アキレス腱症とは|福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院
歩き始めにかかとの後ろが痛いランニング中にふくらはぎからかかとにかけて痛みを感じる、朝起きた時にアキレス腱が硬くて痛い――。もしこんな症状があったら、それは「アキレス腱症」かもしれません。
アキレス腱症はスポーツをしている方だけでなく日常生活を送っている一般の方にも起こりうる身近な症状です。
適切に対処すれば改善する可能性が高いですが、放っておくと慢性化したり場合によっては断裂につながることもあります。
この記事では最新の医学論文をもとにアキレス腱症とはどのようなものか?なぜ起こるのか?どのように治療すればよいのかを?分かりやすくお伝えしていきます。
アキレス腱症とは何か

アキレス腱の役割
まず、アキレス腱がどういうものかを簡単に説明しますね。
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋という2つの筋肉をまとめて下腿三頭筋と呼びます)とかかとの骨(踵骨)をつな、太くて丈夫な腱です。
人体の中で最も大きく最も強い腱と言われており、長さは約15センチメートル、厚さは約6ミリメートルあります。
約一トンほどの衝撃を耐えれるとも言われています。
この腱があることで、私たちは歩く時につま先で地面を蹴ることができ、走ったりジャンプしたりといった動作ができるのです。
日常生活でもスポーツでも、アキレス腱は非常に重要な役割を担っています。
アキレス腱症と炎症の違い
「アキレス腱症」という言葉は、以前は「アキレス腱炎」と呼ばれていたこともあります。しかし最近の研究によると、この症状は単なる炎症だけではないことが分かってきました。
研究では、アキレス腱症は腱の変性や線維化を伴う慢性的な疾患であり、単なる炎症ではないことが多いと報告されています。つまり、腱の組織そのものが変化してしまっている状態なのです。
2つのタイプがある
アキレス腱症には、大きく分けて2つのタイプがあります。
1. 非付着部型アキレス腱症 アキレス腱の中央部分、だいたいかかとから2〜6センチメートルくらい上の部分に痛みが出るタイプです。英語では「Non-insertional Achilles Tendinopathy」と呼ばれます。
2. 付着部型アキレス腱症 アキレス腱がかかとの骨に付着している部分に痛みが出るタイプです。英語では「Insertional Achilles Tendinopathy」と呼ばれ、アキレス腱付着部炎とも言います。
どちらのタイプかによって、治療のアプローチが少し変わってくることもありますので是非ご相談ください。
アキレス腱症の症状

典型的な症状
アキレス腱症の方が訴える典型的な症状には、以下のようなものがあります。
- 動き始めの痛み: 朝起きてベッドから降りた時の最初の一歩や、座っていてから歩き始める時などに、アキレス腱周辺に強い痛みを感じます
- 運動時の痛み: 走っている時やジャンプする時など、アキレス腱に負担がかかる動作で痛みが出ます
- 運動後の痛み: スポーツや運動をした後に、ふくらはぎからかかとにかけてズーンと重い痛みを感じることがあります
- 押すと痛い: アキレス腱を指で軽く押すと痛みを感じます
- 腫れや厚み: アキレス腱の部分が腫れていたり、反対側の足と比べて厚くなっていることがあります
- 朝のこわばり: 朝起きた時にアキレス腱が硬く感じられ、しばらく動いていると少し楽になります
症状の経過
興味深いことに、アキレス腱症の痛みには特徴的なパターンがあります。
運動を始めた直後は痛みがあっても、しばらく続けていると痛みが和らぐことがあるのです。
そのため、「少し痛いけど、動いていれば大丈夫そう」と思ってしまい、受診や治療が遅れてしまうことも少なくありません。
しかし、軽い症状であれば1〜2か月で改善することもある一方で重度の場合は1年以上経っても改善しないこともあります。
