眼薬に「プラスアルファ」する治療と考えるのが良いかもしれません。

3. すべての人に効くわけではない

どんな治療法にも言えることですが、すべての人に同じように効果が現れるとは限りません。個人差があることを理解しておくことが大切です。

他の補完療法も検討されている

鍼治療以外にも、ドライアイに対して様々な補完療法が研究されています。

レーザー鍼治療

通常の針を使う代わりに、レーザー光線でツボを刺激する方法です。針を刺さないため、痛みや出血の心配が少ないのが特徴です。実際に、レーザー鍼治療でも涙の安定性が改善したという報告があります。

温熱療法(アイマスク)

まぶたを温めることで、油分を分泌するマイボーム腺の働きを改善する方法です。家庭でも簡単にできる方法として注目されています。

生活習慣の改善

  • 意識的にまばたきを増やす
  • パソコン作業中は定期的に休憩を取る
  • 室内の湿度を保つ
  • エアコンの風が直接目に当たらないようにする
  • 十分な睡眠を取る

これらの日常生活での工夫も、ドライアイ改善の基本となります。

まとめ:鍼治療は選択肢の一つになるかもしれない

今回ご紹介した研究から、鍼治療がドライアイの症状改善に役立つ可能性が示されました。特に、点眼薬だけでは十分な効果が得られない方にとって、新たな選択肢となるかもしれません。

ただし、いくつか覚えておいていただきたい大切なことがあります:

  1. 研究はまだ発展途上: 鍼治療のドライアイへの効果については、まだ研究が積み重なっている段階です。より大規模で質の高い研究が今後必要とされています。
  2. 標準治療を基本に: 鍼治療は、従来の点眼治療に「加える」ものと考えるのが良いでしょう。まずは眼科で適切な診断と治療を受けることが大切です。
  3. 個人差がある: すべての人に同じように効果が現れるとは限りません。自分に合った治療法を見つけることが重要です。
  4. 信頼できる専門家に相談を: 鍼治療を受ける場合は、資格を持った経験豊富な鍼灸師に相談しましょう。また、眼科医にも鍼治療を受けることを伝えておくと良いでしょう。

ドライアイは、生活の質を大きく低下させる病気です。「単なる目の疲れ」と軽視せず、適切な治療を受けることが大切です。

もし目の不快感が続いているようでしたら、まずは眼科を受診して、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。その上で、鍼治療などの補完療法について興味があれば、医師や鍼灸師に相談してみるのも一つの方法かもしれません。

また怪我に関してやテーピング方法など疑問がある方は気軽にご相談ください。


参考文献

  1. Chen C, Wang Y. Penetrating needling of three eye acupoints combined with sodium hyaluronate eye drops for dry eye: a randomized controlled trial. Chinese Acupuncture & Moxibustion. 2025; 45(5): 633-637.
  2. Kim TH, Kang JW, Kim KH, et al. Acupuncture for the treatment of dry eye: a multicenter randomised controlled trial with active comparison intervention (artificial teardrops). PLoS One. 2012; 7(5): e36638.
  3. Shin MS, Kim JI, Lee MS, et al. Acupuncture for treating dry eye: a randomized placebo-controlled trial. Acta Ophthalmologica. 2010; 88(8): e328-e333.
  4. Yang L, Yang Z, Yu H, et al. Acupuncture therapy is more effective than artificial tears for dry eye syndrome: evidence based on a meta-analysis. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2015; 2015: 143858.
  5. Lee S, Han SH, Park KK, et al. Effectiveness of acupuncture at acupoint BL1 (Jingming) in comparison with artificial tears for moderate to severe dry eye disease: a randomized controlled trial. Trials. 2022; 23(1): 627.
  6. Zhou S, Robertson D, Dhaliwal DK. Acupuncture for dry eye disease. Review of Ophthalmology. 2013.
  7. Sun Y, Chen C, Yu T, et al. Effectiveness of acupuncture combined with artificial tears in managing dry eye syndrome: A systematic review and meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2024; 103(1): e36656.
  8. 参天製薬. ドライアイ – 目の病気百科. https://www.santen.com/jp/healthcare/eye/library/dryeye
  9. 日本眼科医会. ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―. https://www.gankaikai.or.jp/health/52/
  10. 日本眼科学会. ドライアイ. https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=9
  11. 慶應義塾大学病院. ドライアイ(dry eye). KOMPAS 医療・健康情報サイト. 2024.

本記事は情報提供を目的としたものであり、医療的なアドバイスを提供するものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次