
こんにちは!福岡県筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内由彦です。
今回は変形性膝関節症の鍼治療についてご紹介していきたいと思います。
まず「階段を降りるときに膝が痛い」「立ち上がるときに膝がギシギシする」そんなお悩みを抱えていませんか?
変形性膝関節症は、50代以降の方、特に女性に多く見られる病気です。
日本国内だけでも約800万人もの方が症状を抱えていると言われており、高齢化が進む中で今後も増えていくと考えられています。
病院に行くと「運動療法をしましょう」「痛み止めを飲みましょう」と言われることが多いですが、「できれば薬に頼らずに痛みを和らげたい」「手術以外の方法を探している」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
※もちろん運動療法も痛み止めも大事な治療法です。
そんな中で、鍼灸治療という選択肢に注目が集まっています。
今回は、論文などの研究結果をもとに、変形性膝関節症に対する鍼灸の効果について、わかりやすくお伝えしていきます。
変形性膝関節症ってどんな病気?

まず、変形性膝関節症について簡単にご説明します。
膝の関節には「軟骨」というクッションのような組織があります。この軟骨が、加齢や体重の負担などによって少しずつすり減っていくことで、膝の骨同士がぶつかりやすくなり、痛みや炎症が起こる病気です。
どんな症状が出るの?
- 動き始めに膝が痛い(特に朝起きたときや座った状態から立ち上がるとき)
- 階段の上り下りがつらい
- 膝を曲げ伸ばしすると音が鳴る
- 膝が腫れたり、水が溜まったりする
- 膝が伸びにくい、曲がりにくい
症状の原因は、軟骨の変性だけでなく、関節周囲の筋肉の緊張や血液の流れが悪くなることも関係しているとされています。
鍼灸治療って何をするの?

鍼灸治療とは、体にある「ツボ(経絡)」と呼ばれる場所に、細い鍼を刺したり、お灸で温めたりする東洋医学の治療法です。
鍼と聞くと「痛そう」「怖い」と思われるかもしれませんが、実際に使う鍼は髪の毛ほどの細さで、多くの方が「思ったより痛くない」とおっしゃいます。
鍼灸はどうやって痛みを和らげるの?
鍼灸治療を行うと、体の中で「エンドルフィン」という痛みを抑える物質が分泌されることが分かっています。これは体が自然に持っている「痛みを和らげる仕組み」を活性化させる働きです。
また、鍼を刺すことで、わざと体に小さな傷をつけ、それを治そうとする体の反応を利用します。その過程で、血液の流れが良くなり、筋肉の緊張がほぐれていくのです。
変形性膝関節症では、膝の周りの筋肉が硬くなって痛みを感じやすくなっていることが多いので、この「筋肉をほぐす効果」がとても大切になります。
論文から見る鍼灸の効果 – 本当に効くの?