症状が3か月以上続く場合は「慢性アキレス腱症」と定義され、より積極的な治療が必要になってきます。
アキレス腱症の原因

使いすぎ(オーバーユース)
アキレス腱症の最も大きな原因は、アキレス腱の「使いすぎ」です。
走る、跳ぶといった動作を繰り返すことで、アキレス腱に小さな損傷が生じます。
通常であれば休息をとることで体が自然に修復してくれるのですが十分な回復期間がないまま負荷をかけ続けると損傷が積み重なってしまいます。
研究によると、以下のような要因がアキレス腱症のリスクを高めることが分かっています。
- 長く走りすぎること
- 急激に走る距離を伸ばすこと
- 上り坂や下り坂でのトレーニングを多く行うこと
- 十分なウォーミングアップなしに急に走り出すこと
特に試合前などで普段よりも練習量が増える時期や新しくスポーツを始めたばかりで体がまだ慣れていない時期、普段運動しない人が急に激しく動いた場合などに注意が必要です。
少し難しい話をすればプライオメトリックストレーニングなどは負荷が高いためアキレス腱などを痛めやすいです。
筋肉の柔軟性の低下
現代人は座って過ごす時間が長いため、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)の柔軟性が低下しやすくなっています。
また、筋力トレーニングやランニングなどで足を酷使することでも筋肉が過度に緊張してしまい柔軟性が低下します。
ふくらはぎの筋肉の柔軟性が低下するとその筋肉が付着しているアキレス腱への引っ張られる力(伸張ストレス)が増加してしまい結果的にアキレス腱が傷つきやすくなるのです。
加齢による影響
年齢を重ねることもアキレス腱症のリスク要因の一つです。
研究によると、加齢に伴ってアキレス腱への血流量が減少することが報告されています。
血流が減ると腱の修復能力が低下し小さな損傷が治りにくくなってしまいます。そのため、若い方よりも年齢が高くなるにつれて、アキレス腱症が発生しやすくなる可能性があります。
実際、アキレス腱症やアキレス腱断裂は30〜40代の男性に多く見られ中高年のスポーツ愛好家に頻発することが知られています。
性別の違い
興味深いことに、性別によってもリスクが異なります。
アキレス腱への血流量は女性の方が多いと報告されておりそのため男性の方がアキレス腱症の発生率が高くなっています。
足の形や構造の問題
足の形にも原因が隠れていることがあります。
- 扁平足(へんぺいそく): 土踏まずのアーチが低下している状態です。足のアーチが崩れると、歩く時のバランスが変わり、アキレス腱にかかる負担が増えてしまいます
- 足関節の不安定性: 足首が不安定だと、アキレス腱に余計な負荷がかかりやすくなります
- かかとの骨の異常: かかとの骨に骨棘(こつきょく)という骨のでっぱりがあると、アキレス腱との摩擦が生じて炎症や痛みを引き起こすことがあります
靴の問題
意外に思われるかもしれませんが靴もアキレス腱症の原因になることがあります。
自分の足に合わない靴を履いているとアキレス腱に不必要な摩擦や負担がかかります。
特に、クッション性が不十分な靴やかかと部分が硬すぎる靴、サイズが合っていない靴などは要注意です。
季節や気温の影響
少し驚くかもしれませんが季節によっても発生率が変わることが分かっています。
過去の論文で軍隊の志願者を対象に調査したところ夏場での発生率は3.6パーセントだったのに対し冬場では9.4パーセントと冬場での発生率が有意に高かったそうです。
ただし、気温がアキレス腱にどのような影響を与えるかについては、まだ十分に検証されていません。
その他のリスク要因
その他にも、以下のような要因が関係している可能性があります。
- 肥満による足への過度な負担
- 不適切なトレーニング方法
- 変形性関節症などの既往
- 特定の薬物の使用(フルオロキノロン系抗生物質やステロイドなど)
アキレス腱症の医師による診断

問診と身体診察
アキレス腱症の診断は、多くの場合、医師による問診と身体診察である程度可能です。
