足関節捻挫とは

【足関節捻挫】は、よく耳にする怪我の一つだと思います。

実際、当院に来院される患者様にも足関節捻挫を起こして来院される方は多くいらっしゃいます。

単に足関節捻挫といっても、その程度や損傷部位は様々です。

 

当院では足関節捻挫に対して『損傷からの時期・損傷の度合い・炎症の有無や度合い・腫脹の有無や度合い』などを確認しながら、『スポーツでの大会までの期間や生活の中でも治癒までの期間』を設定しながら、その時の状態に合わせてより早く治癒に向かっていけるように施術を行っていきます。

捻挫の定義

捻挫というと足関節を思い浮かべる方も多いとは思いますが、足関節に限らず関節であればどこでも捻挫を起こす可能性はあります。

例えば、膝を捻った場合は膝関節捻挫、腰を痛めた場合も腰部捻挫、突き指なども指関節捻挫となるために捻挫はどこでも起きています。
※すべてが捻挫という訳ではありません

そのため捻挫は足関節を含めて、怪我の中の多くを占めている外傷の一つです。

 

捻挫とは・・・
関節に関節の許容範囲を超えた動きが与えられた為に起きる(軟部組織)損傷の一つである。多くは患部に痛みと腫脹、熱感を伴う。一般用語として多用されるが、医学用語としては更に損傷部位を限局し、〇〇靭帯損傷という事が多い。(例:右膝前十字靭帯損傷←膝の捻挫、右母指MP関節内側側副靭帯損傷←親指の第二関節の捻挫)

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用

 

捻挫の定義は、関節の可動域を越えたためとされていますが、実際には関節に対する繰り返しの負荷や外力がかかる事によって関節部やその周辺の軟部組織(靭帯・腱・筋・間節包など)に損傷を起こす事も十分にあります。

これも十分捻挫として考えられます。

 

また、捻挫は大きく3つに分類する事が出来ます。

Ⅰ度損傷・・・靭帯の微細損傷で関節の不安定感は診られない
Ⅱ度損傷・・・靭帯の部分断裂で関節の不安定感が起こる
Ⅲ度損傷・・・靭帯の完全断裂で関節の不安定感が強く起こる

大きくはこのように分けられます。

 

足関節捻挫の分類

一言に足関節捻挫といっても、その程度や損傷を起こしている部位はそれぞれです。

先ほど説明した捻挫の分類に加えて足関節の場合は、靭帯の損傷の数も関係してきます。

 

損傷の程度によって症状の出方もそれぞれ違います。

損傷が軽度なものであれば、歩行可能で腫脹も軽微な事も多いです。

逆に損傷が強いものであれば、歩行困難で荷重が出来ずに、腫脹・発赤・皮下出血なども強くみられます。

そのような症状も踏まえて、『どこの損傷で、どれくらいの損傷なのか』をしっかりと鑑別していく事が大切になります。

 

足関節外側捻挫(内反捻挫・内返し捻挫)

足関節の捻挫の中では一番多く起こる捻挫です。

足関節外側捻挫で損傷する靭帯は、前距腓靭帯・踵腓靭帯・後距腓靭帯を損傷をしやすいです。

その中でも特に損傷するのは前距腓靭帯を損傷する事が多く、前距腓靭帯の損傷の度合いに合わせて、その他の靭帯を同時に損傷していく事が多くみられます。

 

これらの靭帯は足首の外側に付着している靭帯ですので、足首が内側に向き過ぎないように制限しているために前距腓靭帯損傷を強く起こすと足首の制御が効かないため、内果(内くるぶし)と衝突を起こし、内側部の骨の炎症・内側靭帯やその他の軟部組織損傷・骨折などを同時に損傷する事も多くあります。

足関節内側捻挫(外反捻挫・外返し捻挫)

足関節の内側を守っている靭帯を損傷します。

内側の靭帯は三角靭帯(脛舟部線維・脛踵部線維・脛距部線維)といって、足関節の中では比較的大きな靭帯で、強い靭帯です。

足関節が内側に強く倒れた際に損傷を起こしやすいです。

しかし靭帯自体の力が強く足関節外側捻挫に比べると靭帯が断裂してしまう事は比較的少ないですが、靭帯の牽引によって靭帯が付着してる部分での骨折を合併している事が多々あります。

 

足関節前足部捻挫やその他の靭帯

足関節より前方の前足部や足関節より上部の損傷を起こします。

足首から足の甲かけての骨は、ブロック状の骨を重ねるようにして関節を作っているため、関節の動きは少ないです。

上部では脛骨と腓骨を繋ぐ靭帯で関節の安定のために大切な靭帯です。

関節の動きは少ないですが、繰り返しの負荷や外力・捻る事によって捻挫を起こし靭帯損傷を起こすケースも多くあります。

靭帯損傷としては背側足根中足靭帯・二分靭帯等や遠位脛腓靭帯の靭帯損傷を起こす事が多く、その部位が足関節外側捻挫と間違われるケースや、周囲の腱などの損傷を見落とすケースが多いために、確認をしっかりと取る事が大切です。

 

足関節捻挫と同時に損傷しやすいケース

先ほどまでも何度か説明してきましたが、足関節捻挫は他の損傷など伴う事も多くあります。

多く起こすのが骨折・他の靭帯や腱など軟部組織損傷等を同時に負傷しているケースが多いです。

 

骨折を起こした場合は靭帯損傷の部位と近いために見落とされるケースも多くあります。

軟部組織の場合も同様で、靭帯損傷と同時に引き伸ばされたり過度の負荷がかかるために損傷を起こす事が多いです。

骨折の疑いがある場合などは、一度整形外科の受診を勧める場合もあります。

 

