微弱電流の治療効果:体に優しい最新電気治療のお話

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こんにちは!筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。

今回は当院でよく使われる微弱電流をご紹介していきたいと思います。杏鍼灸整骨院では最新の微弱電流機器も完備しております。

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は痛みの緩和や傷の治癒など、様々な場面で使われている治療法なんです。

できるだけわかりやすくご説明していきますね。

目次

まず微弱電流療法って何でしょうか

微弱電流療法とは、とても弱い電気を体に流す治療方法のことです。どのくらい弱いかというと、1ミリアンペア(mA)よりも小さい、マイクロアンペア(μA)という単位の電流を使います。実は私たちの体の中でも、細胞同士が情報をやり取りするときに、このような微弱な電気信号が流れているんです。

この治療法の素晴らしいところは、電気を流していても、ほとんど何も感じないということなんです[1][2]。「電気治療」と聞くと、ピリピリした刺激を想像される方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、微弱電流療法は本当に優しい刺激なので、痛みや不快感がほとんどありません。

体の中のエネルギー工場を元気にする仕組み

微弱電流療法がどうして効果があるのか、そのメカニズムについて少しお話ししましょう。

私たちの体の細胞の中には、「ミトコンドリア」という小さな器官があります。これは体のエネルギーを作る工場のようなものです。

そしてこの工場で作られるエネルギーを「ATP(アデノシン三リン酸)」と呼んでいます。ATPは私たちが生きていくために必要な、いわば「体のエネルギー通貨」のようなものなんです[1][2][3]。

研究によると、微弱電流を体に流すと、このATPの生産量が大幅に増えることがわかっています。

ある研究では、500マイクロアンペアという微弱な電流を流したところ、ATPの生産量が約500%も増加したという報告があります[2][3]。

つまり、細胞のエネルギー工場が5倍も活発に働くようになるということですね。

このATPが増えることで、傷の修復や組織の再生、痛みの軽減など、様々な良い効果が期待できるんです[1][2][3]。

例えば、筋肉が収縮したり、神経が信号を伝えたり、新しいたんぱく質を作ったりする際には、すべてこのATPが必要になります[3]。

細胞同士のコミュニケーションを改善

微弱電流のもう一つの大切な働きは、細胞同士の「会話」をスムーズにすることです[1][7][9]。

私たちの体の中では、細胞同士が電気信号やいろいろな物質を使って、常に情報交換をしています。怪我をしたり、病気になったりすると、この細胞同士のコミュニケーションがうまくいかなくなることがあるんです。

微弱電流を流すことで、細胞膜を通るイオン(電気を帯びた粒子)の流れが良くなり、細胞同士の情報交換がスムーズになると考えられています[7][9]。これによって、痛みの信号が和らいだり、炎症が抑えられたり、組織の修復が進んだりするようです。

傷の治りを早める効果

微弱電流療法は、特に傷の治療において注目されています。

実は、私たちの体が傷を治すとき、傷の周りには自然に微弱な電気が発生しているんです。この電気が細胞を傷口に集めて、修復を促進していると考えられています[11][12][13]。微弱電流療法は、この自然な治癒プロセスを外から助ける働きをします。

複数の研究結果をまとめた分析によると、微弱電流療法を標準的な傷のケアに加えることで、傷の面積が平均8.3平方センチメートル小さくなり、治癒までの時間も平均7日間短縮されたという報告があります[11][13]。慢性的な傷を持つ患者様にとって、これは本当に希望の持てる結果ですね。

ある病院での100人の患者様を対象にした研究では、微弱電流療法を追加したところ、すべての方の傷が改善したという素晴らしい結果が報告されています[14][15]。しかも、傷の痛みも大幅に減少し、中には全く痛みがなくなった方もいらっしゃったそうです。

微弱電流が傷の治癒を助ける仕組みとしては、以下のようなことが考えられています[12][17]:

  • 血流の改善: 傷の周りの血液の流れが良くなり、酸素や栄養素、そして免疫細胞がしっかり届くようになります
  • 細胞の移動促進: 皮膚を作る細胞や、傷を修復する細胞が、傷口に向かって移動しやすくなります
  • 炎症の軽減: 過剰な炎症反応を抑えて、腫れやむくみを減らします
  • 新しい血管の形成: 傷を治すために必要な新しい血管ができやすくなります
  • コラーゲンの生成: 皮膚の土台となるコラーゲンというたんぱく質の生成が促進されます