医師は以下のようなことを確認します。
- いつから痛みが始まったか
- どのような時に痛みが出るか、強くなるか
- どんなスポーツや活動をしているか
- 過去に同じような症状があったか
そして、実際にアキレス腱を触って(触診)、以下のような点をチェックします。
- アキレス腱に腫れや熱感があるか
- どの部分を押すと痛いか
- アキレス腱の厚みや硬さはどうか
画像検査
必要に応じて、画像検査を行うこともあります。
超音波検査(エコー検査) 簡便で詳細にアキレス腱の状態を調べることができます。腱の肥厚(厚くなっている状態)、血流の増加、部分的な断裂の有無などを、動かしながら観察できるという利点があります。複数の研究で、超音波検査の精度はMRI検査と同等か、場合によってはそれ以上であることが示されています。
特に注目されているのが「パワードップラー超音波検査」という方法です。アキレス腱症では、新生血管(新しくできた異常な血管で「モヤモヤ血管」とも呼ばれます)がある部位と痛みが関係していることが分かっており、この検査でそれを確認できます。
MRI検査 症状が長期化している場合や手術を検討する場合には、MRI検査で腱の変性の程度をより詳しく評価することがあります。
レントゲン検査 アキレス腱症自体はレントゲンには映りませんが、骨棘や骨折、変形の有無を調べるために撮影することがあります。他の疾患との鑑別にも役立ちます。
鑑別
アキレス腱症と似た症状を示す他の疾患もありますので、正確な診断が重要です。
- アキレス腱周囲炎: 炎症が腱そのものではなく、腱の近くの組織(パラテノンというゼリー状の組織や皮下脂肪)に生じる病気です。診断ではアキレス腱症と区別しますが、治療は同様の保存療法を行うことになります
- アキレス腱滑液包炎: かかとの骨の上端部分の腫れが主体で、靴に当たると痛むことが特徴です
- アキレス腱部分断裂: 急激な痛みと腫れが特徴で、超音波検査で腱の繊維の連続性を確認します
- 足底腱膜炎: 痛みの場所がかかとの足の裏側にあります。朝の最初の一歩が特に痛い点は共通していますが、痛む部位が異なります
- 後方足根管症候群: 脛骨神経が圧迫されることで、足の裏にしびれを伴うことが多いです
アキレス腱症の治療

保存療法が第一選択
アキレス腱症の治療において、最も重要なことは、ほとんどの場合、手術をしない保存療法で改善が期待できるということです。
ガイドラインでは「負荷管理とエクササイズが第一選択」と強調されており原因を取り除かなければ治療は長期化します。
一般的には、手術を検討する前に最低6か月間は保存療法を行うべきとされています。
安静と負荷の管理
まず基本となるのは、患部にかかる負担を減らすことです。
- 活動の制限: 痛みが強い時期には、アキレス腱に負担がかかるスポーツや活動を一時的に休むか、別のメニューで調整します
- 負荷の調整: 痛みが10段階評価で2以下に維持できる範囲に運動量を調整します。完全に安静にするのではなく、適切な範囲で活動を続けることが大切です
- 補助具の使用: 必要に応じて松葉杖などを使用することもあります
運動療法 ― エキセントリック(遠心性収縮)エクササイズ

アキレス腱症の治療において、最も効果が期待できるとされているのが「エキセントリックエクササイズ」です。
エキセントリックエクササイズとは
エキセントリックとは、筋肉が伸びながら力を発揮する動き(遠心性性収縮)のことを指します。例えば、つま先立ちになった状態から、ゆっくりとかかとを下ろしていく動作がこれにあたります。
実は、エキセントリック運動は筋力強化のためというよりも、「ストレッチの特別なバリエーション」として捉えることができます。
なぜ効果があるのか
エキセントリックエクササイズがなぜアキレス腱症に効果的なのか、そのメカニズムについて、研究で以下のようなことが考えられています。
- 組織の改善: ストレッチ負荷が加わることで、変性して粘弾性(しなやかさ)が低下した腱の組織に改善が起きます
