
こんにちは!筑紫野市二日市にある杏鍼灸整骨院の陣内です。
今回は頭痛に対する鍼灸の効果の可能性をご紹介していきたいと思います。
つらい頭痛多いんです・・・

頭痛に悩まされている方は、本当に多くいらっしゃいます。日本では片頭痛だけでも約800万人の方が苦しんでいるといわれていて、緊張型頭痛を含めると、もっと多くの方が頭痛と向き合っていらっしゃるんですね。
頭痛があると、仕事や家事に集中できなかったり、予定をキャンセルせざるを得なかったり、日常生活に大きな影響が出てしまいますよね。
頭痛の治療というと、お薬が中心になることが多いのですが、「できればお薬に頼りたくない」「副作用が気になる」「お薬だけではなかなか良くならない」というお声もよく耳にします。
そんな時、鍼灸治療という選択肢があることをご存じでしょうか。
今回は、2025年に発表されたばかりの最新研究と、日本の頭痛診療の基準となっている「頭痛の診療ガイドライン2021」の内容をもとに、鍼灸治療の効果についてお伝えしていきたいと思います。
最新の研究でわかってきたこと

1,000人以上のデータから見えてきた効果
2025年、医学雑誌(Song C, Chen X. A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials for Electroacupuncture Treatment of Migraine. Journal of Pain Research. 2025;18:2321-2334.)に興味深い研究結果が発表されました。この研究では、片頭痛に対する電気鍼治療の効果について、これまでに行われた10件の研究を総合的に分析したんです。合計で1,161名もの患者さんのデータが集められました。
電気鍼というのは、鍼に電気を流す治療法のことです。普通の鍼よりも少し強めの刺激を加えることができるんですね。
どんな効果があったの?
この大規模な分析で、いくつかの発見がありました。
痛みを和らげる効果
電気鍼治療を受けた方は、受けなかった方と比べて、明らかに症状が改善していました。また、痛みの強さについては、お薬での治療と同じくらいの効果があることもわかったんです。
それだけじゃない、様々な改善が
さらに注目すべきは、痛みが和らぐだけでなく、こんな改善も見られたということです。
- 脳内の血の流れが良くなった
- 頭痛が起きる日が減った
- 頭痛が治まっている期間が長くなった
- 頭痛の発作が続く時間が短くなった
- 毎日の生活の質が向上した
つまり、電気鍼治療は、その場の痛みを和らげるだけでなく頭痛そのものが起きにくくなったり普段の生活が楽になったりする効果も期待できるということなんですね。
これからの課題も
ただし、研究をされた先生方は「まだ中程度の信頼性の段階なので、これからもっと質の高い研究が必要です」と書いています
。効果はあるけれど、さらに確実な証拠を積み重ねていく必要があるということですね。
日本の頭痛診療ガイドラインでの評価

ガイドラインって何?
「診療ガイドライン」というのは、その時点での医学的な知識を総まとめにして、「こういう治療が良いですよ」という指針を示したものです。
お医者さんたちが治療方針を決める時の参考にする、いわば教科書のようなものなんですね。
日本では、神経の専門学会や頭痛の専門学会が力を合わせて作った「頭痛の診療ガイドライン2021」が、頭痛診療の基準となっています。
2013年版から8年ぶりに改訂された、473ページもある大部の本なんですよ。
鍼灸治療はどう評価されているの?
この「頭痛の診療ガイドライン2021」では、鍼灸治療についてもきちんと取り上げられているんです。
国際的な評価方法を使って、科学的な証拠の質や推奨の強さが検討されていて、鍼灸治療が頭痛の治療において一定の役割を果たすことが認められているんですね。
特に、以下のタイプの頭痛に効果があることが報告されています。
緊張型頭痛 頭全体がギュッと締め付けられるような痛みが特徴の頭痛です。肩こりや首のこりと一緒に起こることが多いんですよね。鍼灸治療で筋肉の緊張がほぐれることで、症状が楽になると考えられています。
片頭痛 ズキンズキンと脈打つような痛みが特徴の頭痛です。鍼灸治療は、発作が起きる回数を減らしたり、痛みの強さを抑えたりする効果が期待されています。
科学的根拠は十分なの?
正直に申し上げると、現時点では、質の高い大規模な研究はまだ十分には集まっていないというのが実情です。
でも、これは「効果がない」という意味ではないんです。鍼灸治療の研究には、「本物の鍼と偽物の鍼をどう区別するか」「患者さんにも施術者にも何をしているか分からない状態にするのが難しい」といった、研究方法上の難しさがあるんですね。
それでも、最近では少しずつ科学的なデータが増えてきていて、頭痛治療としての効果を裏付ける証拠が積み重なってきています。
なぜ鍼灸で頭痛が良くなるの?