慢性的な痛みへの効果

さらに長く続く痛みに悩まされている方にとって、微弱電流療法は新しい選択肢になるかもしれません。

膝の痛みに関する研究では、微弱電流療法を受けた方は、偽の治療(プラセボ)を受けた方と比べて、統計的に意味のある痛みの軽減が見られたという報告があります[31]。この研究では、281人の参加者のうち、副作用を訴えたのはわずか1人(0.4%)だけだったそうです。つまり、とても安全な治療法だということがわかります。

腰痛の患者様に対する研究でも興味深い結果が出ています。平均して8.8年間も続いていた慢性的な腰の痛みが、微弱電流療法を受けることで、約3.8倍も軽減されたという報告があります[38]。しかも、週に1回の治療を平均5.6週間続けるだけで、このような効果が得られたそうです。

線維筋痛症という、全身に痛みが広がる病気の患者様でも、痛みのスコアが改善したという研究結果があります[31][34]。従来の薬物療法のような全身的な副作用がないことも、この治療法の大きな魅力です。

痛みが軽減される仕組みとしては、いくつかのことが考えられています[31][32][34]:

  • 痛みを伝える神経の興奮を抑える
  • 炎症を引き起こす物質を減らす
  • 筋肉の緊張をほぐす
  • 血液循環を改善して、痛みの原因となる老廃物を取り除く
  • 体の自然な鎮痛物質(エンドルフィン)の分泌を促す

興味深いのは、治療を受けた患者様の中には、わずか48時間後に「驚くほど」痛みが軽減したと感じた方もいらっしゃったということです[18]。中には、オピオイド系の強い鎮痛剤から、より軽い鎮痛剤に変更できた方もいらっしゃいました。

筋肉や関節の回復をサポート

スポーツをされる方や、筋肉の衰えが気になる方にも、微弱電流療法は役立つ可能性があります。

運動後の筋肉痛について調べた研究では、微弱電流療法を受けた脚は、受けなかった脚と比べて、24時間後、48時間後、72時間後のすべての時点で、明らかに痛みが少なかったという結果が出ています[38]。

また、運動選手を対象にした研究では、トレーニング後に微弱電流療法を行うことで、体脂肪の減少効果が高まったという報告もあります[1][6]。特に、内臓脂肪や下半身の脂肪が減少したそうです。

高齢の方や、長期間ベッドで過ごされている方の筋肉の衰えを防ぐ効果も期待されています[2][34]。微弱電流は筋肉の細胞に働きかけて、筋肉量の減少を抑えたり、筋力の回復を助けたりする可能性があるんです。

膝の手術を受けた患者様に対する研究では、微弱電流療法を受けた方は、関節の動きが改善し、組織の回復が早まったという報告があります[2]。

炎症を抑える働き

炎症は、体が傷や感染から自分を守るための大切な反応です。でも、炎症が長く続いたり、強すぎたりすると、かえって体に負担をかけてしまいます。

動物を使った研究では、特定の周波数の微弱電流を使うことで、炎症が約62%も減少したという驚くべき結果が報告されています[35]。人間での研究でも、炎症の指標となる物質(インターロイキン-4、インターロイキン-6、サブスタンスPなど)が減少し、同時に体の幸福感を高めるベータエンドルフィンが増加したという報告があります[40]。

微弱電流療法を受けた傷の周りでは、傷の治癒を妨げる過剰な炎症反応が抑えられ、腫れやむくみが軽減されることがわかっています[12][17][18]。ある研究では、治療開始から48時間以内に、傷の周りの皮膚が硬い状態から柔らかい状態に変化したという観察があります[18]。これは、むくみが減って、血液の流れが良くなったことを示していると考えられます。

血液循環の改善

微弱電流療法は、血液の流れを良くする効果も報告されています[7][9][32]。

血液循環が良くなると、体の隅々まで酸素や栄養素がしっかり届くようになります。また、老廃物や痛みの原因となる物質も効率的に取り除かれます。これは、傷の治癒だけでなく、慢性的な痛みの軽減にも役立ちます。

特に、末梢血管の病気を持つ患者様の症例では、微弱電流療法を追加することで、組織への血流が改善し、治りにくかった傷が6ヶ月で完全に治癒したという報告があります[15]。

神経系への働きかけ

微弱電流療法は、神経系に対しても様々な良い影響を与える可能性があります。

顔の筋肉が麻痺する「ベル麻痺」という病気の治療に、1970年代から微弱電流が使われてきた歴史があります[7][9]。また、神経の損傷や神経痛の治療にも応用されています[33][40]。