- 神経反応の調整: エキセントリックなストレッチによって神経反応に変化が起き、最適な動きができるようになります
- 腱への振動刺激: 研究によると、エキセントリック運動中にはアキレス腱に高周波の振動が生じることが確認されており、これが治療効果をもたらすメカニズムの一つと考えられています。負荷の大きさよりも、負荷がかかる頻度の方が重要だという、骨の再構築と似た現象が腱でも起きているようです
- 痛みへの耐性向上: 腱とその周囲の組織の間に剪断力が加わることで、痛みを感じる受容器に変化が起き、痛みに耐えられる腱になっていきます
- 新生血管の減少: 慢性的なアキレス腱症では、腱に異常な新しい血管(新生血管、モヤモヤ血管)ができていることが知られています。エキセントリックエクササイズを続けることで、この新生血管が減少し、腱の厚みも改善することが報告されています
具体的なプログラム
最も一般的で、研究でも効果が確認されているのが「アルフレッドソンプロトコル」と呼ばれる方法です。
- 回数: 15回×3セットを1日2回
- 期間: 12週間継続
- 方法:
- 膝をまっすぐ伸ばした状態で行う
- 膝を曲げた状態で行う
- この2種類を両方行います
- 負荷の調整: 最初の2週間は痛みをコントロールしながら、その後は徐々に負荷を増やしていきます。リュックサックに重りを入れて背負うなどの方法で負荷を追加できます
具体的な動作としては、段差や階段の端に立ち、かかとを段差から出した状態で、ゆっくりとかかとを下に降ろしていく運動が代表的です。
エキセントリックエクササイズの効果
2015年に発表された研究では、慢性アキレス腱症の患者58名を対象に、エキセントリックトレーニング群と高負荷の筋力トレーニング(Heavy Slow Resistance Training)群の2つのグループに分けて、12週間の治療効果を比較しました。
その結果、どちらのグループも12週間後、52週間後の時点で、痛みや機能が有意に改善し、腱の厚みや新生血管も有意に減少していました。2つのグループ間で有意な差はなかったものの、患者さんの満足度は高負荷の筋力トレーニング群の方がわずかに高い傾向がありました。
この研究から、エキセントリックエクササイズだけでなく、適切な負荷をかけた筋力トレーニングも効果的であることが分かります。
ただし、研究結果には多少のばらつきがあり、運動療法を行っても60パーセントの方が5年後も痛みや障害が続いたという報告もあります。そのため、運動療法の効果には個人差があり、他の治療法と組み合わせることも検討する必要があるかもしれません。
ストレッチとモビリティ

エキセントリックエクササイズに加えて、通常のストレッチも重要です。
ふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)をしっかりと伸ばすことで、アキレス腱への負担を減らし、再発のリスクを下げることができます。
ストレッチの方法
- 腓腹筋のストレッチ
- 壁に手をついて、片足を大股1歩分後ろに引きます
- 後ろの足のかかとを地面につけたまま、体重を前方に移動させてふくらはぎを伸ばします
- 呼吸をしながら30秒キープします
- ヒラメ筋のストレッチ
- しゃがんだ姿勢から片足を立て、両手を立てた膝に添えます
- かかとが浮かないように、上体を前に倒して体重をかけ、ふくらはぎを伸ばします
- 呼吸をしながら30秒キープします
運動前だけでなく、普段から足首やアキレス腱のストレッチをする習慣をつけることが予防にもつながります。
マッサージ
ストレッチの前にマッサージを行うと、より効果的です。
アキレス腱を優しく把持して(つまんで)、左右に動かすようにマッサージします。これによって腱の周囲の組織がほぐれ、その後のストレッチやエクササイズがより効果的になります。
インソールとヒールリフト
