
こんにちは!!
福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の妹川(いもかわ)です。
今回は【膝内側側副靭帯損傷後の運動介入|復帰に向けた運動の一例】に関して紹介していきます。
前回のブログで紹介している内側側副靭帯損傷をして来院された柔道をしている高校生の続編です。
前回のブログは内側広筋とEMSに関しての記事です。
内側広筋の重要性とEMSの電気療法の効果を紹介していますので合わせて読んでみてください。

今回は、前回の状態から回復をしていったので競技復帰に向けて運動をしている所です。
競技復帰に向けて運動を行っていく事はとても大切です。
それによって怪我の再発やパフォーマンスが変わるといっても過言ではありません。
そこで今回の記事では、内側側副靭帯に関しての理解を深めてもらう事と、復帰に向けた運動の一例を紹介をしていきます。
靭帯とは??膝内側側副靭帯損傷とは??
運動に関して紹介していく前に、靭帯の事と膝内側側副靭帯に関して少し知っていきましょう。
最初に、靭帯に関して少し説明をしていきます。
靭帯とは、膠原線維(コラーゲン線維)が主になって構成された組織で、この膠原線維は弾性は多少あるものの強く伸びにくいというのが特徴です。
そのため靭帯は骨と骨を繋ぐ事が大きな役割で、関節を構成する上でもとても大切な役割を担っています。
また、靭帯は関節の動きに関してもとても大切な役割を持っています。
関節を動かそうとする時は決まった方向に動くと思いますが、これは靭帯によって可動域を超えた範囲に動かないように制限をしているためです。
そして、関節が安定してスムーズに動くように誘導も行っています。

では関節の可動域を超える場合はどうなるでしょうか??
多くの場合は靭帯損傷が起きます。
※例外として、もともと靭帯や関節が緩い人はいます
靭帯は関節の可動域の制限をしていますが外力によって関節が関節可動域を超えて動こうとした場合に、靭帯が負荷に耐えられなくなり断裂もしくは損傷を起こしてしまいます。
そして靭帯損傷を起こした場合は、損傷の程度にもよりますが関節可動域の制限や誘導の役割が機能しなくなるので関節の不安定が起きるようになりスムーズな関節運動が行われないようになります。
これは膝内側側副靭帯を含めたどの靭帯損傷にも同様の事が起きます。
では膝内側側副靭帯の場合はどうでしょうか??
まずは内側側副靭帯のある場所から知っていいきましょう。
膝内側側副靭帯
起始:大腿骨内側上顆
停止:浅層は脛骨内側顆の内側縁~後縁と内側半月板・深層は内側半月板と脛骨関節面直下
作用:膝関節の外反と外旋の制動
内側側副靭帯は膝関節の内側に位置しています。
また大腿骨の内側上顆から脛骨に向かって下方から若干の斜め前に向かって走り脛骨に付着しています。
これにより膝関節の外反と外旋の制動に大きな役割を持っています。
また膝内側側副靭帯は少し特徴のある靭帯です。
それは停止部を見てもらうと分かるのですが、一部が内側半月板に付着しています。
これは靭帯の緊張(半膜様筋による)によって関節運動に合わせて内側半月板を引き出す役割も持っています。

膝内側側副靭帯が損傷を起こす場合は大きく2つあります。
1つはコンタクトスポーツなどによる直達外力です。
膝関節に対して外側から力が加わり膝関節が内側に倒れた時に、膝関節は外反が強制され負荷に耐えられなくなった靭帯が損傷を起こします。
もう1つの場合は、切り返しやジャンプの多いスポーツで接地時に膝関節に外反力と捻転力が強く掛かった場合です。
これは直接的に外力が加わった訳では無いのですが、バランスを崩しての接地や接地の癖によって起こる事も多くあります。
接地の癖というのが《ニーイントゥーアウト》というのですが、これは内側側副靭帯損傷を多く起こしやすいです。
ニーイントゥーアウトになる理由は様々あるのすが、ジャンプの接地などで膝が内側に入りやすい人は膝から上が内側に捻られ(内旋)膝から下が外側に捻られる(外旋)状態になりやすいです。
これにより膝から下は下腿外旋という状態になるので、膝が内側に曲がる事での外反力と下腿外旋による外旋力が内側側副靭帯に対してかかるために損傷を起こしやすくなります。
これらの力が靭帯に掛かる事によって損傷を起こしていきます。

内側側副靭帯は損傷する時は単独の事もありますが、他の組織と一緒に損傷する事もとても多いです。
先ほど内側側副靭帯は内側半月板と一部付着している特徴があると説明しましたが、これにより内側側副靭帯損傷を起こした場合は内側半月板も一緒に損傷を起こす事が多いです。
またニーイントゥーアウトなどの膝関節にかかる捻転力によって損傷を起こした場合は関節内部にある前十字靭帯も一緒に損傷を起こす事も多いです。
これら内側側副靭帯・内側半月板・前十字靭帯を同時に損傷を起こす事を《不幸の三徴候》というのですが、それだけ3つとも一緒に損傷を起こす可能性が高いのも内側側副靭帯損傷の特徴といえます。
復帰に向けた運動の重要性|運動が靭帯も身体も強くする
今回紹介している動画の患者様は、状態が良くなり復帰に向けた運動を積極的に行っている状態です。
競技復帰に向けて運動はとても大切です。
それにより競技復帰が痛みがなくスムーズに進みやすくなりますし再発の可能性もかなり下がります。
また復帰前の運動によって苦手が克服できれば競技力の上昇に繋がる可能性もあります。
それくらい競技復帰に合わせて運動を行っていく事は大切ですしプラスに働く事が多いです。
ただ運動を行えば何でもいい訳ではありません。
その時の状態や時期に合わせた運動を行える事が重要になってくるので、そこに関しても少し説明をしていきましょう。