鍼灸治療がどうして頭痛に効くのか、そのメカニズムについても研究が進んでいます。
緊張型頭痛の場合
緊張型頭痛の多くは、首や肩の筋肉が緊張しすぎることが原因と言われています。鍼灸治療は、こんなふうに働いてくれます。
- 筋肉をほぐしてくれる: 鍼の刺激で、凝り固まった筋肉の血の流れが良くなって、緊張が和らぎます
- 痛みを感じにくくする: 鍼の刺激が背骨や脳に働きかけて、痛みを感じにくくしてくれます
- リラックスさせてくれる: 自律神経のバランスを整えて、心身をリラックスさせる効果があります
片頭痛の場合
片頭痛は、脳の血管が広がったり、神経が敏感になったりする複雑なメカニズムで起こります。鍼灸治療は、こんな効果があると考えられています。
- 脳の血流を整える: 先ほどの研究でも示されたように、鍼の刺激が脳の血流を改善して、片頭痛の発作を予防してくれる可能性があります
- 体の痛み止め物質を増やす: セロトニンやエンドルフィンといった、体が自然に作り出す痛み止め物質の分泌を促してくれます
- 炎症を抑える: 片頭痛に関係する神経の炎症を抑える働きも期待されています
実際の治療ってどんな感じ?

治療の流れ
頭痛で鍼灸治療を受ける場合、通常こんな流れで進みます。
まずはじっくりお話を 最初に、あなたの頭痛について詳しくお聞きします。どんな痛みか、いつ頃から始まったか、どのくらいの頻度で起こるか、などなど。東洋医学ならではの診断(舌を見たり、脈を診たり)も行うことがあります。
治療の内容
- 鍼治療: 頭や首、肩、手足のツボに鍼を刺します。頭痛のタイプや原因に合わせて、使うツボや刺激の強さを調整していきます
- 電気鍼: 必要に応じて、鍼に優しい電気刺激を加えることもあります
- お灸: 特定のツボを温めることで、血の巡りを良くして、緊張をほぐします
どのくらい通うの? 頭痛がひどい時期は週に1〜2回、予防的な治療なら週に1回くらい通っていただくことが多いです。症状が良くなってきたら、少しずつ間隔を空けていきますね。
痛くないの? 安全なの?
「鍼って痛そう…」と心配される方も多いのですが、使う鍼はとても細くて、注射針とは全然違います。チクッとする程度か、ほとんど痛みを感じない方も多いんですよ。
また、使い捨ての清潔な鍼を使いますので、感染の心配もほとんどありません。
たまに、こんな軽い反応が出ることがありますが、通常は一時的なものです。
- 治療した場所が少しだけ痛んだり、違和感があったりする
- 治療後に少し疲れたような、だるいような感じがする
- 小さな青あざができる(内出血)
重大な副作用が起こることは極めてまれです。ただし、きちんと資格を持った鍼灸師さんに治療してもらうことが大切ですね。
鍼灸治療が特に向いている方

こんな方には、鍼灸治療が特に良いかもしれません。
お薬をあまり使いたくない方
頭痛薬を長く飲み続けることに抵抗がある方や、副作用が気になる方にとって、鍼灸治療はお薬を使わない選択肢になります。
頭痛薬を使いすぎている方
実は、頭痛薬を頻繁に使いすぎると、かえって頭痛がひどくなってしまう「薬物乱用頭痛」という状態になることがあるんです。鍼灸治療は、お薬に頼らずに頭痛をコントロールする方法として役立ちます。
頭痛を予防したい方
頭痛が起きてから対処するのではなく、「そもそも頭痛が起きないようにしたい」という予防的な治療として、鍼灸はとても効果的です。
肩こりや首のこりもある方
筋肉の緊張から来る頭痛の場合は、鍼灸治療で筋肉にアプローチすることで、特に良い結果が期待できます。
いろいろな方法を組み合わせたい方
お薬と鍼灸治療を両方使うことで、より効果的に頭痛を管理できることもあります。
治療を受ける前に知っておいてほしいこと