足底板(インソール)やヒールリフト(かかとを高くする中敷き)の使用も、治療の一部として推奨されています。
これらを使用することで、アキレス腱への張力(引っ張られる力)を15〜20パーセント低減させることができ、歩行時の痛みを緩和できることが研究で示されています。
特に、扁平足などの足の構造的な問題がある方には、足裏のアーチをサポートするインソールを利用することで、余分な動きを防ぎ、アキレス腱の負担を減らすことが期待できます。
体外衝撃波療法(ESWT)
体外衝撃波療法は、比較的新しい治療法で、近年注目されています。
体外衝撃波療法とは
体外衝撃波とは、音源が音速を超えた時に発生する圧力波のことです。これを体の外から患部に照射することで、損傷した組織の修復を促し、痛みを軽減する効果が期待できます。
「拡散型」と「集束型」の2種類があり、低〜中エネルギーの照射が腱の血流を促進することが分かっています。
効果について
研究によると、体外衝撃波療法は腱の治癒を促進し、痛みの緩和に効果があるとされています。ただし、単独で行うよりも、エキセントリックエクササイズと組み合わせて行う方がより効果的だと考えられています。
アキレス腱炎の他にも、五十肩やテニス肘、ジャンパー膝などの痛みの軽減にも有効とされています。
動注療法
動注療法は、2014年に日本で開発された比較的新しい治療法です。
動注療法とは
動脈に薬剤を注射することで、炎症部分に発生している「モヤモヤ血管」(異常な新生血管)を減らして痛みの改善を図る方法です。急性期の痛みではなく、慢性的に痛みや腫れがある場合に効果的とされています。
アキレス腱付着部症や足底腱膜炎などの腱付着部の炎症では、慢性炎症に伴ってこのような異常な新生血管ができることが知られています。
効果と安全性
国内ではすでに1万人以上の方がこの治療を受けており、ほとんど副作用なく、安全で効果的な治療とされています。
症例報告では、動注療法を施行して1か月後にはスポーツに復帰できるようになり、その後も症状の再発を認めていないケースが紹介されています。
ただし、この治療を受けられる施設は限られていますので、希望される場合は対応可能な医療機関を探す必要があります。
再生医療 ― PRP療法
再生医療の分野でも、アキレス腱症の治療法が研究されています。
PRP療法とは
PRPとは「多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma)」の略で、患者さん自身の血液から抽出した、血小板を高濃度に含む成分です。
この血小板には、さまざまな成長因子が含まれており、損傷した腱組織の修復を促進する効果が期待されています。患者さん自身の血液を使用するため、拒絶反応などのリスクが少ないという利点があります。
iPS細胞を用いた研究
さらに未来の治療として、iPS細胞を用いた細胞治療の研究も進んでいます。
京都大学の研究グループは、ヒトiPS細胞から腱細胞を作製し、アキレス腱を断裂したラットに移植する実験を行いました。その結果、移植した腱細胞が生着し、タンパク質を分泌して回復能力を高めることで、負傷した腱が早期に回復することが確認されました。
まだ動物実験の段階ですが、将来的にヒトへの応用が期待される治療法です。
手術療法
保存療法を6か月以上続けても効果がない場合や、腱の部分的な断裂がある場合などには、手術が検討されることもあります。
手術では、痛みの出ている腱の一部を切除したり、断裂部分を縫合したりします。ただし、術後も痛みが残ることもあるため、医師とよく相談した上での慎重な判断が必要です。
手術が必要になった場合には、専門の病院を紹介してもらうことになります。
ラジオ波治療(温熱療法)杏おすすめ

ラジオ波治療はアキレス腱症を含む筋肉や腱の痛みに対して注目されている温熱療法の一つです。
ラジオ波治療とは
ラジオ波(Radio Frequency)とは高周波の電磁波のことで周波数は0.3〜6メガヘルツ程度です。
この高周波を体に流すことで、体の内部から熱を発生させる治療法です。