気になるのは「実際に効果があるのか?」ということですよね。ここでは、国内外の研究結果をご紹介します。
海外の大規模な研究から
2007年に発表された研究では、本物の鍼を使った治療と偽物の鍼を使った治療を比較したところ、本物の鍼のほうが治療後8週間以内で効果が大きかったという結果が出ています。
さらに注目すべきは、治療終了後6か月後においても、痛みと膝の機能に対して本物の鍼のほうが効果が高かったという点です。つまり、効果が続くということですね。
特に驚くべきことに、ドイツでは大規模な臨床試験の結果をもとに、西洋医学の治療と比較しても鍼治療のほうが効果が大きかったことから、変形性膝関節症に対して鍼治療を保険適用とすることが決定されたほどです。
日本国内の研究では
日本でも様々な研究が行われています。
膝の痛みに対して、浅く鍼を刺す方法と深く鍼を刺す方法を比較した研究では、どちらの方法でも痛みは改善しましたが、浅く刺す方法のほうが運動機能の改善がより良かったという結果が報告されています。
また、鍼治療と電気刺激療法を組み合わせた治療を行った研究では、治療開始後4週間で症状の軽減が見られたとのことです。
無治療と比べるとどうなの?
無治療や治療を待っている人たちと比較した研究では、鍼治療を受けた人は痛みが30〜50%改善した一方、治療を受けなかった人では変化が少なかったという明確な差が示されています。
また、効果は治療終了後も3〜6か月間続くとの報告もあり、一時的な効果だけではないことが分かっています。
鍼灸治療で期待できる効果
研究結果から、変形性膝関節症に対する鍼灸治療では、主に以下のような効果が期待できることが分かっています。
1. 痛みの軽減
膝の痛みを和らげることは、鍼灸治療の最も基本的な効果です。痛みが軽くなることで、日常生活が楽になります。
2. 膝の動きが良くなる
筋肉の緊張がほぐれることで、膝の曲げ伸ばしがしやすくなることが期待できます。痛みが取れて筋肉が緩んでくると、鍼灸治療の効果がより感じやすくなるという報告もあります。
3. 生活の質の向上
痛みが軽くなり、膝が動かしやすくなることで、外出や趣味の活動がしやすくなります。特に軽度から中等度の変形性膝関節症では、痛みの軽減と生活の質の向上に貢献できる可能性があるとされています。
4. 運動療法への橋渡し
変形性膝関節症の基本的な治療は、膝周りの筋肉を鍛える運動療法です。しかし、痛みが強いと運動ができません。鍼灸で痛みを和らげることで、運動療法に前向きに取り組めるようになる可能性があります。
鍼治療とSSP療法(電気刺激療法)に運動療法を併用する方法は、治療後の経過も良好で、変形性膝関節症に対する保存療法として有効な治療法であるという研究結果もあります。
知っておきたい大切なこと – 鍼灸の限界と注意点
鍼灸治療には良い効果が期待できますが、万能ではありません。以下の点をよく理解しておくことが大切です。
1. 変形した骨や軟骨は元には戻らない
これはとても重要なポイントです。鍼灸治療は、痛みを和らげたり、筋肉の緊張をほぐしたりすることはできますが、すり減った軟骨を再生させたり、変形した骨を元の形に戻したりすることはできません。
あくまでも「症状を和らげる」ための治療であり、「病気そのものを治す」治療ではないことを理解しておきましょう。
2. 効果には個人差がある
関節の変形の程度によって効果に差があることが分かっています。一般的には、軽度から中等度の方のほうが効果を感じやすい傾向があるようです。
進行した変形性膝関節症の場合は、鍼灸治療だけでは十分な効果が得られないこともあります。
3. 整形外科との連携が大切
鍼灸治療を受ける場合でも、整形外科で定期的に診察を受けて、病気の進行具合を確認することをお勧めします。必要に応じて、鍼灸と西洋医学の治療を組み合わせることで、より良い結果が得られる可能性があります。
最近の議論 – ガイドラインでの位置づけ

実は、鍼灸治療の評価については、専門家の間でも意見が分かれている部分があります。
海外の国際変形性関節症学会(OARSI)では鍼灸の有効性が示されていますが、最近では国内外でその有効性が疑問視されている面もあるとのことです。
これは、鍼灸治療が効かないということではなく、「より質の高い研究が必要」「研究の方法を改善する必要がある」という意味合いが強いようです。
医療の世界では、常に研究が続けられており、より確かな証拠を求めて議論が行われています。このような議論があること自体が、真摯に治療法を検証しようとする姿勢の表れとも言えるでしょう。
こんな方に鍼灸治療をお勧めできます
以下のような方には、鍼灸治療を選択肢の一つとして考えてみる価値があるかもしれません。
- 軽度から中等度の変形性膝関節症と診断された方
- 痛み止めの薬をなるべく減らしたい方
- 運動療法をしたいけれど痛みで動けない方
- 手術はできれば避けたい方
- 複数の治療法を組み合わせて症状の改善を目指したい方
実際に鍼灸治療を受けるときのポイント
もし鍼灸治療を試してみようと思われたら、以下の点を参考にしてください。
治療の頻度と期間
一般的には、週に1〜2回の治療を数週間から数か月続けることが多いようです。ただし、個人の状態によって異なりますので、鍼灸師とよく相談しましょう。
他の治療との組み合わせ
鍼灸治療と運動療法を組み合わせることで、より良い効果が期待できる可能性があります。整形外科で指導された運動も、並行して続けていくことをお勧めします。
まとめ
変形性膝関節症に対する鍼灸治療について、論文をもとにお伝えしてきました。
研究結果を見ると、鍼灸治療には痛みを和らげる効果や膝の機能を改善する効果が期待できることが分かっています。特に海外では、保険適用になるほど効果が認められている国もあります。
ただし、すべての方に同じように効果があるわけではなく、変形した骨や軟骨を元に戻すことはできません。あくまでも「症状を和らげる」ための治療法の一つとして考えることが大切です。
変形性膝関節症の治療には、様々な選択肢があります。薬物療法、運動療法、装具療法、そして鍼灸治療。それぞれに長所と短所があり、どれか一つが絶対に正しいということはありません。
大切なのは、ご自身の状態や希望に合わせて、医師や鍼灸師などの専門家と相談しながら、最適な治療法を選んでいくことです。
もし膝の痛みでお悩みでしたら、まずは整形外科を受診して状態を確認し、治療の選択肢の一つとして鍼灸治療も検討してみてはいかがでしょうか。
投稿者プロフィール

- 柔道整復師、鍼灸師
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院長 柔道整復師 鍼灸師
福岡医健専門学校卒業
株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。
陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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