当院の行っている処置

足関節捻挫に対して当院が行っている処置を紹介します。

この処置に関しては、足関節捻挫だけに限らずどのような怪我に対しても同様な事はいえます。

当院が急性損傷に関して行っていくのは【RICE(ライス)】や【POLICE(ポリス)】を中心として、そこに必要な処置を考えて行っていきます。

【RICE(ライス)】
Rest(安静)・・・患部を安静にする
Icing(冷却)・・・患部を冷やす
Compression(圧迫)・・・患部に圧迫を加える
Elevation(挙上)・・・患部を高く上げる

【POLICE(ポリス)】
Protection(保護)・・・患部を保護する
Optimal Loading(適度な負荷)・・・患部に適度な負荷をかける
Icing(冷却)・・・患部を冷やす
Compression(圧迫)・・・患部に圧迫を加える
Elevation(挙上)・・・患部を高く上げる

 

検査・鑑別で状態把握

まず、最初に行うのは検査・鑑別による状態把握です。

これをしない事には、患部に対して適切な処置を行う事が出来ません。

 

最初に損傷の部位を検査・鑑別していきます。

足関節捻挫であっても、『骨折などの合併はないのか』と疑いながら検査を行って、最悪のケースなどを想定しながら行っていきます。

損傷部位がある程度定まってくると、次は損傷の度合いを調べていきます。

どれくらいの損傷があるかによって、その後に行っていく処置を決定していきます。

 

物理療法による治癒促進と疼痛緩和

様々な物理療法を使用して、患部がより良い状態になっていく事を考えて使用します。

 

微弱電流(マイクロカレント・MCR)
人体に流れている電気と似た感じないほどの微弱な電気を流す事で、損傷部位の治癒促進を行っていきます。
ポータブルの貸し出し用もあるため、一日中電気を流して身体の治りやすい状態をより強く作っていきます。

超音波治療器
損傷初期の炎症の軽減・軟部組織の治癒促進を狙って使用できます。
また、組織回復期や復帰期にも軟部組織の伸張性などを出しやすく多岐にわたって使用しています。

NMES(EMS)
神経筋電気刺激といって、神経や筋に対して電気刺激を行う事によって筋収縮を起こさせます。
筋機能の低下を起こしている筋肉や、筋委縮により筋力の低下を起こしている筋に刺激を与え、筋の促通や筋の再教育を行っていきます。

その他の電気刺激
電気刺激によって効果や目的などは様々あります。
その中でも、疼痛の緩和・筋の血流量増加・筋の弛緩などを狙って行っていきます。

患部の状態に合わせて、どのような物理療法を使用していくといいかを考えて、その時その時にあったものを選択して使用していきます。

 

固定による保護と安静

患部の状態によって固定や補助を行って、患部の固定・保護・安静・免荷などを目的に行っていきます。

 

固定具による固定
固定具を作り患部の固定・保護・安静・免荷を目的として固定をしていきます。
損傷の度合いが強い時に使用し、松葉杖を貸し出す場合もあります。

包帯・テーピングによる固定や補助
伸縮性のない包帯・テーピングにより固定を行い、固定・保護・安静を行っていきます。
また治癒の過程で、伸縮性のあるテーピングに変更し、状態に合わせて固定から補助のテーピングに変更していきます。

サポーターによる固定や補助
目的は固定具やテーピング等と同じです。
皮膚が負けやすいなど患者様の目的に合わせて、ご購入の相談をさせて頂く場合があります。

 

足関節に固定具やテーピングによって固定や補助を行う事によって、何もせずに不安定なままにしておくよりも、治るまでの期間も予後も全然違うものになってくると考えています。

 

復帰に向けた運動や促通や負荷

損傷部位の治癒の経過によって、患部に対して運動や促通または適度な負荷を掛けていきます。

損傷している部位は安静期間が長いと逆に弱くなってしまうので、時期を見計らって患部を動かす事を意識していきます。

 

適度な負荷を掛けていく
患部に少しずつ負荷を掛けていきます。
最初は歩行の荷重始めて、運動による負荷を増やしていきます。
それにより患部が治る時に必要なコラーゲン線維はより強固に結びつこうとしていきます。

運動と促通を行う
患部に適度に負荷を掛けだすと、そこに運動を組み合わせていきます。
患部周辺の筋は萎縮といい、負傷をした直後から弱くなっていきます。
その筋になるべく早期に運動を行う事で、筋力低下を防ぎ、筋の収縮力低下も防いでいきます。
ここに、先ほど説明したNMES(EMS)も同時に行うと、委縮による筋機能低下をしている筋の再教育や促通、運動強度も上げる事が出来ます。

 

このように負荷を掛ける事や運動・促通を行っていく事で、損傷部位の回復を早める事と同時に、競技や生活への復帰もスムーズに行えるようになっていきます。

 

おわりに

足関節捻挫について紹介をしました。

捻挫だからと簡単に思っていると、なかなかスムーズに治っていかないケースも多くあります。

損傷部位の状態に合った施術や運動等を行っていくと、治りも早く予後もスムーズに進んでいきます。

 

また、スポーツなどは大会などに向けての期間もあります。

当院はその期間から逆算して施術を行っていきます。

怪我期間でもなるべく出来る練習を選択して少しでも良いパフォーマンスで大会に臨めるように努めています。

 

足関節捻挫でお悩みの場合は、気軽にご相談ください。

※状態によっては整形外科の受診を勧める場合があります。