治療では、2つの電極(金属板)で患部を挟みその間にラジオ波を流します。
体内の水分や細胞分子が1秒間に数十万回も振動することで摩擦熱(ジュール熱と呼ばれます)が発生し体の深部から温めることができるのです。
従来の温熱療法との違い
温泉やホッカイロなど通常の温熱療法は体の表面から熱を与える方法です。
一方、ラジオ波は体内で熱を発生させるため手技では届かない深層部の筋肉や腱、靭帯まで効果的に温めることができます。
研究によると、ラジオ波による深部加温で筋肉や靭帯などの硬い組織を短時間で3〜4℃上昇させることが可能とされています。
そして、組織の温度が3〜4℃上昇すると腱や靭帯、関節周囲の組織が柔らかくなりやすくなることが分かっています。
ラジオ波の特徴的な性質
ラジオ波には「抵抗の高い場所に温熱が集まる」という興味深い特性があります。
つまり、硬くなった筋肉や炎症を起こしている部分など問題がある組織に自然と熱が集まるのです。
アキレス腱症では腱が変性して硬くなっていたり周囲の組織が緊張していたりするためラジオ波の熱が効果的にその部分に届きやすいと考えられています。
期待される効果
アキレス腱症に対するラジオ波治療では、以下のような効果が期待できます。
- 血流の改善: 深部から温めることで血管が拡張し、血液やリンパの流れが良くなります。これにより、酸素や栄養素が腱に届きやすくなり、老廃物や痛み物質の排出も促進されます
- 組織の柔軟性向上: 腱や周囲の筋肉、筋膜が温められることで、硬くなった組織の柔軟性が回復します。これにより、アキレス腱にかかる過度な負担が軽減されます
- 痛みの緩和: 温熱効果により筋肉の緊張がほぐれ、痛みを和らげる効果が期待できます。また、細胞温度が上昇することで、傷ついたタンパク質を修復する「ヒートショックプロテイン(HSP)」の産生が活性化され、組織の修復が促進される可能性があります
- 代謝の促進: 細胞温度が1℃上昇すると、代謝が12〜13%向上すると報告されています。これにより、組織の治癒力や免疫力も高まる可能性があります
- リラクゼーション効果: 体の芯から温まる心地よい感覚により、筋肉の緊張が解消され、精神的にもリラックスした状態になります
治療の実際
ラジオ波治療は、電気特有のピリピリした感覚はほとんどなく、体の中からポカポカと温まる気持ちの良い感覚があります。治療中だけでなく、治療後も温熱効果が持続することが特徴です。
多くの場合他の治療法(手技療法、ストレッチ、運動療法など)と組み合わせて行うことでより高い効果が期待できます。
ラジオ波で組織を柔らかくしてからエクササイズを行うことで、より効果的なリハビリテーションが可能になります。
スポーツ選手も活用
ラジオ波治療は、2014年のソチオリンピックで日本選手団のコンディショニングに正式採用されたことで注目を集めました。現在でも、プロサッカー選手やマラソン選手、フィギュアスケート選手など、多くのトップアスリートが怪我の治療や予防、パフォーマンス向上のために活用しています。
最新の研究から分かってきたこと

腱の治癒メカニズム
最近の研究で、アキレス腱の治癒において重要なメカニズムが明らかになってきました。
筋収縮の重要性
2025年に発表された日本の研究ではアキレス腱断裂後の治癒において関節固定や筋麻痺によって腱が受けるメカニカルストレス(力学的な負荷)を制御したマウスモデルを用いた実験が行われました。
その結果筋収縮が維持されたマウスは術後4週間で腱の長さと強度が健康な腱と同等に戻りましたが、筋収縮が阻害されたマウスでは腱の強度が劣ったままで腱の長さも健康な腱より延びてしまうことが分かりました。
つまりアキレス腱の治癒には適切な筋収縮つまり動かすことが重要であり、完全に固定して動かさないことは逆効果になる可能性があるということです。
早期リハビリテーションの重要性
この研究結果はアキレス腱断裂の術後早期における腱への除荷(負荷を取り除くこと)特に筋収縮の制限が腱の構造変化をもたらし永続的な筋力低下の要因となることを示唆しています。