まず怪我をした場合に頭に入れてほしい事はどのようにして組織を早く強く治していくかという事です。
結論からいうと負荷です。
損傷をした組織にその時に合わせた適度な負荷を与えていく事で組織は早く強く治ろうとしていきます。
これは研究で証明されていて、損傷初期から適度な負荷を与える事で組織に対して修復に必要な新しい組織が集まりやすい事や、その量も集まり過ぎずに適度に集まりやすいと結果が出ています。
損傷を起こした組織はほったらかしても勝手に治っていきます。
しかし自然と治っていくまで待っていると、組織は弱く治っていく可能性もありますし、新しい組織が集まり過ぎて硬く固まった組織になる可能性も高くなってしまいます。
このような事から、損傷を起こした組織には負荷を掛けていく事が大切になってきます。
そこで問題なのがどれくらいの負荷を掛けていくかという事です。
どのタイミングでも負荷を掛け過ぎると再負傷や状態を悪くする可能性があるので負荷の量が大切になってきます。
炎症期
炎症が強く起こっているために安静が第一選択の時期
負荷が掛かっているかどうかも分からない程の負荷を掛けていく
超音波療法や電気療法などの物理療法・伸びる感覚の全く感じない程のストレッチ姿位など
修復期
組織の増殖と修復が行われていっている時期
筋肉や関節に対して負荷の掛からない運動を行っていく
負荷を掛けてない状態での筋の収縮や関節運動・自重のみの運動
復帰期
組織修復がある程度進んで組織が強くなっていく時期
筋肉や関節に対して負荷を掛けながら運動を行っていく
競技に近い運動や競技に合わせた運動・重りやEMSなどで負荷を掛けながらの運動
ざっくり分けるとこんな感じになります。
何度も言いますが負荷は多ければ良いという訳ではありません。
その時に合わせた負荷や運動を選択していく事が大切です。
それが組織修復を早くしていきますし強くしていく事になっていきます。
そこにもう一つ考えてほしい事は、競技復帰前に行っていく運動の内容です。
ニーイントゥーアウトなどの場合、怪我をした原因は身体の使い方にあります。
そこの改善を起こしていかないと、痛みなく競技復帰をしたとしても再発をする可能性がとても高くなります。
また外力によって起きた損傷でも、怪我をして競技をしていない期間に筋肉の働きは悪くなるので、同様にここも改善を起こしていかないと再発の可能性が高くなります。
このように運動を行う事は組織を強くするためにもとても重要になりますし、競技復帰後の再発の可能性を下げるためにもとても大切な事になります。
考え方によっては怪我をしているこの期間を利用して復帰前の運動をしっかりと頑張っていくと、大きくプラスに働くのではないかと思います。
それは弱い所の強化や身体の使い方の改善を起こしていく事でパフォーマンスの向上が出来る可能性も十分にあると思います。
復帰前に行った運動の一例|バランスと筋力強化の獲得
当院で行った運動の一例です。
運動は一種類だけでなく沢山の種類を行う事がオススメです。
『この運動だけを行っていれば大丈夫!!』というものはないので、色々な種類の運動を行っていきましょうね。
今回行った運動は片足立ちからの重心を下げていき左右に重心移動をさせていく運動です。
柔道をしている患者様なので、重心を下げる動作や捻る動作が多くあります。
この時に上手く対応できるようになる事と、再発防止のためにもこれらの動作がしっかりと行えるように意識をしています。
また、臀部の力を意識する事・膝の向きを意識する・つま先も向きを意識する事でニーイントゥーアウトにならないように行っていきます。
まとめ
今回は【膝内側側副靭帯損傷後の運動介入|復帰に向けた運動の一例】に関して紹介しました。
膝内側側副靭帯に限らず、どのような怪我に関しても運動を行う事はとても大切な事です。
それは損傷組織を強くするためにも早く治るためにも再発をしないためにもとても重要な役割を担っています。
また復帰前にしっかりと運動を行う事で、スムーズに復帰が出来るので競技を離れる時間が少なくて済みます。
これは自分にとってもチームにとってもとてもプラスの事ですよね。
怪我をした時に治るのを待つだけでは無くて、ぜひ運動や負荷を掛ける事を行ってほしいと思います。
※運動や負荷は怪我の状態などを考えてその時に合った物を選択していく事が重要です
杏鍼灸整骨院の妹川でした。
投稿者プロフィール

- 柔道整復師
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柔道整復師
福岡柔道整復専門学校(現 福岡医療専門学校)卒業
陸上競技、サッカー、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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