長期間感覚がなくなっていた傷の周りの皮膚が、微弱電流療法を受けることで、再び感覚を取り戻したという症例も報告されています[18]。これは、微弱電流が神経の機能回復を助ける可能性を示唆しています。

また、不安やうつ症状に対しても、微弱電流療法が効果を示す可能性があるという研究報告があります[7][9]。脳の神経細胞にも働きかけることで、気分を改善する効果が期待されているんです。

皮膚の若返り効果

美容の分野でも、微弱電流療法は注目を集めています。

研究によると、微弱電流は皮膚の細胞の増殖を促進し、コラーゲンやエラスチンといった、肌のハリや弾力を保つたんぱく質の生成を助けることがわかっています[5]。毛髪の成長を促す細胞に対する研究では、25~50マイクロアンペアの電流を流すことで、細胞の増殖が明らかに促進されたという報告があります[5]。

美容クリニックでは、顔の筋肉を再教育して、リフトアップ効果を得るために微弱電流が使われています。筋肉の張りが戻り、シワが目立たなくなり、肌の質感が改善するという報告があります。

安全性について

治療法を選ぶときに、安全性はとても大切な要素ですよね。

微弱電流療法は、多くの研究で高い安全性が確認されています。前述の膝の痛みに関する研究では、281人中わずか1人だけが軽い副作用を報告しただけでした[31]。動物実験でも、長期間使用しても重大な副作用は報告されていません[10]。

それでも、以下のような方は、医師に相談してから治療を受けることをお勧めします:

  • 心臓のペースメーカーを使用されている方
  • 妊娠中の方
  • 癌の治療中の方
  • てんかんをお持ちの方
  • 治療部位に金属製のインプラントがある方

また、治療中は体をしっかり水分補給しておくことが大切です。研究によると、体の水分が十分にあると、微弱電流がより効果的に働くことがわかっています。

実際の治療について

微弱電流療法は、通常、痛みや不快感をほとんど感じません[2][7]。実際、多くの方は治療中に何も感じないそうです。

治療時間は、症状や目的によって異なりますが、一般的には20分から1時間程度です[38]。治療の頻度も様々で、急性の症状では週に数回、慢性的な症状では週に1回程度のことが多いようです。

傷の治療では、専用のパッドを傷の周りに貼り付けて治療することもあります[14][15]。痛みの治療では、痛みのある部位に直接パッドを当てたり、特定の周波数を使って症状に合わせた治療を行ったりします[33][38][40]。

治療効果は個人差がありますが、多くの研究で、治療を重ねるごとに効果が積み重なっていくことが報告されています。ある研究では、3回の治療を1週間ごとに行うことで、多くの方に効果が見られたそうです[40]。

従来の電気治療との違い

「電気治療」と聞くと、TENS(経皮的電気神経刺激)という治療を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。

TENSと微弱電流療法の最も大きな違いは、電流の強さです。TENSは微弱電流療法の1000倍も強い電流を使います[2]。そのため、TENSではピリピリした感覚があり、筋肉が収縮することもあります。

TENSは主に痛みの信号を脳に届かないようにブロックすることで効果を発揮しますが、微弱電流療法は細胞レベルで治癒を促進します[26][35]。つまり、アプローチの仕方が根本的に違うんです。

また、微弱電流療法は使うほどに効果が積み重なっていきますが、TENSなどの強い電流を使う治療では、逆にATPの生産が抑えられてしまうという研究結果もあります[26]。

周波数特異的マイクロカレント(FSM)

微弱電流療法の中でも、特定の周波数を使う「周波数特異的マイクロカレント(FSM)」という方法が注目されています[33][38][40]。

この方法では、体の各組織や症状に合わせて、最適な周波数を選んで治療します。例えば、0.3ヘルツは組織の治癒を促進し、30ヘルツは痛みの管理に、300ヘルツはむくみの治療やリンパの流れを良くするのに使われます[38]。

FSMを使った研究では、慢性的な腰痛が平均3.8倍も軽減されたという報告があります[38]。また、脳の血管の異常に対する動物実験でも、予防的に使用することで血管の変形を抑える効果が確認されています[10]。