実際、最近の治療では手術後も外固定を行わず早期から自動運動を許可し軽い負荷を継続的に加えることで早期に良好な機能回復が得られることが報告されています。
腱再生のシグナル伝達経路
2025年に岐阜大学の研究グループは腱の再生に関わる重要なシグナル伝達経路である「PI3K-Aktシグナル」を発見しました。
若齢と高齢での違い
腱は再生能力が低いため、成人や高齢者の腱損傷後の修復には年単位を要し健常な状態へ再生することは困難です。一方、小児の腱損傷においては治癒期間も短く、再断裂や癒着をきたしにくいことが知られています。
この研究では、加齢に伴い変化する腱再生能力を規定する分子メカニズムを解析しPI3K-Aktシグナルが腱再生の細胞源である腱細胞と腱滑膜細胞の細胞増殖能、細胞遊走能、幹細胞性を制御していることを明らかにしました。
将来への期待
この成果は、治療に難渋する成人・高齢者の腱疾患や外傷に対する新規治療法開発の足がかりになると期待されています。将来的には、このシグナル伝達経路を活性化させる薬や治療法が開発されるかもしれません。
アキレス腱症の予防

治療も大切ですが、何よりも予防が重要です。
以下のような点に気をつけることでアキレス腱症のリスクを減らすことができます。
適切なウォーミングアップとクールダウン
運動前には必ずウォーミングアップを行い体を温めてから本格的な運動を始めましょう。
運動後にはクールダウンとストレッチを行うことも大切です。
特に、普段運動していない方が久しぶりに体を動かす時や長く運動から離れていた方が復帰する時には急に激しく動かないように注意が必要です。
段階的なトレーニング
急激に運動量や強度を上げないことが大切です。
新しいスポーツを始める時や久しぶりに運動を再開する時、トレーニング量を増やす時などは徐々に体を慣らしていくようにしましょう。週単位で少しずつ負荷を上げていくのが理想的です。
日常的なストレッチとケア
運動をする方だけでなく一般の方も日頃からアキレス腱やふくらはぎのストレッチを習慣にすることをお勧めします。
特に中高年の方は、アキレス腱の変性が進んでいる可能性がありますので日頃のストレッチによって柔軟性を高めておくことが予防につながります。
デスクワークなど座って過ごす時間が長い方も、定期的にストレッチを行って筋肉の柔軟性を保つようにしましょう。
適切な靴選び
自分の足に合った靴を選ぶことも重要な予防策です。
- 縦・横幅・高さが自分の足に合っているか確認しましょう
- 十分なクッション性のある靴を選びましょう
- スピード重視の底が薄い靴は、一般の方にはあまり適していません
- かかと部分が硬すぎる靴は避けましょう
スポーツをする方は、そのスポーツに適したシューズを選び自分のレベルに合ったものを使用することが大切です。
体重管理
肥満はアキレス腱への負担を増やす要因となります。
適正な体重を保つことも、予防の一つです。
痛みを感じたら早めに対処
翌日もアキレス腱に痛みが残っている場合は一旦スポーツを休んだり、別のメニューで調整したりすることをお勧めします。
痛みが残っているのにさらに運動を続けるとアキレス腱症が生じやすくなったり悪化したりする可能性があります。「少し痛いけど大丈夫」と我慢せず早めに休息をとることが大切です。
また、痛みや腫れに気づいたら自己判断で様子を見るのではなく早めに医療機関を受診することをお勧めします。
早期に適切な対処や治療を行えば、予後も良好に推移することが多いからです。
よくある質問

Q1. アキレス腱症は完全に治りますか?
適切な治療とリハビリテーションを行えば多くの場合改善が期待できます。
ただし、個人差があり軽度であれば1〜2か月で改善する方もいれば重度の場合は1年以上かかることもあります。
また、運動療法を行っても一定の割合の方は長期的に症状が残ることもあるため根気強く治療を続けることが大切です。
Q2. 運動は完全にやめるべきですか?