まずは病院で診てもらってください
頭痛には、片頭痛や緊張型頭痛のように頭痛そのものが病気である「一次性頭痛」と、他の病気が原因で起こる「二次性頭痛」があります。
二次性頭痛の中には、脳腫瘍や脳出血など、すぐに治療が必要な怖い病気が隠れていることもあるんです。
こんな「危ない頭痛」のサインがあったら、すぐに病院に行ってください。
- 今まで経験したことがないような、突然の激しい頭痛
- だんだんひどくなっていく頭痛
- 熱や吐き気を伴う頭痛
- 意識がもうろうとしたり、手足が動かしにくくなったり、うまく話せなくなったりする
- 50歳を過ぎてから初めて経験する頭痛
鍼灸治療を受ける前に、必ずお医者さんに診てもらって、心配のない頭痛かどうか確認してくださいね。
続けることが大切です
鍼灸治療の効果は、1回でパッと良くなることもありますが、多くの場合は何回か続けることで徐々に改善していきます。「1回受けたけどすぐに効かなかった」と諦めてしまわずに、だいたい4〜8週間くらいは続けてみることをおすすめします。
お薬と鍼灸、どちらか一つじゃなくてもいいんです
鍼灸治療と病院でのお薬の治療、「どちらか一つを選ばなきゃ」と思っていませんか? 実は、両方を上手に組み合わせることで、より効果的に頭痛を管理できることも多いんですよ。
組み合わせるとこんな良いことが
- お薬の量を減らせる: 鍼灸治療で頭痛が起きにくくなれば、お薬を使う回数も減らせます
- いろんな角度からアプローチできる: お薬と鍼灸は違う方法で効くので、お互いに補い合うことができます
- 生活全体が楽になる: お薬だけでは改善しにくい、肩こりや首のこり、自律神経の乱れなども、鍼灸治療で良くなることがあります
かかりつけの先生に相談しながら、あなたに合った治療計画を立てていけるといいですね。
最後に
頭痛に対する鍼灸治療について、最新の研究と日本の診療ガイドラインからわかったことをお伝えしてきました。
覚えておいていただきたいポイント
- 効果が認められています: 2025年の最新研究でも、電気鍼治療が片頭痛に効果的であることが示されています
- ガイドラインでも認められています: 日本の頭痛診療の基準となっているガイドラインでも、鍼灸治療の有効性が認められていて、特に緊張型頭痛と片頭痛に効果があるとされています
- 痛みだけじゃなく、生活全体が良くなる: 鍼灸治療は痛みを和らげるだけでなく、頭痛の回数を減らしたり、毎日の生活の質を上げたりする効果も期待できます
- 安全な治療法です: きちんと資格を持った鍼灸師さんによる治療なら、とても安全です
- これからもっと研究が進みます: より確かな証拠を集めるための研究が、これからも続けられていきます
頭痛でお悩みの方は、まずお医者さんに診てもらった上で、お薬の治療に加えて、あるいはお薬の代わりに、鍼灸治療も選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
人によって効果の出方は違いますが、鍼灸治療で頭痛が楽になったという方はたくさんいらっしゃいます。
頭痛のない、すっきりとした毎日を取り戻すために。鍼灸治療という選択肢があることを、ぜひ覚えておいてくださいね。
参考にした文献
- Song C, Chen X. A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials for Electroacupuncture Treatment of Migraine. Journal of Pain Research. 2025;18:2321-2334.
- 菊池友和ほか. 頭痛の診療ガイドライン2021の出版にあたりClinical questionの鍼灸治療推奨からみる今後の展望. 全日本鍼灸学会雑誌. 2022;72(1):4-13.
- 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修. 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院. 2021.
大切なお願い
この記事は、一般的な情報をお伝えするためのものです。あなたの頭痛について、個別の医学的なアドバイスをするものではありません。頭痛でお悩みの場合は、必ず医療機関を受診して、適切な診断と治療を受けてくださいね。
投稿者プロフィール

- 柔道整復師、鍼灸師
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院長 柔道整復師 鍼灸師
福岡医健専門学校卒業
株式会社セイリン様、株式会社伊藤超短波などでもセミナー活動をしており精力的に鍼灸をひろめようと活動もしております。
陸上競技、ソフトボール、バレーボール、柔道、剣道など様々なスポーツチームの帯同経験多数
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