今後の可能性

微弱電流療法は、まだ発展途上の治療法です。現在も世界中で研究が続けられており、新しい応用方法が次々と発見されています。

最近の研究では、脂肪細胞への働きかけ[5]や、肝臓の病気への応用[5]、さらには免疫系への影響[5]なども報告されています。また、認知機能や睡眠の質の改善[7][9]、排便の改善[14]など、思いがけない効果も見つかっています。

今後、より多くの大規模な研究が行われることで、微弱電流療法の効果がさらに明らかになり、より多くの患者様に役立つ治療法になっていくことが期待されます。

まとめ

微弱電流療法は、体に優しく、痛みもほとんどない治療法です。細胞のエネルギー生産を高め、細胞同士のコミュニケーションを改善することで、様々な症状の改善が期待できます。

特に以下のような症状に対して、効果が報告されています:

  • 慢性的な傷の治癒促進
  • 急性・慢性の痛みの軽減
  • 運動後の筋肉痛の軽減
  • 炎症の抑制
  • 血液循環の改善
  • 神経機能の回復
  • 皮膚の若返り

副作用がほとんどないことも、大きな魅力です。ただし、すべての方に効果があるとは限りませんし、症状によっては他の治療法と組み合わせる必要もあります。


参考文献

[1] Kolimechkov, S., et al. (2023). Physiological effects of microcurrent and its application for maximising acute responses and chronic adaptations to exercise. European Journal of Applied Physiology.

[2] Jonik, S., Rothka, A. J., & Cherin, N. (2024). Investigating the therapeutic efficacy of microcurrent therapy: a narrative review. Therapeutic Advances in Chronic Disease.

[3] Cheng, N., et al. (1982). The effects of electric currents on ATP generation, protein synthesis, and membrane transport in rat skin. Clinical Orthopaedics and Related Research.

[5] Bioelectric medicine: unveiling the therapeutic potential of micro-current stimulation. (2024). PMC11026362.

[6] Naclerio, F., et al. (2021). Effects of microcurrent therapy on body composition in athletes. Journal of Sports Sciences.

[7] Observational Study to Assesses the Efficacy and Safety of Microcurrent Therapy. (2023). Medical Devices: Evidence and Research.

[9] Microcurrent therapy for therapeutic purposes. (2023). Dove Medical Press.

[10] Microcurrent wave alleviates mouse intracranial arterial dolichoectasia development. (2024). Scientific Reports.

[11] Electrical microcurrent stimulation therapy for wound healing: A meta-analysis of randomized clinical trials. (2021). Journal of Tissue Viability.

[12] Yu, C., Hu, Z. Q., & Peng, R. Y. (2014). Effects and mechanisms of a microcurrent dressing on skin wound healing: a review. Military Medical Research.

[13] Wang, M., Hong, Y., Fu, X., & Sun, X. Advances and applications of biomimetic biomaterials for endogenous skin regeneration.

[14] Microcurrent as an adjunct therapy to accelerate chronic wound healing and reduce patient pain. (2018). Journal of Wound Care.

[15] Use of microcurrent adjunct wound therapy in a patient with peripheral vascular disease: A case study. Wounds Asia.

[17] Effects and mechanisms of a microcurrent dressing on skin wound healing: a review. (2014). PMC4440595.

[18] Kurz, P., et al. (2023). Activation of healing and reduction of pain by single-use automated microcurrent electrical stimulation therapy in patients with hard-to-heal wounds. International Wound Journal.

[26] How Microcurrent Stimulation Produces ATP — One Mechanism. Dynamic Chiropractic.

[31] Iijima, H., & Takahashi, M. (2021). Microcurrent Therapy as a Therapeutic Modality for Musculoskeletal Pain: A Systematic Review. Archives of Rehabilitation Research and Clinical Translation.

[32] Blood Flow and Circulation effects of microcurrent therapy. Medical Devices: Evidence and Research.

[33] Frequency Specific Microcurrent (FSM). Cleveland Clinic Health Essentials.

[34] Investigating the therapeutic efficacy of microcurrent therapy: a narrative review. PMC12357078.

[35] Microcurrent Therapy for Inflammation/Pain. Acuity Integrative Health.

[38] McMakin, C. R. (2004). Microcurrent therapy: a novel treatment method for chronic low back myofascial pain. Journal of Bodywork and Movement Therapies.

[40] Frequency Specific Microcurrent Therapy. Complete Chiropractic.

投稿者プロフィール

陣内由彦
陣内由彦柔道整復師、鍼灸師
院長  柔道整復師  鍼灸師

福岡医健専門学校卒業

株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。

陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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