痛みが強い急性期にはアキレス腱に負担がかかる運動は休む必要があります。
しかし、完全に安静にするのではなく、痛みが出ない範囲で適度に動かすことが重要です。
最近の研究では適切な負荷をかけることが腱の治癒を促進することが分かっています。
この辺りはご相談ください‼
Q3. エキセントリックエクササイズは痛くてもやるべきですか?
エキセントリックエクササイズ中に多少の痛みが出ることはありますが耐えられないほどの強い痛みがある場合は無理をせず負荷を減らすか一旦中止しましょう。
「痛みが10段階中2以下」を目安に調整しながら行うことが推奨されています。
自己判断が難しい場合は、専門家の指導を受けることをお勧めします。
Q4. 再発を防ぐにはどうすればいいですか?
再発予防のためには、以下のような点に気をつけましょう。
- 日常的にストレッチを続ける
- 運動前後のウォーミングアップとクールダウンを習慣にする
- 急激に運動量や強度を上げない
- 適切な靴を選ぶ
- 痛みを感じたら無理をせず、早めに対処する
- 定期的に足のケアを行う
Q5. どのくらいでスポーツに復帰できますか?
個人差が大きいですが一般的には軽度の場合で1〜2か月重度の場合は数か月から半年以上かかることもあります。
重要なのは痛みが完全になくなり十分な筋力と柔軟性が回復してから復帰することです。
焦って早く復帰すると再発のリスクが高まりますので段階的に復帰計画を立てることをお勧めします。
まとめ
アキレス腱症は、適切な治療と予防によって改善が期待できる疾患です。
この記事でお伝えした重要なポイントをまとめます。
- アキレス腱症は使いすぎや筋肉の柔軟性低下が主な原因で、スポーツをする方だけでなく一般の方にも起こりうる症状です
- 早期発見・早期治療が大切で、症状が3か月以上続く場合は慢性化している可能性があります
- 保存療法が第一選択であり、ほとんどの場合、手術をせずに改善が期待できます
- エキセントリックエクササイズが最も効果的な治療法とされており、12週間継続することが推奨されています
- 適切な負荷をかけることが腱の治癒を促進するため、完全に動かさないことは逆効果になる可能性があります
- 体外衝撃波療法や動注療法、PRP療法など、新しい治療法も選択肢として考えられます
- 予防が何より重要で、日常的なストレッチ、適切な靴選び、段階的なトレーニングが大切です
- 痛みを我慢せず、早めに医療機関を受診することで、より良い結果が得られます
アキレス腱症は、決して珍しい症状ではありません。
もし症状がある場合は自己判断で様子を見るのではなく是非ご相談ください。
また、すでに治療を受けている方もこの記事で紹介したような最新の治療法について主治医に相談してみるのも良いかもしれません。
最新の研究によってアキレス腱症の理解は深まり治療法も進歩しています。
適切な治療とケアを続けることで、痛みのない日常生活やスポーツへの復帰を目指すことができます。
何かございましたらご気軽にご相談ください。
ご相談がある方は気軽に電話でも大丈夫ですよ。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考文献 本記事は以下のような医学論文や研究報告を参考に作成しています。
- アキレス腱断裂診療ガイドライン2019(改訂第2版)
- Beyer R, et al. Heavy Slow Resistance Versus Eccentric Training as Treatment for Achilles Tendinopathy. Am J Sports Med. 2015.
- Rees JD, et al. The mechanism for efficacy of eccentric loading in Achilles tendon injury. Br J Sports Med. 2008.
- 岐阜大学整形外科研究グループ. PI3K-Akt signalling regulates tendon regeneration. Nature Communications. 2025.
- 京都大学iPS細胞研究所. ヒトiPS細胞から腱細胞を作製する研究. Nature Communications. 2021.
※この記事の情報は医学的な助言の代わりにはなりません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。


